東証・大証統合による株価への影響
上場企業数世界第3位の「証券取引所」が誕生
7月16日、東京証券取引所と大阪証券取引所が現物株の市場を統合し、上場企業数3423社の世界第3位の「証券取引所」が誕生しました。現物株については東証に集約され、大証は今後「デリバティブ市場(※1)」という、少し特色の異なる機能に特化していくことになりました。大証の一部に上場していた大企業は東証一部に統合され、大証の二部に上場していた中堅・中小企業は東証二部に統合されます。日本を代表する企業が上場する市場の統合により、今後の株価や経済への影響も気になるところです。
東証・大証の統合で株価が上昇した企業も。そのワケは?
市場というのは、文字通り「いちば」ですので、陳列されている商品(上場株式)も違いますし、取引される値段(株価)も異なります。例えば、任天堂株式会社は、東京証券取引所と大阪証券取引所の二箇所で重複上場していました。任天堂は世界中の人が知る有名企業ですが、本社が京都にあるため大阪市場での売買が多く、株価も二つの市場で異なったりしていました。それが、今回の統合によりひとつになり、任天堂の株は売買高が増え、株価も上昇したと言われています。
なぜ、同じ会社なのに市場が統合されただけで株価が変動するのでしょうか?実は日本の株式市場の動きに連動するように設計された「インデックス型」と呼ばれる投資信託は、東京証券取引所に上場している企業を中心に取引をしますので、これまで大証で取引される銘柄は買われませんでした。それが今回の市場統合により、これら投資信託の大きなお金が流入してくる可能性が高まり、それを見越して「仕入れ」をする投資家も多いためです。
ファンドへの組み入れ期待で大証単独上場企業の株価が上昇
実際のインデックスファンド等への組み入れは9月以降となるようですが、ファンドへの組み入れ期待の恩恵を受けている企業は任天堂以外にもあります。例えば、餃子でお馴染みの王将フードサービスや、近鉄百貨店などは大証のみに上場していた企業ですが、上記のようなファンドへの組み入れ期待から株価が上昇しました。株式の取引量が増えると、何かの反動で株価が一方的にブレることが少なくなり、安定すると言われています。これは企業にとって、安定した資金調達ができることになるためメリットといえるでしょう。
衆参のねじれ解消により政権が安定し、アベノミクスもいよいよ本格稼働となる見込みです。デフレ脱却に向け日本経済が動き出す今、身近な上場企業の株価を追って経済に興味を持ってみるのも良いかもしれません。
(※1)デリバティブ市場:株式、債券、預貯金、ローン、外国為替などの金融商品のリスクを低下させるために考えられた取引を扱う市場。
年金・資産運用に強い独立系ファイナンシャルプランナー
山中伸枝さん(株式会社アセット・アドバンテージ)
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