日本は本当に外国人労働者に依存しているのか?
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人手不足の解消と「外国人技能実習制度」は切り離す必要がある
ここ数年、人手不足の報道が多くなり、更に、最近では、人手不足で売り上げを増やしたくても増やせない、との報道もあります。人手不足の解消については、多数の意見があります。アイデアとして挙がっているのは、女性、定年退職した男性、外国人の雇用・活用が多いようです。
ただ、外国人については、技能実習生、アルバイトをしている留学生が、貴重な労働力となっていることは事実ですが、「本来の入国目的と違う」や「出稼ぎ労働者」という見方をされることがあります。
外国人技能実習制度とは、民間の企業や諸団体が、一定の要件をもとに外国人を受け入れて技術・技能・知識を習得させて、修得した技術等を母国に持ち帰り、母国の産業振興の担い手となる人材育成に協力しようとするものであり、母国等の経済社会に発展に寄与する広義の国際貢献を目指すものなので、本来は、素晴らしい制度です。
技能実習制度の見直しの内容について(監理団体型)
しかしながら、中小零細企業の人手不足の解消の側面もあり、ゆえに、入国管理法、労働基準法などの法律違反も指摘されるため、その都度、法律を変えてきました。現在では、下記のような見直しをしています。
- 1.実習生の送り出しを希望する国との間で政府間取り決めを順次作成する。相手国政府と協力して不適正な送り出し機関の排除を目指す。
- 2.監理団体(一次受け入れ)については、許可制。実習実施者については届出制。技能実習計画は、個々に、認定制。
- 3.外国人技能実習機構(認可法人)を創設し、監理団体等に報告を求め、実施に検査するなどの業務を実施。
- 4.通報・申請窓口を整備。人権侵害行為等に対する罰則等を整備。実習先変更支援を充実。
- 5.業所轄省庁、都道府県等に対し、各種業法に基づく協力要請等を実施にこれらの関係行政機関から成る「地域協議会」を設置し、指導監督・連携体制を構築。
監理団体や技能実習実施者を管理・強化をする内容にしています。また、たとえば技能実習生が送り出し機関から求める不透明なお金を支払うために借金してしまって実習先の賃金では返済できない、あるいはSNSなどで「実習先より高い給料を得られる勤め先」を知ったなどの理由で実習先を逃亡した技能実習生に対して、厳しい罰則を設ける対策もしています。
実習実施先と実習生、双方にとってより良くするには、法律面の強化だけではなく、相互の理解も必要なのかな、と思います。なお、多くの実習実施先は、騒がれるほど、悪質な振る舞いはしていないと思います。
外国人に頼っている?外国人労働者の割合は3%未満という試算も
続いて、「日本人のやらない嫌な仕事のほとんどを外国人に頼っている」と言われますが、
それでは、そのような仕事を含めて、どのくらいの外国人が働いているのか、事業者が頼っているのか、を各種の指標で推測します。
まず、日本の人口で15歳以上は約1億1千万人、そのうち労働力人口は約6千百万人です。(平成27年の国勢調査で、平成27年10月1日時点のもの。なお、国税庁の平成27年12月31日の給与所得者数は、約5,646万人です。)
次に、外国人の統計と照らし合わせますと平成28年12月末の在留外国人のうち、「アルバイトを含む就労が可能となる15歳以上の人数」は約218万人となります。このうち、76歳以上の約5万5千人を省くと、約212万人になります。もちろん、20歳から65歳までのゾーンで働かない人もいるので、実際の就業者数を推測するには、考慮する必要があります。
(入国管理局から資格外活動許可を得る必要がある在留資格もありますし、就労不可のケースもありますが、それは置いておきます)
他の指標を見てみると、平成27年の国勢調査で15歳以上の外国人就業者数は、約80万8千人(平成27年10月1日)となっており、厚生労働省の外国人雇用状況では約108万人(平成28年10月末)です。
上記の2つは、国勢調査に回答していない外国人、外国人を雇用していてもハローワークに外国人雇用状況届けを申告していない事業所もあるので正確ではないと思いますが、就業者数は、約108万人から約212万人の間と推測されます。
これらを踏まえて、私見ではありますが、その中間の160万人ぐらいは働いているのではないか、と推測しています。(不法残留者が約6万2千人程度いますが、それを含めて)160万人が働いていると仮定して、国勢調査の平成27年10月1日の労働人口6千百万人で割ると、約2.6%なので、現時点ではあまり「外国人の労働力に頼っている」という印象は受けません。
また、外国人雇用状況届出制度で、平成28年10月末現在の外国人を雇用している事業者数は172,798か所です。そうすると、事業者数全体はどのくらいなのか?を探す必要がありますが、従業員を雇用している雇用保険の平成28年10月末現在の適用事業者数を見ると、2,157,745か所です。(中小企業庁の調査で平成26年の事業者数は約382万)
両方とも、申告ですので正確な数ではないと思いますが、172,798を2,157,745で割ると、約8%になります。しかし、実際に外国人を雇用している事業者数は、もっと多いと思いますが、それでも全体の15%はいかないのではないかな、と推測します。
ですので、一部の業界や事業所で、働いているかもしれませんが、多くの事業所では、外国人はさほど働いていない、事業所も外国人に頼っていないと推測されます。それは、外国人を必要としないのか、外国人を雇うことに対する戸惑いがあるので迷うのか、は個別の事業者の考え方があるものと思います。
いずれにしても指標からみると、働いている外国人の数は多いかもしれませんが、日本の労働力人口との割合で見れば少ないし、多くの事業所は外国人を雇用していない、が結論となりそうですが、必要としている業界や事業所があるため、外国人を受け入れる余地はあると思います。
労働力人口が不足する可能性に備えて 外国人受け入れのためにすべきこと
近いうちに労働力人口不足が危惧される場合、もし、外国人を受け入れる余地があるとしたら、既に政策として実行しているものも含めて以下のような取り組みが考えられるのではないでしょうか。
- 技能実習は、本来の趣旨に立ち返る
- 必要以上の金銭を要求するブローカー排除の徹底
- 外国人を雇用しない事業者が多いので、外国人雇用についての理解を求める
- 世界各国へ、日本は働きやすい、というアピールを、官民で取り組む
- 人手不足の業界については、日本語能力試験のN3レベルを対象に商工会議所が主催する簿記、販売士、法務のような科目を英語での実務検定試験を実施。合格者は特別枠のような形で在留を認める。
- 在留年数を制限しないで、専門職の在留資格へ移行できるよう、キャリアアップの道を作る。
しかし、将来、どれだけ労働力人口が不足するのか?という予測については、研究機関によっては、千万単位で不足するとの予測もでていることから「移民を受け入れるべき」との意見がありますし、AIやロボットが普及すれば、仕事がなくなる人が増えるのだから「外国人労働者を増やす必要はない」という意見もあり、いまだ見えていないというのが実情と言えそうです。
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