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うつ病が理解されない…家族、親、会社が考えるべき大切なこと

カテゴリ:
メンタル・カウンセリング
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うつ病 対策

脳の病気とされる「うつ病」が、どのような病気で、どういった症状があるのかは近年ではよく知られるようになりました。ところが、うつ病は見た目にはわからないため、その人がうつ病なのかどうか周囲の人間はなかなか気づくことはできません

なかなか理解されにくいという特徴は、うつ病の人をさらに苦しめ、家族や会社の人から心ない言葉をかけられたり、本当に苦しんでいるのに本気で取り合ってもらえないということまであるようです。そうした対応によって、さらに改善を困難にさせているのが現状です。

認知度は高いが家族からも理解されない「うつ病」

うつ病という言葉はよく知られ、それが病気であることも広く認識されていますが、実際にどのような症状で、うつ病の人にどのように接したらいいのかは、正しく理解している人は意外に多くありません。残念なことに、一番理解してほしい親、夫や妻などの家族にも理解されない場合があります。

うつ病だとわかっていても、一見すると「ただ元気がなく無気力なだけ」に見えたり、躁鬱状態の躁状態(ハイになっている状態)だけを見て「なんだ、意外と元気なんじゃないのか」と思い込むことで、つい感情的に接したり、励ましたりして元気づけようとしてしまうこともあるかもしれません。

特に、産み育ててくれた親は、それまで認識していた子の性格や行動が変わってしまったことを心配あるいは落胆して、うつ病という病気であることを受け入れてくれない場合があります。「私の知っているのはこんな子ではない。何かの間違いだ」と考え、つい、「がんばりが足りない」「やればできる」「気持ちの持ちようでがんばれる」など期待を込めて、強い言葉で叱咤激励してしまいます。

その上、うつ病はどれほど説明してもなかなか実感を伴って理解されにくい病気でもあります。おそらく、発生原因がストレスなど心因的なものであり、ストレスは誰しも多少なりとも持っているために、「大げさだ」「それくらい耐えられるだろう(自分だって耐えているのだから)」と考えてしまうからでしょう。

普段の生活の中でも、何か失敗したり、思うように物事が進まなかったりするだけで、気分が落ち込むものです。うつ病でない人は、そうした気分の落ち込みとうつ病の症状の区別がつかないのです。

うつ病でなければ、多少の落ち込みは何か別の楽しいことをして気分転換すれば解消しますし、時の経過とともに回復します。ところが、うつ病になると、気分の落ち込みや体調不良の原因となった事柄がはっきりしない場合が多いものです。周囲の何かが改善されれば解消される、というものではないのです。

うつは脳の病気ですから、根性論や気合で何とかなるものではありません。がんや糖尿病など身体的な病気と同じく、理屈で克服できるような病気ではないのです。決して悪気があるわけではないにせよ、中途半端な理解で的外れな対応をされてはたまりません。親など家族の、この部分への理解や周知が進まなければ、やはりうつ病の回復は困難でしょう。

また、親がうつ病を心配するあまり、自分たちに原因を探すこともあります。「育て方に問題があったのだろうか」「家での対応が間違っていたのだろうか」「もっと優しくできなかっただろうか」と思い悩んでしまったり、腫れ物に触るような対応になってしまったりします。

これという原因が一つあるわけではないので、家族には「こうしてほしい」といった今ストレスになっていることの改善を訴えましょう。そして、うつ病は治るのに時間がかかる病気なので、医師の指示に従って静かに見守ってもらいましょう。

妻や夫が「うつ病」を理解していない場合は療養に影響

夫婦間で相手のうつ病に対する理解がないと家族崩壊になりかねません。

夫側のうつ病の原因のほとんどは、仕事や職場の人間関係です。一時職場を離れて家庭で養生すれば回復していきますが、癒やしとなるべき家庭を支えるのは妻の役目となります。夫がうつ病になって職場を離れることは、夫の身も心配ですが家計の心配も大きくのしかかります。

妻自身も精神状態が不安定になり、うつ病になったことを責めることもあります。最近は、会社の休職手当や傷病手当が充実しているところもあるので、家計への心配をできるだけ取り除き、医師の診断を受けていることを説明しましょう。

妻も仕事を持っている場合は、比較的、夫の置かれた立場を理解しやすいので、十分に話をして妻の理解を得ましょう。その上で、できれば療養中に家事分担など家庭の中で何ができるか話し合って、わずかでも妻の負担を軽減できるようにしましょう。

逆に妻がうつ病になったときはどうでしょうか。

うつ病の妻が夫から理解されないことの方が多いようです。とりわけ専業主婦の場合は、癒やされるべき家庭が「職場」なので、うつ病の症状が出て家で休んでいても、どうしても主婦としての役割がおろそかになっているようで気持ちが休まりません。夫も、掃除が行き届かなくなったり、食事が用意できていなかったりする状態が続くと、ついきつい言葉でなじってしまいます。

仕事を持っている妻がうつ病になった場合は、原因が仕事や職場にあることが多いので、夫も理解しやすいのですが、専業主婦だとどこにうつ病の原因があるのか、夫側からは想像しづらく理解されないようです。

子育て、嫁姑問題、近所づき合い、煩雑な家事など、うつ病に至る要因はいくつもあるのに理解されません。それでも、うつ病を治すには、夫の協力が不可欠であることを、一緒にクリニックに行って医師の指示を受けるなどして理解を求めましょう。

「うつ病」のつらさは理解されないのが当たり前

現在、世の中にうつ病に関する知識があふれ理解が進んだとはいえ、病理の深い部分はまだまだ理解が進んでいないと言えます。医療従事者でさえいまだに手探り状態なのですから、現段階では、うつ病の理解を一般の人に求めるのがそもそも無理難題だと考えた方がよさそうです。

うつ病の本人にしても、ただ「あなたはうつ病です」と診断されただけで、具体的に自分の身に起こっていることや、その原因を自分自身でも理解できない状態にあるのではないでしょうか?自分でもいまひとつわかってないものを、他人に説明したり理解してもらうことが難しいのは当然ですよね。

ですから、うつになってしまったご本人は、まずは家族から理解されないことに対して過度に落胆しないことが肝心だと言えます。相手の無理解を責め始めると、どんどん傷つき、自分自身を追い詰めることになります。

でも、家族が理解できずにいるのは、あなたを傷つけようとしているとか、やさしくないからではなく、自分がかかったことのない病気だからつらさを知らないだけなのです。たとえば、あなたが糖尿病や心臓病になったことがないのに、そのつらさを本当には理解できないのと同じですね。「相手はうつ病を経験していないから、知らないんだ」くらいに思っておきましょう。

ただ、たとえ本当には理解されないとしても、家族には、「家族の支えがうつ病の改善には欠かせない」ということを覚えておいてもらってください。自分は今、病気なので治療と休養が必要であることと、治療と休養が適切であればいずれ回復していくことを説明して協力を求めましょう。

「うつ病」が理解されない会社でも離職しない

最近では、企業による社員のメンタルヘルスケアは充実してきています。平成27年には労働安全衛生法の改正によって、企業によるストレスチェックが制度化されました。産業医との連携で休養が必要な社員を事前にチェックして、うつ病対策がとられるようになりました。

しかしながら、制度としてのメンタルヘルスケアはあっても、実際の職場ではうつ病はなかなか理解されないようです。

うつ病になると、集中力や判断力が鈍ってしまいます。うつ病だと気づかないうちにそんな状態になると、仕事にミスが続いて上司からの叱責や同僚からの苦情を受けて仕事に対する自信を失ったり、長時間労働になって体力を消耗したり、余計に症状が悪化します。ストレスチェックで発覚するなどしてようやく「うつ病である」と本人や職場の人に認知され休職することになりますが、復職のタイミングは慎重に検討すべきです。

うつ病の回復には時間がかかるので、休職が1年以上になることもあります。ところが、本人の焦りもありますが、職場の上司や同僚が心配して少しでも回復したら仕事に出てくることをすすめたりします。

治ったと思って出社しても周りの期待通りに仕事ができないと職場でのイメージが悪くなったり、自分でも落ち込で再発したり状況が悪くなってしまいます。そのようなことを繰り返してしまうと、会社の方でも復職を疑問視する雰囲気ができてしまうので、ここは主治医の意見をしっかり聞いて療養に努めましょう。

上司や同僚の中には、休職中に「出社はいつになるんだ」「もう大丈夫だろう」「会社に出て刺激を受けた方がいい」などと連絡してくる人がいて、「うちの職場は、うつ病への理解が進んでいない」と不満に感じることもあるでしょう。

しかし、社員のメンタルヘルスケアは法律で定められた会社の義務でもあるので、安易に離職を考えないことです。うつ病治療中は判断力も弱くなっているので、大きな決断をするのはやめた方がいいでしょう。

家族や会社に理解されなくても一人で抱え込まない方法

家族である親や夫・妻、会社の上司や同僚に理解してもらうことをあきらめるのだとすれば、「ただ孤独に治療に励むしかないのか」と言えばそうではありません。身体的な病気でもそうですが、一人で困難に立ち向かったり乗り越えようとしても苦労しますから、苦しみや抱えている負担を全部一人で担おうとしないことが大切です。

そのためには、同じ悩みを抱える人、それから、少しでもこの病気を理解してくれる人とだけ関わりを持つようにすればいいのです。身近な人全員に理解してもらおうとせず、少しでも理解してくれようとしている人とだけ関係を続けていけばいいでしょう。

私がおすすめしたいのは、うつ病の人同士でコミュニティーを作り、そこで悩みを打ち明けて共有することです。

自分と同じ悩みを抱える人と気持ちを共有すると負担は分散されます。このような悩みの共有作業を続けていけば、やがてうつの症状も軽くなり、心にだんだん余裕が出てきて、考え方にも余裕が出てきますから、よりうつ病の改善につながりやすくなります。

直接知った人同士でコミュニティーを作らなくても、インターネットのポータルサイトやSNSなどを介してコミュニティーを作ってもいいと思います。

そして、このように他人から理解されないことは至極当然なんだということを踏まえた上で、それでもやはり社会的な周知と理解を進めていけるよう、まずは医療従事者が心ない態度で接しないように気をつけなければなりません。また、各家庭や企業も含めて社会全体で取り組んでいく必要があると思っています。

宮本章太郎

心理カウンセリングのプロ

心理カウンセラー

宮本章太郎さん(京都カウンセリングラウンジ)

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