JR東労組で組合員の大量脱退、現代の労働組合の意義とは
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大量脱退は会社と労働組合の対立が原因
JR東日本の労働組合員の大量脱退が続いています。約46,000人いた組合員のうち今年2月中旬以降の1か月間だけで約28,000人もの方が脱退した(東洋経済ONLINE記事による)というのは異常事態でしょう。
今年の春闘で、賃金の一律定額ベースアップを求めた労組側がストライキ権を通告したことを受けて、会社側が「労使共同宣言の失効」を主張するなど、労使間の関係が悪化。労使対立の中で労組内部に混乱が発生し、組合員が大量に脱退するという事態に陥っているようです。
近年では組織率が2割を切り昔より影響力が低下
労働組合とは、労働者が団結して、労働条件の改善を図るためにつくる団体のことで、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(ストライキ等)」が法的に認められています。
労働基準法で使用者と労働者は対等の立場であることが明記されていますが、労働時間を管理され賃金を受ける労働者の立場は、一般的に使用者に比べ弱いことが多く、労働者が団結して使用者と労働条件を交渉することについては大きな意義があります。
事実、労働組合は、戦後の高度経済成長期に30%を超える高い組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合)を背景に、賃金のベースアップやその他の労働条件改善の実現に大きな影響力を持ってきました。
しかし近年では、労働組合の組織率は17%程度にまで低下してきており、「労働組合の社会的役割は終わった」などと言われることも多くなってきました。
参照:独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働組合組織率・組合員数」
参照:厚生労働省「平成29年労働組合基礎調査の概況」
一律ではなくなった労働者の労働条件と個人主義
労働組合の影響力が小さくなってきたのは組織率の低下だけとも言えません。
これまで、労働者の労働条件は入社・昇進・退職等の各場面において、同期入社なら学歴や能力によって多少の違いはありましたが、ほぼ一律の条件でした。
しかし、現在では正規・非正規の違いだけではなく、同期入社といえど個人個人で労働時間や賃金などの条件が異なってきており、多様化が進んでいます。労働組合に加入して団結して労働条件を交渉するというスタイルに合わない働き方をしている人が増えているのです。
また、一昔前に比べ個人主義が進んでいますので、プライベートな時間を削ってまで組合活動に時間を割きたくない、集団で行動をすることを好まない労働者が増えてきていることも、労働組合が弱体化してきている一因ではないかと考えます。
今度は個々の労働者の実情に沿った細やかな活動が期待される
組織率が低下してきているとはいえ、労働組合の存在意義がなくなったとは言えません。組合が労働者の声を反映して使用者に強くものが言えるのも、やはり集団であるという強みがあるからです。
これからは労働者の働き方の変化等に合わせ、労働組合側もこれまでのような大局的な活動だけではなく、より個々の労働者の実情に沿ったきめ細やかな活動が求められるようになるのではないでしょうか。
労働組合に加入するか否かは個人の考え方です。少し前までは、何も考えずに会社に組合があれば何となく加入していた人もいたでしょうが、今後は、自身の働き方を踏まえ、組合に加入するメリットがあるかを熟慮する労働者が増えるでしょう。
影響力を維持していけるか、今後の労働組合のあり方を再考する時期にきています。
人事労務コンサルティングの専門家
大竹光明さん(社会保険労務士法人大竹事務所)
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