統合失調症について 名は体を表す
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統合失調症とは?
統合失調症とは、以前精神分裂病とも呼ばれたその名の通り、知情意といった個々の精神機能を統合する機能の障害を本質とする、古来より存在する精神の病で、100人に一人弱もかかるといわれています。
このことからも、遺伝的に何らかの脳の脆弱性(ぜいじゃくせい:病気になり易い何らかの弱点)があることは確実と思われます。
しかし、病因に関しては遺伝的素因のみでは説明しきれるものではなく、これに環境因、心理的要因が組み合わさって、遂に発症に至ると考えられています。
症状の最大の特徴
統合失調症は精神病を代表するものであり、精神医学の最大のテーマのひとつです。
その症状の最大の特徴は、上記の如く、精神の統合性が障害されることが本質的なものです。
これをイメージで譬えて言うならば、オーケストラの演奏において、個々の演奏者が指揮者を無視してバラバラに演奏し始めたという状況を想像してもらうと分かり易いでしょう。
不協和音が生じ、ある楽器の音が異常に大きくなったり、小さくなったり、音楽としての調和、纏まりがなくなり、何かしら音楽を表現しようとしているのだが、酷くなれば滅裂なものとなります。
この病態を説明する別のモデルを挙げると、自分の家を持っているのだが、家の全ての壁が透けてしまった状況を想像して下さい。
家の外からは自分が常に見られてしまいます。
こうなると他者の視線から自分の守り様がなく自然に振る舞えなくなってしまい、安全感といったものがもてなくなるでしょう。
自我と世界との境界がなくなる―安全保障感の喪失、被害的幻覚妄想、いきなり世界の中心に立たされる体験、自閉といった心理を説明する一モデルです。
症状がもたらす脳の混乱
上のモデルと関連して、統合失調症では外からの情報刺激に対し過敏になっているとされています。
私たちの脳は感覚器官にキャッチされる全ての情報を意識に上らせているのではありません。
そこには生存のために重要なものから優先させるような精妙な取捨選択があり、脳が情報でパンクすることなく、統合性を保って機能できるための統制が働いているのです。
この統制が弱まり、情報のフィルタリングが弱くなると、脳は外界に圧倒され、混乱に陥るでしょう。
また、この情報フィルタリングは外からの情報に対してのみならず、深層心理学で「無意識」と呼ばれる、普段意識されることのない深層のこころに対しても行われている、と考えられます。
例えば、夢や瞑想、ある種の薬物によって現れる幻想的な体験や神話などは全ての健康な人間の深層のこころを表しているが、普段は意識には上って来ないのは脳の統制によると考えられます。
このように病者は外界、内界の双方の世界から言わば侵入を受け、外界と内界はごっちゃになり、患者は混乱し、恐れおののくことになります。
世界は元の意味を失っていき、不可解、不気味な、恐ろしい、自分を圧倒するもの、脅かすものに変容していき、病者と世界との関係は失われていきます。
そこからなんとか自らを守りつつ、理解困難となった世界をもう一度理解しようと考え続け、関係を回復させ、生存しようとする中で、病者は孤立し、追いつめられ、いきなり世界の中心に立たされる体験をも持ちます。
このような主観的な体験が、被害的な幻覚や妄想、誇大妄想、興奮、混乱、困惑、自閉、感情の鈍麻化、神経の消耗、無気力等などのいわゆる精神病症状として現れると考えられます。
治療法について
以上極めてざっくりと説明をしましたが、大体のイメージとして捉えて頂ければと思います。
治療としては具体的には様々なので簡単に言うと、大きく分けて、薬物療法と精神療法になります。
治療者(医師、心理士)は、まず患者にとって数少ない現実的な、患者を助けてくれる存在、安全保障感を与える存在となるよう努めます。
薬物は上記の情報のフィルタリングを強めるものと解釈してよいでしょう。
患者を圧倒する、不可解な世界の圧倒的なインパクトを減じ、恐怖、不安を減じ情動を鎮静させ、患者が徐々に(外的及び内的な)世界を再構成し、関係を回復させることに役立ちます。
治療者はこの失われた病者の世界の再構築の仕事に寄り添っていくのです。
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