「脱時間給」とは?労働生産性が向上すると考えられる理由
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「脱時間給」とは何か
「脱時間給」という言葉を聞く頻度が増えていますが、そもそもこの「脱時間給」とはどのような制度なのでしょうか。
平成27年4月に労働基準法等の一部を改正する法律案が国会に提出されました。この改正法案の目玉の一つに特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設があります。
この高度プロフェッショナル制度のことを、マスコミ等は分かり易く「脱時間給」等と表現しています。もともとは、アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションの考え方をベースにしていると言われています。
「脱時間給」への反発
高度プロフェッショナル制度(ここでは「脱時間給」という)とは、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応える制度です。
この制度の最大の特徴は、対象となる労働者については、時間外労働・休日労働・深夜労働に関する労働基準法上の規制の対象外となり、割増賃金の支払いの必要がなくなるということです。そのため、この法案を「残業代ゼロ」法案等と表現し、長時間労働を助長するなどとして反対意見も多数あります。
労働生産性向上と「脱時間給」
現在、日本では少子高齢化が進み、ますます労働者数の減少が避けられないところ、グローバルな視点からも労働生産性の向上が必要不可欠な課題となっています。
2015年の日本の労働生産性はOECD加盟国35か国の中で22位でした(公益財団法人日本生産性本部『労働生産性の国際比較2016年版』)。これはアメリカの約6割です。私は、今回の改正案の制度内容等については多少疑問がありますが(例えば、制度導入の背景、「対象業務」の妥当性、「年収要件」の合理性)、方向性としていわゆる「脱時間給」(≒ホワイトカラー・エグゼンプション)の考え方を取り入れることは必要だと考えています。
そもそも、ホワイトカラーの業務はデスクワーク、企画立案、研究などの労働が中心のため、労働時間に比例して生産性が向上するとは必ずしもいえません。つまり、ホワイトカラーが従事している業務は労働の価値を時間で計りにくく、労働時間の長さと成果が必ずしも比例しないという特徴があります。そのため、労働時間を基準にして報酬を支払うといった方法では労働者の能力に対して適正な評価がやりにくく、成果の実情に合っておらず、労働者のモチベーションの低下に繋がります。
そこで、時間ではなく「成果に応じて報酬を支払う」ことにより、ホワイトカラー層の労働を適正に評価し、労働生産性の向上を図ることがホワイトカラー・エグゼンプションの目的です。厚労省の労働政策審議会での審議過程を見ても、使用者側からは、(対象となる)労働者のモチベーションを高めて労働生産性の向上を図るために、現行の裁量労働制(労基法第38条の3、第38条の4)ではなく、新たな制度を導入すべきである旨の発言があります。
一方で、確かに、長時間労働や健康被害の懸念は付きまといます。また、現行の裁量労働制の枠内で対応することもできるとの批判もあります。
よって、今回のいわゆる「脱時間給」が国民からの理解を得られ広がるかどうかは、長時間労働・健康被害に対する懸念が払拭されるとともに、他制度との違いが明確できちんと説明できなければならないと考えます。
特に経営側が、「残業代払わなくてラッキー」というような誤った理解の下で制度が広まらないようにしなければなりません。あくまで企業の責任による労働時間を含む適切な労務マネジメントが前提にある、ということは言うまでもないことです。
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