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省庁地方移転を実現しなければいけない本当の理由とは

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中央省庁の地方移転の計画が日々縮小傾向

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東京一極集中是正に向けた中央省庁の地方移転の計画が日々縮小しています。
今のところ全面移転の検討が進んでいるのが文化庁の京都府移転のみであり、消費者庁の徳島県移転および総務省統計局の和歌山県移転は本庁の拠点整備等という施設整備に留まっています。
特許庁、中小企業庁、観光庁、気象庁に至っては「地方支分部局当の体制整備」とトーンダウンしています。

今回の中央省庁地方移転は政府の「まち・ひと・しごと創生本部」が推進しているプロジェクトで、人口減少社会に備えて「東京一極集中の是正」と「地方への人の流れをつくる」目的の一つとして行おうとしたものです。

しかし現実はほとんど実現できないという状況にあります。
その理由のなかに「地方分散していると危機管理上問題がある」と言った声があります。
それは本当なのでしょうか。
人口減少がどうつながっているかを考えてみましょう。

首都圏集中がこれ以上進むと日本の国土を維持・保全出来なくなることに

東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏と言われる人口が約3,600万人と言われており、日本の人口約1億2,500万人の約28%が首都圏に集中していることになります。
言い換えれば今の首都圏は3,600万人で支えられた都市サービスが集中して供給されている都市圏であると言えます。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると35年後の2040年の日本の総人口は8,500万人程度になるとされています。
これは少子化と言われても子供がある程度産まれてくることが前提となっていますので、場合によっては8,000万人を切るかも知れません。
単純に計算すると日本の総人口は今後35年で65%程度になると言うことです。
首都圏の都市サービスを維持するために現状の3,600万人必要であるとすれば2040年の日本の総人口のうち45%が首都圏に集めなければならないという状態になるわけです。

こうなってしまうと、日本の総人口のうち半分近くが首都圏に集中することになり、ドイツとほぼ同じ国土面積をもつ広大な日本の国土を維持・保全することができず、国家が破たんするのと同じ意味を持ちます。
首都圏への一極集中を是正することを急ぐ背景の一つがここにあります。
しかし、首都圏の都市サービスは地方と比べて比較にならない状況になっており、人口が減少すればするほど都市サービスの享受を望む国民がさらに首都圏に集中することが考えられますので、これをなんとかしなければならないという状況は切実な訳です。

大規模災害が首都圏を直撃すると日本の存続を揺るがすことにつながる

もう一方で、日本は古くから大規模な自然災害に見舞われる国土を有しています。
台風、地震、火山噴火などに加えて、昨今は気候変動に伴うと考えられている局所的集中豪雨や進路が推測できない台風や、都市部での竜巻など過去に例のない異常気象現象が頻発するようになりました。
日本の総人口のほとんどが一か所に集まっていて、経済拠点も集中している首都圏が大規模な災害に襲われることは、日本という国家の存続を揺るがしかねない事態にも直結することになります。

すでに人口の30%近くが首都圏に集中していて、このままだと人口の半数が首都圏に集中する可能性があるわけですから、早急に対応をしなければならない状況にあるのです。
もちろん、同時に地方都市のほとんどが都市機能を維持できず消滅せざるを得ない事態になります。

中央省庁を速やかに日本全国に分散させることが重要

一朝一夕で社会のシステムを変えることはできませんが、「ひと・まち・しごと創生本部」が進めなければならないのは当面2040年までに、行き過ぎた首都圏集中を是正して、地方都市とのネットワーク化を図る準備を行うことにあります。
速やかに中央省庁を可能な限り日本全国に分散させることが国土の安全管理上有効であると言えるのです。

これまで情報通信技術のことを「IT(Information Technology)」と呼んできましたが、現在はコミュニケーションを加えて「ICT(Information Communication Technology)」と称するようになってきました。
またテーマパークや映画館などでも体験できるようになってきた「VR(仮想現実)」に加えて“ポケモンGO”のような「AR(拡張現実)」のような技術も身近に使われるようになってきました。
日本がこのような技術と具体的活用を先行させ、省庁が率先して分散立地していても問題なく運営が可能である国家像を示すチャンスなのです。

また地方としては、受け入れる省庁や研究施設などを軸とした産業を支援し、企業の立地や創業を誘因する施策をとることが求められます。
就業の場を創出させ、首都圏への流出を抑止し、豊かな生活環境を実現させることが可能となります。

中央省庁の分散はただ物理的に分散させようとしても失敗する可能性が高いです。
もう少し先の社会を見据えて、その必要性を議論していけば必ず未来がみえてくることになるでしょう。

谷口庄一

環境まちづくりに強いコンサルタント

谷口庄一さん(株式会社リージョナルブレインズ)

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