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女性の妊娠は無責任?キャリアと育児を両立するためには

カテゴリ:
ビジネス
キーワード:
働き方改革
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女性が仕事と育児を両立させるのは未だに難しい

厚生労働省が発表した「平成28年度版働く女性の実情」によると、30~40代女性の働き方の特徴とされてきた「M字カーブ」の底が、10年前と比べ8.2%上昇しているそうです。「M字カーブ」とは、年齢階級別労働人口をグラフにした際、出産、育児期にあたる30代の女性の就業率が落ち込み、子育てが一段落した40代以降、再び上昇するという特徴を現したものです。

わが国では「3歳までは、母親は子育てに専念すべき」という「3歳児神話」に代表されるように、子育て=母親の仕事という意識が根強く残っています。そのため、女性の働き方として「出産後は育児のために退職し、子育てが一段落してからまた働き始める」というのが一般的で、長期的なキャリアプランを立てるのが難しい状況にありました。が、近年盛んに叫ばれている「女性の活用」や「働き方改革」といった国の方針から、子供を産んでも働き続けられるよう様々な制度・施策が打ち出され、それらもこうした変化につながっていると考えられます。

しかし、実際には、女性がキャリアを中断せずに仕事と子育てを両立するのは大変なことです。

「妊娠を報告したら暗に退職をほのめかされた」「育休取得後職場復帰したが、子供の事情(保育園のお迎えや発熱等)での早退や遅刻が多くなり、居づらくなって退職せざるを得なかった」などのトラブルが絶えません。たとえ退職とまではいかなくとも、待遇面や任される仕事内容が変わり、第一線から退くことになる女性も多いことでしょう。「責任ある仕事をしているにも関わらず、今、妊娠するなんて無責任だ」と非難されるケースもあるようです。これだけ働く女性が増え、制度も着々と整備されてきているのに、なぜこうした問題が起こるのでしょうか?

なぜなら、会社側にとって妊娠や出産は「これまでどおりの仕事ができなくなる」「周囲の人間にしわ寄せが来る」という生産性の低下や、子どもを持たない独身者側などとの人間関係の悪化を招く原因だと考える傾向にあるためです。

では、妊娠・出産は避けるべき悪かというと、当然そうではないはずです。人口減少が叫ばれている今、出生率の低下は社会全体の課題でもあります。また、妊娠するタイミングについても、キャリア志向の女性は社歴が長くなるにつれて会社にとって欠かせない戦力となり、抱える責任も重くなります。後になればなるほど「妊娠・出産で抜けられると困る立場」になるのです。しかも高齢出産になれば、今度は母子ともに健康リスクを抱えることにもなります。

つまり、妊娠・出産を、女性ひとりの個人的な都合・問題としてしまうには、あまりに重く複雑すぎると言えるでしょう。

女性が仕事と育児を両立するために必要なこととは?

数年前のことですが、「資生堂ショック」という言葉が話題になりました。

これは、子育て中の女性社員は長期の休職や時短勤務ができたり、土日祝日の勤務を免除されるなど、「女性に優しい」制度を積極的に取り入れてきた資生堂が、全社員に平等な勤務制度を適用するとしたものです。社員の8割ほどを女性が占めている資生堂では、子供のいない社員に負担がかかりすぎる現状が問題になるなど、制度変更の理由は様々あるようですが、このニュースを聞いたときに感じたのは「育児の負担を女性側にだけ押し付けようとしなければ、こんなことにはならなかっただろうに」ということでした。

子供を産めるのは女性だけですから、産前産後の休業は仕方ないにしても、育てるのは男性にもできること。夫の会社側でも育児休業や時短勤務などで支援するなど、夫婦で力を合わせて柔軟な働き方ができれば、妊娠・出産した女性の会社側だけが負担を強いられることも、一部の子供のいない社員にばかりしわ寄せがいくなどということも、起こらないはずなのです。

それは、裏を返せば夫の会社側の負担が増えるということにもなりますが、夫婦が所属する両方の企業が助け合う意識を持つことによって、少なくとも妊娠・出産を「女性社員を抱えたことによる災難」と敵視する風潮は軽減できるように思います。冒頭でご紹介した「育児=母親の仕事」という意識がある限り、女性が仕事と育児を両立させ、継続的に活躍する社会をつくることは難しいでしょう。

要は、制度を作ったり、女性や一企業の努力を求めるだけでは限界があるということです。女性がキャリアと育児を両立していくためには、子育てを女性だけのものと考えず、その配偶者の会社および社会全体が柔軟に子育てに協力し対応していくのだ、という意識付けが、まずは必要なのではないでしょうか。

介護業界の人財育成・人事労務に特化した社会保険労務士

五井淳子さん(アクティ労務管理事務所)

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