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「#令和の就活ヘアをもっと自由に」P&Gの就活キャンペーンにみる企業の変化、令和の就活はどう変わる?

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ビジネス

10月1日、多くの企業で、2020年春入社予定者の就職内定式が行われました。
今年は、インターネットやチャットを使用するオンライン方式を採用する企業や、「学生の個性を尊重したい」と、自分らしいヘアスタイルで式への参加を促した企業のほか、内定式自体を見送る企業もあり、数年前から変わりつつある就活事情を象徴するものとして、話題となりました。

オンライン内定式は、これまでのように特定の場所に一堂に集める式を廃止し、多くの企業で面接時などにも実施しているインターネット経由の視聴で進めるもので、地方などに住む学生の負担を軽減するとして、広がりを見せています。

一方、ヘアケアブランド「パンテーン」を展開するP&Gジャパンが実施した「♯令和の就活ヘアをもっと自由に」と題したキャンペーンには、就活生の人気が高い100を超える企業と、経済産業省が賛同。これまで黒髪・まとめ髪ばかりだった内定式に、自由なヘアスタイルで出席する女子学生の姿が見られました。

2021年春以降の卒業予定学生も大いに関心を持って見ていた今年の内定式。
会社説明会や面接の解禁日などを定める、いわゆる〝就活ルール〟が変わるなど、就活事情も大きな転換期にきているようです。
令和の就活事情について、ライフキャリアカウンセラーの折山旭さんに聞きました。

「学生の個性を尊重する」が重視されるも自由には責任がつきもの。就活ルールの動向に一喜一憂することなく自己理解を

Q:「令和」の時代を迎えて初となる内定式が、これまでと違ってきた背景には、どのようなことが考えられますか?

近年、学生側が有利とされる〝売り手市場〟が続いていること、価値観の多様化などから、企業側が学生側に寄らざるをえないという事情があります。柔軟な発想で、変えられるところから変えていこうとする企業の姿勢も、確かに見られるようですが、実際には、思い切った方法をとることができるのは、まだ一部の企業や業種に限られるというのが現状です。

また、オンライン内定式についても、地方の学生の負担を減らすという意味では、企業が学生に大きく歩み寄った方法と言えるでしょう。

一方で内定式は、内定者にとって、春から勤務する会社の雰囲気や現役社員の様子を実際に見るだけでなく、入社後の自分をイメージすることや、入社までに必要な準備をするための疑問解消などができる、数少ない機会でもあるのです。

企業にとっても、学生との信頼関係を築くことで、内定辞退を抑止する意味もあり、本来の内定式の意義に立ち返ってみると、本末転倒にならないよう、考えたいところです。

Q:ある企業の「就職活動に関する調査」によると、8割以上の就活生が「企業に合わせて自分を偽ったことがある」と答えています。「学生の個性を尊重したい」という企業も増えているなか、今後の就活の様相も変わりそうですか?

「学生の個性を尊重する」とは、近年よく言われていることですが、自由には責任がつきもの。所属する企業や職場環境によっては、個人の個性を主張するのではなく、顧客や同じ職場で働く人を不快にさせないなど、配慮が必要なことは言うまでもありません。

学生は希望する業種や職種によっては、自分を強くアピールする方法を自分で考える必要があり、その結果も甘んじて受ける覚悟が必要です。これも、実際にはとても難しいことでしょう。
さらに、個性のアピールが、ともすれば髪色やリクルートスーツなどの、一見してわかりやすいものだけのような風潮も、企業と学生双方に、かえって誤解を呼ぶことになりかねません。

実際、自由な雰囲気とされる企業でも、社員の髪色のトーンに具体的な基準を設けているなど、就活時と入社してからでは、そもそもの捉え方が変わってくることを知っておく必要があるでしょう。

学生は、今回の内定式を、あくまでひとつの例と見て、その企業の中で仕事を任されたときに、どんなことにやりがいを感じるのかに重きを置いて、そこに向けて自分の個性をアピールする方法を考えてみることが大切です。

Q:すでにインターンシップなど、実質上の就活を進めている2021年春以降に卒業予定の学生も多いと思いますが、毎年のように話題になる「就活ルール」とはなんですか?

就活ルールとは、新卒一括採用を前提に、経団連が企業の採用活動について、会社説明会や面接の解禁日などを決めたルールのこと。企業が自主的に守ることになっているため、仮に守らなかったとしても罰則はありません。

しかも、働き方改革によって、働き方の多様化が進み、転職も一般的になっている近年では、一律の採用の仕組みは時代にそぐわないとも言われてきました。深刻な人手不足で、企業による学生の獲得競争が激化していること、就活ルールを守らない外資系企業や経団連に非加盟の企業があることなどから、就活ルールの形骸化も指摘されていました。

Q:「就活ルール廃止」という経団連の指針が話題になりましたが、今後スケジュールや仕組みが大きく変わるのでしょうか?

就活ルールの廃止は、その大前提である新卒一括採用という日本的な雇用制度のあり方そのものに関わる問題でもあります。
企業側にしてみると、通年にわたり採用活動をすることに比べて、採用活動の時期が決まっている方が効率的ということもあって、多くの企業が現在も新卒一括採用を続けています。

会社説明会などの広報活動の解禁日を、これまで同様3月1日、面接などの採用選考の解禁日を6月1日としているところが大半です。
学生にとって、新卒一括採用では、採用時の実務能力やスキルを問われない反面、短期間に将来を左右する就職先を決めなければならないため、就職活動に大きなプレッシャーが伴います。

就活ルールがなければ、優秀な学生をなるべく早い時期に獲得して囲い込みたいと思う企業が出てくることは必然で、学生にしてみると、それに合わせて就職活動そのものが前倒しされ、長期化していくことが考えられます。

Q:就職活動を巡る環境は大きな転換期にきているようですが、企業と学生がベストなマッチングをするためのアドバイスは?

企業や組織にとっては、深刻な人手不足、高い離職率など、人材確保に関する危機感は高く、求める人材のハードルを低く設定するのを余儀なくされる企業も少なくありません。働き方改革の進展や働き方の多様化に合わせて、採用活動の在り方を見直し、時代に合った変化が求められる時期が来ているのかもしれません。
企業も、受け身のままではなく、優秀な人材に、積極的に自社の魅力をアピールする工夫が求められています。

就職活動でも、エントリーシートの書き方や、面接テクニックの習得に重きを置いたマニュアルどおりでのものでは限界があります。学生にとって就職活動の目的は、「早く内定をもらうこと」ではないはずです。就業条件や入りやすさだけではなく、まずは、「自分が何をしたいか」「できることは何か」「働くうえで大切にしたいことは何か」、この3点をしっかりと把握しておく必要があります。

自分を理解することと、企業分析を進めることは、ミスマッチを防ぎ、イキイキと活躍できる職場に出合うための有効な方法のひとつです。そのことを意識して、実際にインターンシップなどを利用して実務に関わると、自分を省みる良い機会を増やすことができるでしょう。

就活ルールの動向に一喜一憂することなく、学業はもちろん学生生活全般から多くのことを経験して自己理解を深め、将来のキャリアを考えることが大切です。

折山旭

働く人と組織を活き活きと輝かせるプロ

公認心理師

折山旭さん(信州ライフキャリア研究所)

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