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レゴランド オープン2ヵ月で値下げへ 集客改善につながるか?

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レゴランド 開業2カ月で実質値下げへ

レゴブロックのテーマパーク「レゴランド・ジャパン」は、2017年5月25日、早期購入による割引き価格を適用した1DAYパスポートの販売を開始しました。
1人用のパスポートが、大人6900円子供5300円のところ、入場日の7日以前ならば、大人6200円子供4700円(10%の割引)、6~2日以前ならば大人6500円子供5000円(約5%の割引)となっています。

同時に、家族3~4人分のパスポートをセットにした「ファミリー1DAYパスポート」も発売しました。
大人(13歳以上)最大2人までと、3~12歳の子どもが利用できる入場券で、こちらも早期購入による割引があり7日以上前の購入で、4人分は通常2万4400円のところ1万8300円、家族3人で通常1万9100円のところ1万4700円(ともに25%の割引)になります。

広報担当者は、新たな価格体系の導入の経緯について、「2~12歳のお子様とそのご家族をメインターゲットとしているため、そうしたチケットがあった方がよいかどうか、以前から社内で検討しておりました。
お客様からそうしたご要望もあったので、夏休みに向けて販売に至りました」と説明しています。

また、5月14日から水筒やペットボトルの持ち込みを認めており、会見では迅速に顧客の要望に応えていく姿勢を強調していました。

同社の発表を額面通りに受け取れば、顧客ファーストの素晴らしい企業姿勢が現れた戦略ということになりますが、果たして実際のところはどうなのでしょうか。

入場者数が目標に遠く及ばないと推測される理由

レゴランドは初年度の目標入場者数を200万人と発表していましたが、現状について「計画を上回っている」と語るのみで、開業後の実績数を発表していません。
なぜ発表しないのでしょうか。
入場者数が順調に伸びていれば、宣伝のために実数を発表することに何らデメリットはありません。
ところが「入場者数が少なく園内はガラガラだ」という風聞があることから、実はレゴランドは集客に苦しんでいる可能性があるのです。

その可能性を裏付ける周辺情報が2つあります。
一つ目は6月以降に導入する休園日です。
運営会社によると、遊具類のメンテナンスと従業員の休日確保を主な目的として、年内の休園日はいずれも火曜日と水曜日で、閑散期を中心に6月、7月、9月、11月、12月の計34日。
6月と9月はすべての火、水曜を休園にするとのこと。
広報担当者は「家族での来場が難しい平日、雨の多い時期を中心に設定した」と説明しています。

休園日を設ける説明は、それなりに筋が通っていますが、「ではなぜ、開業当初は休園日を設けていなかったのに、わずか2ヵ月足らずで休園日を週に2日もつくる必要があるのか」に対する答えにはなっていません。

最悪のシナリオを想定すると、事業運営には固定費と変動費の2種類が必要ですが、固定費は営業してもしなくても発生してくる経費ですが、変動費は営業しているときに発生してくる経費なので、人件費を中心にした変動費の削減を行わなければならないほど、営業赤字が深刻な可能性が出てきます。

二つ目は、隣接する商業施設「メイカーズピア」に入店していたレストラン1店舗が5月22日をもって閉店したというニュースです。
撤退したレストランの運営会社が「売上高は想定の10分の1。レゴランドが思ったように集客できておらず、テナント側には手の打ちようがない」と話していると、読売新聞が報じています。

このレストラン1店舗の閉店の事実と理由だけでは、レゴランドが集客不振であると決めつける訳にはいきませんが、6年契約を解除して違約金を支払うという判断をするには、それなりの見通しと覚悟が必要です。
今後引き続き閉店する店舗が出てくるようだと、レゴランドの集客不振が疑われる可能性が高まることは間違いありません。

なぜ集客に苦しんでいるのか?

レゴランドが入場者を計画どおり集められているかどうかは不透明ですが、開業前から「入園料が高すぎる」という声が多かったのは事実です。
こうした声を言われなき非難と決めつけるわけにはいかず、それなりの理由があるのです。

先ずは、日本におけるテーマパークの双璧である東京ディズニーランド(TDL)とユニバーサル・ジャパン(USJ)とレゴランドの基本スペックの比較をしてみましょう。

レゴランド
開業時の敷地面積:9.3万平米
開業時の投資額:320億円
アクセス:名古屋駅-金城ふ頭駅23分+徒歩10分
営業時間:10時00分~19時00分

TDL
開業時の敷地面積:48.3万平米
開業時の投資額:3600億円
アクセス:東京駅-舞浜駅16分+徒歩5分
営業時間:8時00分~22時00分
入場料:7400円子供4800円(1DAYパスポート;他に12~17歳の設定あり)

USJ
開業時の敷地面積:39.0万平米
開業時の投資額:1700億円
アクセス:大阪駅-サルシティ駅12分+徒歩5分弱
営業時間:9時00分~21時00分
入場料:大人7600円子供5100円(1DAYパスポート)

テーマパークの魅力度は、事業の王道に従いヒトモノカネの総量で決まることが多いと考えて間違いありません。
もちろん、もともとのストーリーとかキャラクターの魅力度が根底にありますが、現実的にはヒトモノもカネ抜きには質と量の確保が難しいことを考えると、最終的なコンテンツの魅力は投資額に正比例せざるを得ません。
それを,TDLの10分の1以下、USJの5分の1以下の投資しかしていないレゴランドが、入場料を2大巨頭と同程度としている時点で割高感が出るのは当然です。

営業時間が最も短いこともレゴランドにとってはマイナス要因でしょう。
レゴランドは9時間営業,ディズニーランドは14時間営業,USJは12時間営業です。これを1時間当たりの入場料に引き直してみましょう。
レゴランド:大人699円子供522円(7日以前の早期購入割引価格)
TDL:大人529円子供343円
USJ:大人633円子供425円

1時間当たりの料金で見ても、レゴランドの割高感は揺るぎません。
さらに言うと、TDLもUSJも営業時間をすべて使ってめいっぱい遊べるコンテンツが揃っていますが、レゴランドは他の2施設同等に9時間めいっぱいエンジョイできるコンテンツがあるのでしょうか。

1時間当たりの金額という指標を使ってみると、レゴランドの入場料の割高感がむしろ高まることが分かります。

ではどのようにして、レゴランド・ジャパンは当初の入園料を設定したのでしょうか。参考までに提示すると、海外で既に営業中のレゴランドの入場料はつぎのとおりです。
デンマーク:大人359デンマーククローネ(5995円)子供339デンマーククローネ5661円
カリフォルニア:大人95ドル(10450円)子供84ドル(9240円)
ドイツ:大人44.5ユーロ(5520円)子供39.5ユーロ(5000円)
マレーシア:195リンギット(5037円)子供155リンギット(4004円)

補足として、海外にあるディズニーランドの大人の入場料も示しておきます。
フロリダ:113.96ドル(12650円)
カリフォルニア:97ドル(10767円)
パリ:61ユーロ(7564円)
香港:589香港ドル(8246円)
上海:499元(8084円)

5月31日時点の為替相場で円換算しているので、価格比較は一概に出来ないですが、こうした数値を見ると、レゴランド・ジャパンが入園料の設定する際には、地理的にマーケットを同じくするTDLとUSJの価格を参照したことは間違いないでしょうが、それ以上に、海外のレゴランドの入場料との整合性を意識した可能性が高いことが否定できません。

今回の価格戦略は上手くいくのか?

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今回の早期購入による割引価格を適用した1DAYパスポート導入のプロセスについて、いくつかの推論をしてみましたが、プロセスはともかくとして、結果オーライでも今回の価格戦略が入場者数を増加させ、最終的に増収増益という効果を生み出すのでしょうか。

結論から申し上げると、そう簡単にはいかないでしょう。
その理由は3つあります。
一つ目は、そもそもレゴブロックが持つ玩具としての魅力度やブランド力が欧米ほど高くないことです。
日本には、ソニー、バンダイナムコ、任天堂、セガサミー、タカラトミーなどの世界的にも知名度の高い玩具メーカーが複数あります。
その環境において、世界的には売上高1位2位を争うレゴブロックであったとしても、圧倒的な存在感を示すには至っていません。

とは言うものの、ゲーム中心の日本のゲームメーカーと比べると、実際に手を動かして創作するレゴブロックは、差別化された特徴をもった玩具であることは間違いありません。
ただし、日本では小学生になると半数がゲームを始めるという内閣府の調査結果があるのを見ても、レゴブロックのような玩具に優先的に触れあう期間は短いことになります。

二つ目は立地の問題です。
TDLやUSJと比べて、主要駅からのアクセスが良いわけではありませんが、それ以前に名古屋というエリアに難しさがあるのではないでしょうか。
レゴランド側は、名古屋は東京からも大阪かからも顧客を呼び込みやすいと考えているのかもしれませんが、名古屋在住の方自身が、TDLにもUSJにも日帰りで行きやすいことをメリットとして上げている一方で、地元のテーマパークへ行く誘因が弱いのです。
だからと言って、東京や大阪在住の人々が時間と金をかけて名古屋のレゴランドまで行くかというと、現在の施設の魅力度を考えると、その割合は極めて低いでしょう。

レゴランドの近く名古屋ガーデンふ頭にあった「名古屋イタリア村」が、基本的に無料であったにも関わらず2005年に開業して2008年には破綻した事実からどのような教訓を生かしているのでしょうか。

一方で、伊勢湾自動車道を使ってわずか15分の場所にある三重県のナガシマリゾートは、4月にレゴランドが開業した時に、マイナス影響があることを心配していましたが、フタを開けてみると杞憂に終わったようです。

今年のGW期間中(4月29日~5月7日)にナガシマリゾートを訪れた人は90万人を記録。
この数字は2016年と同じでしたが、昨年はGW期間(4月29日~5月8日)が10日間だったのに対し今年は9日間だったことを考えると1日当たりの入場者数は昨年よりアップしたことになります。
同じ近場のテーマパークだったら、レゴランドではなくナガシマリゾートを選択している可能性が高いことが、この事実から伺えます。

三つ目は、レゴランドが対象としているターゲット顧客層の狭さの問題です。TDLやUSJが継続して入場者数と売上高を伸ばし続けている理由はいくつかありますが、その一つに、対象とする顧客ターゲットが広いということがあります。

具体的に言うと、すべての年代、男女問わずTDLやUSJを訪れる人がいます。
場合によっては、大人や中高生の男性同士や女性同士で来園することはまれではありません。
ところがレゴランドは、保護者同伴の12歳以下の子供をメインの顧客ターゲットにしています。

もちろん、レゴランドに友達同志13歳以上の人でも入場できますが、せっかく12歳以下の子供時代にレゴランドのファンになったとしても、13歳になった途端に大人料金を課されて、どれだけの人がどれだけの頻度で訪問するでしょうか。
それに比べると、12~17歳の中人料金を設定しているTDLは、先ず子供時代にファンになってもらい、歳を積み重ねても引き続きファンであり続けてもらうことで、LTV(顧客生涯価値)を上げるためのビジネスモデルが採用されていることが分かります。

レゴランドが上手くいくかどうかこれからが正念場に

製造業中心で発展して来た日本経済ですが、将来を見据えて第三次産業へのシフトが必要と言われて久しくなります。
そういう意味では、テーマパークという無形の価値を提供する産業の興隆は望ましいことです。

1987年にリゾート法が成立したことに伴い、日本全国で多数のテーマパークが開業しましたが、現在に至るまで順調に営業を続けている施設は少ないのが実態です。
長崎オランダ村(1983年開業2001年閉鎖)、ハウステンボス(1992年開業2003年再生)、志摩スペイン村(1994年開業2006年再建)、シーガイア(1994年2001年破綻)・・・等、現存している施設に負けず劣らず破綻した施設が多いのです。

「人々に夢を提供する」というコンセプトを掲げるテーマパークは、事業家のモチベーションを高めやすいビジネスですが、本当の意味で顧客の心を掴むためには、大きなストーリーやビジョンがあるだけでは足りず、サービス業としてのこと細かな心配りをどこまで出来るかにかかっています。

今後レゴランドが計画どおり順調な営業を続けられるのかどうかは、現時点では未知数ですが、出だしの躓きがあったとしても真のエンターテナー精神を発揮して、日本におけるテーマパークの第3極になれるかどうか、これからが正念場になりそうです。

「競争しない企業」をつくる経営コンサルタント

清水泰志さん(株式会社ワイズエッジ)

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