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アルコール依存の心理とは 原因と中毒にならないため対策と治療、家族の対応

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メンタル・カウンセリング

女子高校生に対する強制わいせつ容疑で問題になった、ジャニーズ事務所のアイドルグループ・TOKIOの山口達也氏の会見は、世間に大きな波紋を広げました。会見では冒頭から深々と長く頭を下げ、質疑応答が始まるや泣き声が止まらない状況でしたが、不祥事と同時に山口氏のアルコール依存症も注目されました。

海外に目を向ければ、アメリカの俳優ベン・アフレックやメル・ギブソンもアルコール依存症の治療を受けています。多くのファンが存在する華々しい芸能界の人の人生でもむしばんでしまう、アルコール依存症とはどのようなものなのでしょうか?

アルコール依存症の飲酒量やアルコール量はどれくらい?具体的にどのような状態か

アルコール依存症は、長い間、多量のアルコールを摂取することで起こる脳の異常です。お酒を飲むことを毎日の習慣にしていると、少量のお酒では酔えなくなって、徐々に飲酒量が増えていくことがあります。そうなると、お酒による気分の良さに依存するようになり、酔いが覚めてくるとイライラしたり、不安になったりします。

そのうち、お酒を飲む時間や場所を気にしなくなって、日常生活に支障が出るようになります。このあたりですでにアルコール依存症に陥っているのですが、さらに飲み続けると「お酒を飲んで酔うと眠り、目を覚ますとまた飲む」というように、お酒のことしか考えられず、お酒を飲む行為を自分でやめることができなくなってしまいます。

アルコール依存症でよく知られた症状に手や体の震えがありますが、これは飲酒を止めて数時間後に出てくる「離脱症状」で、幻覚や幻聴に襲われることもあります。アルコール依存症を自覚して、いくら自分でお酒をやめようと思っても、この離脱症状の不快さから再びお酒に手を出すことになってしまいます。

日本では、1日の適切なアルコール量は10g(約12.7ml)で、ビールなら500ml、日本酒なら1合弱、焼酎なら100ml、ワインなら200ml、ウイスキーなら60ml(※女性と高齢者はこれらの半分の量)とされています。アルコール依存症になる危険性のあるアルコール量は、この3倍の量で、ビールなら500ml缶3本分です。お酒の飲める人にとっては、飲み会で楽しくお酒を飲んでいるとあっという間に飲んでしまう飲酒量ですが、これを毎日続けていると大変なことになります。

華々しい芸能人の人生をむしばむアルコール依存症の怖さ

山口氏の報道をみると、周囲や世論がやってはいけない方向に向いてしまっていますね。TOKIOのメンバーからも厳しいコメントがありました。本人の意思ではどうにもならないアルコール依存症の性質から、バッシングは逆効果といえます。

会見では「加害者が泣くことないだろう」との意見も湧き出るほどで、憔悴しきった最中、芸能活動の無期限謹慎を受け入れつつも、メンバー全員の名前を挙げ「戻りたい」と哀願してしまい、またそれが世間の反感を買うことに。メンバーや世間からの呆れや怒りの言葉をもらうことになりました。せっかくの会見もダメージの緩和とは程遠いものになって、結果としては契約解除ということになりました。

山口氏は、肝臓治療のために入院したものの退院直後から日中でもお酒を飲み始めて部屋で焼酎1本を空けるほどだったといい、本人に自覚はなくとも世間は「アルコール依存症」とみます。会見で不祥事への謝罪と依存症治療の専念を真摯に誓えば、少しは世間の印象も違っていたかもしれません。

一見、華やかに見える芸能人の人生も、ひとつ間違って世間から反感を買うと、それが本人ではどうしようもないアルコール依存症という病気が原因でも、過剰にバッシングを受けて華やかな舞台から引きずり下ろされてしまいます。そういうことがわかっていても陥ってしまうのがアルコール依存症の怖さです。

アルコール依存症の原因となるのはストレスと愛されたい心理

アルコール依存症の主な原因は、心の問題です。さみしさ、孤独感、継続的な強いストレス、これらがアルコール依存症へと人を誘うのです。

「芸能人ならファンがたくさんいて、多くの人から好かれさみしくないじゃん!」果たしてそうでしょうか?エーリッヒ・フロムの著書「愛するということ」の中にもあるように、現代の人は「愛の問題」を「愛されること」ばかりにフォーカスしてしまって、「愛するということ」であることを知らぬまま過ごしているのです。

多くの雑誌には「愛され女子になる〇〇ランキング」みたいな特集があふれ、「私はやっぱり恋愛は愛される派だなー」なんて思っている女性は少なくありません。愛されたい心理が強く、愛そのものを受動的な感情だと勘違いしているのです。

愛されることを求めても、必ずしも報われるとは限りません。報われないストレスをお酒で解消するようになると酒量が増えていきます。最初は飲み会の席での楽しさから始まって、ひとりのさみしさを紛らわすために家飲みの飲酒量が増えていくこともあります。酔うと気持ちが大きくなるので、悩んでいるコンプレックスが解消されたように思うこともあります。アルコール依存症になる原因は「愛されたい」「認められたい」という心理にあります。

でも考えてみてください。自分が本当に愛していない何万人の人に愛されたところで、本当に孤独じゃなくなるでしょうか。等身大の自分で誰かを愛すること、それがどれほど幸せなことでしょう。

自分以外の人の心を変えることはできませんが、自分の心は考え方を変えることで変わります。「愛されたい」と思うなら、「愛する」ことから始めてみましょう。言うまでもなく、お酒は気持ちのごまかしでしかありません。

依存症とはなんなのか?「依存」には「良い依存」「悪い依存」がある

昔、熱血教師のドラマで「『人』という字は人と人が支え合っている形です」という例え話をする場面がありましたが、人というのはそもそも「依存」し合って生きています。ある意味、それこそが人間という生物の強さでもあるのです。

「依存は強さである」といわれると、きっと違和感がありますよね。「依存」というのはネガティブな言葉として使われることが多いですから。でも、「依存」には、良いものと悪いものがあります。ここでは少し「良い依存」「悪い依存」について考えてみましょう。

良い依存とは
「与え、与えられ」「支え、支えられ」という行為の中でお互いの成長へつながる漸進的な関係です。

悪い依存とは
さみしさや執着から、相手を支配したり束縛したり、何かの刺激などで自分の心の穴を埋めようとすることです。代替による「快」を、満たされていると勘違いすることで始まります。依存症というのは、いわば「生き方の病」とも言えるでしょう。
悪い依存では、満たされることはありません。そのため、一時的に満たされたような気がして、もっともっとと過剰になっていってしまうのです。悪い依存の例は以下のようなものです。

・人への依存…人間関係でゆがんだ上下関係や、支配や束縛、しがみつきなどになります。
・プロセスへの依存…ギャンブルやスマホなど、行為によって興奮や刺激を得ようとします。
・物質への依存…アルコールや過食など、摂取することで快を得て一時的な現実逃避をします。

治療、回復のために本人や家族でやるべきこと

アルコール依存症の治療はお酒を断つことが第一です。お酒を飲み続けている限り、依存から抜け出すことはできません。身体症状だけなら、1週間ほどの断酒で回復すると言われています。自分で飲酒をコントロールできず離脱症状が激しい場合は、断酒のために入院治療を行います。退院後、回復のために本人や家族がやるべきことは何でしょうか。まず、家族や周囲の人が注意しなければいけないことが3つあります。

1.世話をやきすぎないこと…本人が自分のしたことの始末を他の人がしてくれると思って自立ができなくなってしまう。
2.叱責説教をしないこと…本人が叱責や説教を受けたストレスをまた依存しているもので解消しようとする。
3.家族や周囲が責任を感じないこと…家族や周囲が「申し訳ない」と思ってしまうと本人が責任転嫁して家族や周囲のせいにしてしまう。

そして、アルコール依存症から完全に回復するために、本人や家族が共にやるべきことは以下のようなことです。

1.依存をちゃんと理解する…依存しているものではストレス解消にはならず、無いことでストレスを感じるようになる。
2.目標は小さく刻む…大きな目標は、実行する気分にもなりません。達成できる時間区切りで達成感を味わいながら断っていきましょう。
3.自由になることを望む…依存を完全に断ち切り、依存しているものに縛られなくなることで本当の自分の人生を歩めます。
4.ストレスに対する考え方を得る…自分のストレスや寂しさなどと向き合い、誰かと共有し、新しい思考パターンを得ることで考え方が変わります。
5.結末を見る…これは最終手段ですが、本人が依存から離れたいと思わなければ回復への道は始まりません。どん底まで体験することもひとつの手段です。

「依存」は人間の強さでもあります。「悪い依存」を「良い依存」へと変換していきましょう。人間である限り、ほんとうに立ち直ろうとしたとき、周囲の誰かに手を伸ばすはずです。あなたが持っている人間としての強さを使うことです。

アルコール依存チェック・・・当てはまる場合はご用心!

どの程度アルコールに依存しているのかチェックしてみましょう。最近6カ月以内のあなたに以下のことが当てはまるでしょうか。

・酒が原因で人間関係に問題が生じた。
・今日は飲まないと思ってもついつい飲んでしまう。
・周囲の誰かから「飲み過ぎだ!」と言われた。
・ついつい加減ができず飲み過ぎてしまう。
・翌朝、ところどころの記憶がない。
・休日の昼間から飲む。
・飲酒が原因で仕事や約束に行けないことがある。
・酒が切れると不眠やイライラ、手の震えがある。

いかがでしょうか。2つ当てはまるなら「要注意」。3つ以上当てはまるなら病院で診断を受けたほうがいいかもしれません。

アルコール依存症は、自分では気づかないうちに進行してしまいます。これをきっかけに、飲酒習慣を見直してコントロールが効かなくなっていると自覚できたら、すぐに誰かに相談したり、治療を受けたりしましょう。

独自手法で短期解決をもたらす心理カウンセラー

青柳雅也さん(カウンセリングルーム アンフィニ)

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