いじめっ子の心理とは?原因は親や家庭環境に。親として考えるべき役割と接し方
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いじめの原因はいじめっ子の家庭環境が影響している?
いじめの問題などが起きると、親の責任について議論されることがあります。以前に、あるテレビ番組の司会者が「いじめる側が悪い。そして親にも責任がある」といったコメントをして話題になりました。
私の見解では、「誰が悪い」ということではなく、「やっている行為」と「人」とを切り離して考える必要があります。「いじめ」が起こる原因は一つではありません。無意識の中でも「いじめをしなくてはいられない精神状態に追い込まれてしまうのだろう」とも思います。
みなさんの過去の経験を振り返ってみると、昔から「いじめ」とまでいかなくても、仲間はずれや心が傷つく言葉を投げられたことって、一度や二度はなかったでしょうか?
現在はその「傷つける」質がひどくなり、死にまでも至ってしまう。その背景には、SNSのような発信力の強いコミュニケーションツールや、残酷なゲームなどが普及したことも原因として考えられるのではないでしょうか。
情報量が増え価値観がさまざまに変化する社会において、確かにいじめの原因も多様化していますが、「いじめをする側」の家庭環境は大きく影響していると思います。
かなり昔になるかもしれませんが、「非行に走る子どもの家庭は荒れているのではないか」そんな声を聞いた時代もありました。現在ではどうでしょう?いじめだけでなく、メディアを騒がす事件などでは両親が揃い、地位や経済的にも恵まれている家庭内での事件もよく耳にします。
「なぜ『いじめ』をせずにはいられないのか」いじめの本質と心理を考える
学校で「いじめをなくそう!」とスローガンのように掲げている学校もあります。しかし、一向にいじめはなくなりません。なくなるわけがないのです。それは、本質の部分を見てないからです。
「なぜいじめをするのか?」。言い換えるなら(乱暴な言い方ですが)、「なぜ『いじめ』をしないといられないのか」ということを考えるべきではないでしょうか。人は大人も子どもも安全・安心を求めて生きています。いじめる側の子どもたちは、見方を変えるといじめをすることで自分の安全・安心の場を確保しているのだと思います。もちろん、いじめの行為そのものは許されることではありません。
先ほどの家庭環境に話を戻して、イメージしてみてください。例えば両親が揃っていて、経済的にも恵まれ、誰からもうらやましがられる家庭に育った子どもがいるとします。両親は、自分たちが思う「いい教育」を子どもたちに与えることに一生懸命で、物心ついた頃から子どもとのコミュニケーションの内容は教育のことばかり。両親の一方的な考えや価値観だけで、子ども本人の存在を無視されていたらどうでしょうか。子どもの心はどうなっているでしょうか。
成長過程で、親の期待通りに学校の成績が伸びなくなったり、ほかの兄弟姉妹や親戚の子と比較されたり、下に兄弟姉妹が生まれて親の手が取られることで「個としての自分自身という存在」を見てもらえないとしたらどうでしょう。
そのような状況であっても、よい成績を出すなど親の期待に沿っているときはいいでしょう。でも、それがなくなった時、「自分に親の目を向けたい」「愛してほしい」という気持ちは、時として、それがたとえいけないことをしてでも「自分を見てほしい」という思いに至ってしまうでしょう。
先生から親が呼びだされる、怒られる、そんな構図がわかっていても、その時間は親と自分とだけの時間だと感じ、無意識の中でも親とのつながりを求めて行う行為だとも私は考えます。
いじめっ子の親は日常的に子どもに対して批判、皮肉が多い
子どもがいじめの加害者になるのは、親として本意ではないはずです。しかし、家庭での子どもへの接し方が影響しているのは否定できません。
アメリカのアトランティック大学、カナダのコンコーディア大学、スウェーデンのウプサラ大学が1409人の思春期の男女を対象に行った共同研究によると、いじめなどを起こす子どもの親は、子どもに冷笑的、敵対的な態度をとっていたということがわかりました。
同研究では、日常的に親から批判されたり、皮肉を言われたり、からかわれていた子どもたちは感情が機能不全を起こし、怒りをコントロールができなくなる。気持ちの統制がとれない精神状態が深刻化すると周囲に対する敵意が増して攻撃的になり、人をいじめることで発散するようになると報告しています。また、いじめっ子になるだけでなく、いじめられっ子になる、つまりいじめの加害者、被害者のどちらにもなる恐れがあると指摘しています。
子どもは感受性が豊かなので、「そんなこともできないの?」「なぜ言うことがきけないの?ダメな子ね」など、親の何気ない言葉に深く傷つき「自分はできない子なのだ。だから愛されないのだ」といった自分を否定する気持ちを抱くようになります。
「親に認めてもらえない」「受け止めてもらえない」という満たされない思いが、言いようのない怒りにつながり、弱い相手などに向けられているのではないかと考えます。
いじめっ子の心理4事例
親が、「お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから」とがまんを強いたり、「○○ちゃんの方が聞き分けがいいわよ」とほかの兄弟姉妹と比較したり、仕事の忙しさなどから十分に目をかけていない場合、心の中にさまざまな感情が芽生え、いじめっ子になってしまう場合があります。子どもの心理を詳しく見ていきましょう。
【愛されたい、かまってほしい】
親の気持ちが自分に向いていないと感じると、子どもの心の中には「愛されたい、かまってほしい」といった思いが芽生えます。そして自分の方を向いてほしいという気持ちを素直に表現できず、乱暴な言葉や態度をとるなど、相手を悲しませたり困らせたりすることで気を引こうとします。また、親から十分な愛情が得られない寂しさを「いじめ」という形で発散させてしまう場合もあります。
【「自分はできない子」など自己肯定感が低い】
「ちゃんと○○しなさい」「自分でできないの?早くしなさい」など、否定的な言葉を受け取っていると自分に自信が持てず、自己評価が低くなります。例えば、自分は親から愛されていない、何をしても認められない、自分1人では何もできないなどです。
親や自分へのイライラがたまり、自分より弱い人にぶつけてしまう。そして、その人が自分に従うことで自分の存在が大きくなったように感じるのです。
【他の人をうらやましいと思う嫉妬心がある】
親が子どもを他の子と比べられたり、ほかの兄弟姉妹を優先したりしていると愛情不足に陥り、まわりに対して嫉妬心を抱きます。
「あの子は自分より愛されている」「あの子は自分よりも勉強・スポーツがよくできる」「あの子は自分より容姿が優れている」と、自分に自信が持てない部分に秀でている人をターゲットにしていじめてしまうことがあります。
家庭での嫉妬の心がくすぶると、子どもは自分自身を納得させるために「親は自分のことを大事に思っているに違いない」「自分の方がいいに違いない」と思い込むようになり、これが独占欲や競争心、プライドの高さにつながることがあります。負けず嫌い、プライドが高いといった子どもは、誰かの下につくのを嫌います。みんなの上に立つことを考え、そのためにいじわるをすることもあります。また人を支配する力があるのでいじめグループのリーダーになり、仲間にいじめをさせることもあります。
【気分の浮き沈みが大きいなど情緒が不安定】
親からの愛情が不足している場合だけでなく、親が過干渉で自分の理想などを押し付けると子どもは自由を奪われストレスを感じます。また、子どもは「完ぺきな自分しか認められないのだ」と、不完全な自分を好きになることができず、精神的に不安定になります。いじめは悪いことだとわかっていても、寂しさや不安を紛らわすためにいじめをしてしまうタイプも多くみられるようです。
いじめっ子になる親の特徴・心理とは?
上段でお伝えしたように、親の接し方や言葉などがいじめっ子になってしまう原因の一つです。加えて、どのような家庭環境が子どもをいじめっ子にしてしまうのか、具体的に説明していきましょう。
【夫婦仲が悪い】
父親と母親の仲が悪く、お互いの悪口などを言い合っている生活は子どもに大きなストレスを与えます。口を開けばケンカで、コミュニケーションが希薄な家庭は子どもにとっても居心地が悪い空間で心が落ち着かず不安定になります。親がいがみ合うのを見て「お父さんとお母さんがうまくいかないのは自分のせいだ」と自分を責めたり、「次は自分が怒られるのではないか」と不安にかられたりします。また、両親が仲良くいられるように自分を抑え、無理をして「いい子」を演じる子どももいます。そのストレスが家の外で発散されるのです。
【子どもを否定する】
子どもを否定するとは、「ダメな子」「できない子ね」といった直接的な言葉だけでなく、子どもの気持ちを無視して親の希望を押し付けることも含まれます。親としては、「子どものためを思って」と考えますが、子どものやることなすことに手や口を出すのは、子どもの自主性を奪うことになります。子どもの意思を尊重しない状況は、ある意味において子どもを否定することになると思います。また、仕事が忙しい、余裕がないなどの理由で子どもの話を遮ったり、決めつけたりすることも否定となります。
【子どもをかまいすぎる過保護】
子どもを愛して慈しむのはとても大切なことですが、甘やかすこととは違います。子どもを最優先にしてわがままを受け入れて許していると、子どもは自分の意見が通ることが当たり前になり、人の気持ちがわからない性格になってしまいます。また、親が先回りしてなんでもサポートするなど干渉が過ぎると、子どもは自分で問題を解決する力が育ちません。そのため、物事がうまく行かない時にまわりに責任を押し付けるようになってしまいます。
【子どもに対して無関心】
過保護とは逆で、子どもに無関心であることが原因でいじめっ子になってしまうと言えます。親が忙しいといった理由で子どもと過ごす時間が少なく、コミュニケーションも十分に取れない環境では、子どもはさみしい思いをします。そのはけ口として、親との関係性がよく愛されているこどもなどを攻撃してしまうのです。
いじめっ子にならないために
では、子どもをいじめっ子にしないためには、どのようなことに気をつけていくのがよいのか、いくつかの具体例とともにみていきます。
【子どもとしっかり向き合う】
子どもとコミュニケーションをとる、ということが大切です。忙しさを理由に子どもの話を適当に聞いたり、一方的に親の意見を押し付けて終わらせたりすることはやめましょう。子どもが話を始めたら、家事などの作業の手を止めて子どもの方を向き、何を伝えたがっているのかしっかり耳を傾けましょう。まずは、子どもの気持ちを吐き出させることが大切です。そして子どもの気持ちに寄り添い、共感してあげましょう。
【他の子どもと比較しない】
「〇〇はできるのに…」「〇〇はもっといい子なのに…」など、無意識に他の兄弟姉妹、よその家の子どもと比べてしまうことはありませんか?大人でも他人と比べられるのは嫌ですよね。子どもは、親に自分を認めてほしいと思うものです。人と比べられることで「自分はダメなんだ」「自分には価値がない」と否定的になり自己肯定感が持てず、その気持ちを満たすために誰かをいじめるようになってしまいます。誰かと比べることなく、「そのままのあなたを愛しているよ」と個としてのその子を受け入れ、認めてあげましょう。
【愛情をもって接する】
子どもは、愛情たっぷりに育てましょう。愛情をかけられて育った子どもがいじめっ子になることはありません。いじめっ子は、「自分は親に愛されている」「親に大切にされている」という実感がないので、その寂しさを紛らわすため、また親に愛されている他の子に対する嫉妬心からいじめをしてしまう傾向があります。
子どもと真剣に向き合い、子どもの話に耳を傾け、子どもに甘えさせてあげる時間をつくりましょう。
また、悪いことをしたときは叱ることも大切ですが、感情的になってイラ立ちをあらわにするのはよくありません。怒りをぶつけて頭ごなしに「ダメでしょう!」と否定するのは親の自分本位の行為です。
たとえ間違ったことをしたとしても、子どもなりに理由があります。きちんと理由を聞いて、いったん認めて肯定してから、どこがいけなかったのかを伝えるようにしましょう。
親は本気で子どもと向き合い「個」を大事にすることが重要
「ほめ方、叱り方がわからない」という親がとても多いです。そんなときは、その話をしている親自身が、自分がどのように親から育てられていたかというところまで掘り下げるケースも多いです。
私が重要だと考えるところは、「親がいかに本気で子どもと関わっているか」ということです。個を大事にしているかです。日々相談を受けている中で、自分と子どもを切り離して個として見ていない親が非常に多いです。自分と子どもとを同一化してしまい、「うちの子は○○だから」「きっとこうだから」と決めつけてしまいます。物を与えているからいいのではなく、与える前にその必要性、そして与えられない家庭でも、その理由と向き合う親子との時間が大切なのです。
最近の親は忙しく、自分自身にも余裕がなく、子どもと向き合っていないように感じられます。「話しています、うちは会話している方です」という方もいますが、それは実は親が話をしたい時で、子どもが話をしたい時なのではないでしょうか。ベクトルが子どもでなく親自身に向いている、そんな親子関係が増えてきているように見受けられます。
「いじめ」を減らす方法としては、対症療法的でなく根幹の問題を見ていく必要があると私は考えています。原因は一つではないのです。
いじめ・家庭問題に苦しむ子どもとママのカウンセラー
大崎清美さん(心サポートセンターKotodama)
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