「新型うつ」を軽視する企業の行く末
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従来の「うつ病」も数十年前には理解されなかった

「新型うつ」は、従来の「うつ病」とは異なった病気といえます。「仕事では抑うつ症状を訴え休む傾向にありながら、余暇になると楽しく過ごす」「自責感に乏しく、他罰的である」「人格的に未熟で、規範や秩序、他者への配慮に乏しい」などの特徴があります。規範や秩序、他者への配慮を重んじてきたかつての日本人にとっては理解しがたく、共感しがたいのは当然のことでしょう。
しかし、振り返ると、従来の「うつ病」も数十年前には「うつ病なんて単なる甘えだ」と捉えられることが多く、なかなか認知されませんでした。それがようやく「うつ病とは病気なのだ」という理解が浸透するようになり、企業も対策を打ち出すようになってきたのです。そこに、同じ「うつ病」という診断のもと、従来の「うつ病」とは異なる「新型うつ」が登場してきました。まだまだ「単なるわがままではないか」と見られる面があり、企業側も混乱しているようですので、「新型うつ」に対して軽視した対応をとってしまうのもやむを得ないようにも思います。
「新型うつ」の排除を繰り返せば衰退への道をたどる社会に
ただ、現実には、「新型うつ」を発症する人たちが次々と出てきています。彼らは決して仕事の能力が低いのではありません。少し人格的に未熟な面があり、傷つきやすく、自分の嫌なことに対して耐える力が乏しいのです。感情的に見れば、こうした人たちを排除する方向に考えることもありうるでしょう。しかし、彼らを軽視し排除するだけでは、多くの有能な人材を生かすことができなくなるというのが、これからの社会でもあるように思われます。人材を生かすことができない企業が事業を発展させていくことは難しく、やみくもに排除を繰り返せば衰退への道をたどりかねません。
永続的な事業運営を実現するためにも、企業が従業員ひとりひとりの人生に心を配り生かしていこうとするのであれば、彼らへの理解と配慮を見直すべきでしょう。そのためには、まず「新型うつ」の症状と彼らが持つパーソナリティの特徴を理解しなければなりません。彼らを生かすためには、しばしば環境調整や、人格を成熟させていくための指導も求められます。感情的に彼らを軽視する心を諌め、一段の理解と配慮を考えていく必要があるでしょう。
“心の医療”のプロ
泉和秀さん(いずみハートクリニック)
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