初めての海外赴任が決まったら試して ほしい3つの考え方
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海外で仕事するなら知っておいてほしい3つの考え方
海外赴任といっても、会社の規模や業種、あるいは、赴任先の文化や環境、そして、赴任する人の現状など、大きくも小さくも違いがあり、一概には捉えられないことと感じます。ただ、個人的には、これから海外赴任に向かう人や海外での活動を志す人に、ぜひ知っておいて欲しい考え方が3つあります。
- 「五分の虫にも一寸の魂」
- セレンディピティ
- 「正直に 腹を立てずに 撓まず励め」
それぞれ見ていきましょう。
「五分」の虫にも「一寸」の魂
「五分の虫にも一寸の魂」というのは、京大理学博士である、西堀栄三郎先生の言葉ですが、私は、若かりし頃に、日本の厳冬期山岳やら、中国天山山脈のはずれの登攀などに夢中になったことがあり、南極越冬隊やチョモランマ登山隊の隊長として西堀先生を知ることとなり、先生の登山に関わるコラムや先生の著作の言葉から、薫陶を受けてきました。
「『五分の虫にも一寸の魂』があると信じてこそ、その人の創造性はますます伸びていく」、「仕事の目的を繰り返し強調して、最後に完成の喜びを本人に味わわせれば、その成功感こそが、人間として最も大きなモチベーション(意欲付け)」(「石橋を叩けば渡れない」西堀栄三郎著、生産性出版)と、未知の世界に挑むチームの隊長であった先生は、著作の中で、独特のリーダーシップ論と先生の人間観を教えてくれています。
人は人に使われている間は、同じ立場である 使われる同士で、愚痴を言い合いながらも、とてもクリエーティブなことを話し合うことができます。しかし 、自分が人を使う側になってしまうと、かつての自分や仲間の持つ創造性を忘れ、使う側の視点しか持てなくなることがあります。
使う使われるという二律背反の見方だけでなく、同じ組織の、同じビジョンを目指す同士という視点を持つこと、また、 海外赴任は、自分自身の能力の証明や限界を意味しているのでなく、共に可能性を導き出し合い、 自分を含めた人同士の可能性を追求できる絶好の機会であると捉えることが、アナタ自身の可能性を広げ、ビジョンそのものを大きくするきっかけになるに違いないと感じています。そして、それは、海外だけでなく、日本においても見直され良い、大切なものと考えることもできるかもしれません。
セレンディピティ
「Serendipity」を手元の英和辞典を調べてみると、「掘り出し物を見つける才能、偶然にいいものを発見する能力、幸運」(Advanced Favorite, 東京書籍)と記されています。
しかし、「セレンディピティ」は単に「『思いがけない』ということよりはずっと『創造』の部分が多い」と、テキサス州オースチン校の化学教授であるロバーツ先生は著作で教えてくれています。(「セレンディピティ」 ロイストン.M.ロバーツ著、滋賀医科大名誉教授、安藤蕎詩志訳、化学同人発行)
安全ガラスという割れても破片が飛び散らないガラスの存在は、どれほど多くの人命を救ってきたかわからないわけですが、その発見は、「たまたま」落ちたのに割れて粉々にならなかったフラスコにあったそうです。偶然、落ちて粉々にならなかったフラスコを良く観察し、調べてみることで、多くの人々が恩恵を受ける技術が明らかになったわけです。それは、専門知識と洞察力を偶然の出会いに活かすことができたセレンディピティの結果と考えられます。
それとは比較にならない小さなセレンディピティですが、偶然を問題や課題の解決や解消に流用するということは、私の海外赴任の経営の中にも見いだすことができます。
かつて、海外勤務中に社内で盗難があったのですが、 外部の警察に連絡することが適当な処置とは考えられていない地域と時期であり、とはいえ 、その問題をそのまま無視するわけにもいかず、対処を思いあぐねていました。その時、 「たまたま」目にした、近隣の町で開業する占い を利用して、犯人の自白まで至り、早期に解決することができました。以前私の会社の隣で、ボーナス支給のために用意された現金輸送車が襲われた時に、当地の警察が容疑者の残留物を 占い師に持ち込んだとうわさ話が流れたことも、あるいは、その早期解決の背景となったのかもしれません。
何としても解決するのだという意思があればこそ、そのあまりにもできすぎと思われる顛末を実現化したと思うのは、とても愉快なことです。どうしても理由の分からない処罰金請求に対する交渉や、その種の交渉を避けるための第三者との取引契約成約などでも、セレンディピティのお陰であったと思い返すことがあります。それは、ロバーツ先生の言う「洞察力」というより「ストーリー作り」「企画力」という方が、私にはしっくりきますが、私のようなものができたということは、アナタにも絶対できるという証左になっていると言えます。
正直に 腹を立てずに 撓まず励め
この言葉は、鈴木貫太郎先生の教訓として、前橋市立桃井小学校の基本目標です。
実は私自身は、海外赴任中に、「腹を立て」たことが原因で、労働調停局や最寄り警察への出頭を強いられたものです。日本では 、「度重なる、あからさまな仮病を繰り返すスタッフをどやしつけて逆恨みされる」というような経験 がなかったため、既知の体験だけで業務を執り行った結果のひとつです。そのことを後悔はしていませんが、「腹を立てずに」もっと楽しくなれる方法があったのではないかと反省します。
人としての姿勢、生き方に対する箴言としてだけでなく、「社員が、チームが」「撓まず(屈することなく) 励め」るようにするにはどうすべきか?しくみは?ツールは?と行動の規範と捉えてみると、何か戸惑う時の気づきを発見する糸口になってくれることがあるでしょう。
以上、日本から6,000kmほど南方の大国で12年間、現地日系企業を経営することになったひとりが、初めての海外赴任を目の前にするアナタに「応援歌」として贈るものです。
ビジョン達成へ経営者を後押しする専門家
小林一也さん(株式会社K2インターナショナル)
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