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交通事故死の4倍以上のヒートショック関連死亡者数をどう防ぐ?

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ヒートショックとは

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ヒートショックは、医学的には細胞にとって理想的な体温より高い温度下にさらされた場合の生化学的な効果のことをさしますが、現在では、入浴する場合、暖かい居間から寒い脱衣所や浴室への移動、そして熱い湯船への移動という小さな動きのなかでの急激な温度変化が短時間のうちに起こり、これに伴って、血圧の急激な上昇や下降が引き起こされることを言います。
特に、寒暖差の大きい冬の入浴中に起こる突然死(脳卒中や心筋梗塞など)の大きな要因となります。

入浴中の事故死は溺死以外の死因も含めて年間約1万9000人に上る

厚労省研究班の2013年度の報告書によると、入浴中の事故死は溺死以外の死因も含めると年間約1万9000人に上り、その数は、日本人死因の5番目にあたります。
また、その数は交通事故による死亡者数の4倍以上であり、そのうち高齢者は8割を超えます。
さらに、その数は年々増加傾向にあり、特に冬期に集中しています。

浴室・脱衣室・トイレの適切温度は17℃以上

日本における冬期の浴室や脱衣室、トイレの適切とされる温度は17℃?25℃が推奨されています。
17℃でも低いと主張する研究者もいるようですが、実態調査では非暖房室は10℃?15℃の住宅が多く、17℃にすら到達していないのが実情です。
ましてや、浴室では裸になるので身体への影響はさらに大きくなります。
室温や湯温と血圧の関係の研究では、浴室・脱衣室・トイレの適切温度は17℃以上、湯温41℃以下、入出浴における収縮期血圧の変動幅は±10 mmHg居以内が望ましいとされます。

冬季の入浴で血圧が大きく変動するワケ?

寒い脱衣所で衣服を脱ぐと、体から熱が奪われないように毛細血管が収縮し、血圧が上昇します。
浴槽に入り熱い湯に触れると交感神経が興奮するため、血圧が急激に上昇します。
浴槽内で肩までどっぷり湯に浸かると、水圧により心臓に負担がかかり、さらに血圧が上昇します。
その後、浴槽内で体が温まると血管が拡張し、血圧は急激に下降します。
浴槽から上がると水圧がかからなくなるため、血圧は下降します。
入浴後、脱衣所が寒いと温まった体が冷えるため、熱が奪われないように再び毛細血管が収縮し、血圧が急激に上昇します。
つまり、冬季の入浴ではお湯で体が温まるまではどんどん血圧が上昇していき、その後浴槽から上がるまでは血圧が下降、そして脱衣所で身体が冷えると再び血圧が上昇するというように短期間で血圧の変動が大きくなるのです。

ヒートショック予備軍になりやすい人

血圧の変動により脳卒中や心筋梗塞を起こすと言われていますが、その影響を受けやすい人は、65歳以上の人、高血圧や糖尿病や動脈硬化などの病気がある人、肥満、睡眠時無呼吸症候群など呼吸器官に問題がある人、不整脈がある人になります。

それ以外でも生活習慣から、自宅の脱衣所や浴室に暖房器具がない人、いわゆる“いちばん風呂”に入ることが多い人、熱いふろが好きな人、お酒を飲んでから入浴することがある人なども血圧の変動をおこしやすいと言えます。
リンナイは全国の20代から70代の男女に入浴習慣に関する意識調査を実施、その結果、飲酒後に入浴した経験が「ある」と回答した人は、年代別にみると50代が最も多く18.3%、次いで20代が17.8%と若い世代でもヒートショックの危険性が高い実態が明らかになりました。

居室間の温度差に気を配って予防しよう

以上のことからヒートショック予防は、浴室や脱衣室、トイレの温度に暖房器具など用いて気を配ります。
入浴の際は、一気に肩まで入浴せず、徐々に身体の末端からかけ湯などして暖めていくようにします。
また、飲酒後の入浴は避けてください。
入浴中は汗をかくので脱水予防のためコップ1杯程度の水分補給をしてから入浴してください。
特に冬期は注意が必要で、ご高齢の方は、14~16時頃のように、外気温がまだ高く、人の生理機能が活動的だと温度差へ適応しやすいので、夕食前や日没前の入浴が安全です。

-おわりに-
多くの人は‘おふろ’が大好きです。1日の疲れから身体を癒す時間と考えている人が多いでしょう。
あるいは、朝、目覚めのスイッチとしている人もいるでしょうか。
そんなささやかなしあわせの時間が壊れないように、心がけてはみませんか?

 

医療を越えた総合的ケアを目指す消化器内科のプロ

及川寛太さん(医療法人 天音会 おいかわ内科クリニック)

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