首相が賃上げ要請 賃上げだけで景気は上向くのか?
安倍首相が賃上げを要請
安倍首相は、2017年の春闘に向けて「経済の好循環を継続する鍵は来年の賃上げで、今年並みの水準を期待する」と延べ、これに対して経団連の榊原会長は「賃金引き上げの勢いを継続していく」と返しました。
しかし、円高や新興国経済の低迷などにより、今後の収益に不安もあり賃上げをためらう企業も多々あるようです。
デフレから脱却し、経済を好循環させるためには賃上げは確かに必要ですが、実際はどうなのでしょうか。
一部の大企業正社員だけの賃上げでは力不足
失業率はリーマンショック後から下がり続けて、平成28年9月現在3.0%とリーマンショック前よりも低い水準となっています。
しかし、その割に景気回復は実感できず、デフレからの脱却も進んでいません。
それは何より、平成元年には非正規雇用者の割合が19.1%だったものが、平成27年には37.5%と大幅に増加していて、失業率が下がったとは言っても賃金の低い非正規雇用者が増加している実態のためです。
ですから、経団連に加入しているいわゆる大企業の正社員が賃上げできたとしても、それは労働者の一部であって、中小企業や非正規雇用者の賃上げも進まなければ、なかなか景気回復、デフレからの脱却を実感できないでしょう。
賃上げだけでなく総合的な政策を動員することが重要
政府ももちろんこのことは分かっていて様々な対策を実施する予定です。
賃上げをした企業に対して減税を行う「所得拡大促進税制」について減税率10%のところ、中小企業に限ってこれを引き上げるよう検討しています。
また、非正規雇用者と正規雇用者の賃金格差を是正するべく「同一労働同一賃金」についても「働き方改革実現会議」において、どのような場合に違反になるのか、ガイドラインを出す予定です。また、「労働契約法」「パートタイム労働法」「労働者派遣法」の改正も目差しており、ガイドラインとともに有期契約労働者、パートタイム労働者、派遣労働者への賃金格差を是正すべく動いています。
これらの政策を総動員して、企業業績の向上とともに非正規雇用者の底上げを図る必要があります。
しかし、一方でなぜこれだけ非正規雇用者が増加したのかを考えてみると、正規雇用者はあらゆる面で優遇されているという部分も見えてきます。
解雇できない(しにくい)、長期的に昇給させるなど賃金上昇が見込まれる、賞与や退職金など費用負担が大きい等々。
今後はAIなどにより様々な仕事が無くなると言われています。
衰退産業から成長産業へ労働者が円滑に移動することも経済の活性化には必要です。
いつまでも正規雇用者が衰退産業に居座っていては、なかなか正規雇用者を雇い入れようという気にはならず、ますます非正規雇用者が増加して、政府の思惑通りに賃上げは進まないのではないでしょうか。
非正規雇用の底上げも重要ですが、逆に正規雇用者の金銭による解雇容認など、雇用の流動化を図ることも、考えていかなければならない課題でしょう。
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