ルーティンを身につけると本番に強くなる その効果と身につけ方について
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五郎丸選手で広く知られることとなったルーティンという言葉
ルーティンという言葉は、ラグビーワールドカップで五郎丸選手が独特の手順によりゴールキックを行い、それが立て続けに成功したということで広く知られることになりました。
また、それ以前にもイチロー選手のルーティンについて話題になったことがあります。
しかし、ルーティンは有名選手だけが行うものではありません。
誰でもルーティンを身につけることで本番に強くなったり、今まで以上のパフォーマンスを発揮したりすることが可能になります。
今回はアスリートが使っているルーティンについて、五郎丸選手や、長期に渡り結果を出し続けているイチロー選手を例にして解説します。
ルーティンとは?
ルーティンとは決められた一連の動き、動作、パターンなどの意味を持ちます。
それまで、無意識に行っていた作業などの内容と方法の順番を一つの流れとしてパターン化していくことをいいます。
ビジネスなど仕事に関する場合、作業の効率アップや、時間管理を目的としてマニュアルを作成する時にルーティン化するなどと使います。
アスリートが使うルーティンは、型にはまった一連の動作を行うことにより、ハイパフォーマーな状態にすることを目的とします。
そして、どんな状況でも力を発揮し、結果が出せる仕組みをカラダに組み込む(習慣化させる)ことをパフォーマンスルーティンといいますが、この利点は、メンタル面と自己コントロール面、両面に働きかけます。
イチロー選手が9年間、カレーを食べ続けていたお話をご存じの方も多いと思います。
これは同じことを繰り返すからこそ微細な変化に気付く自己検証材料となります。
ルーティンの目的としては次のようなことが挙げられます。
1、毎日の練習をルーティン化し、効率を上げること。
2、同じことを繰り返すことで、自らの調子や変化に気付き、対応できること。
3、迷いや不安、失敗を想起することや、緊張する場面で起こる体の反応や思考を排除すること。
「失敗するのではないか」「どんな戦略でくるか不安だ」「期待に応えられるだろうか」等の思考が、体やフォームの乱れを起こします。
思考と体は密接な相関関係があります。
さらに人間には、感覚的な情報に対して自動的に働く神経学的な回路をつくる能力があります。
より少ない外部の刺激で半自動的な特殊回路が機能します。
そこで日々の練習で、能力を発揮するパターンを作成し練習するのです。
ルーティンの身につけ方のポイント
イチロー選手は、バッターボックスに入る前のネクストバッターズサークルの中から、十数個の一定の動作を行います。
イチロー選手がルーティンの重要性について、次のようなことを言っています。
「ハイレベルのスピードでプレイするために、ぼくは絶えず体と心の準備をしています。自分にとって一番大切なことは、試合前に完璧な準備をすることです。大事なのは、自分の「形」を持っているかどうかです。」
日本人は形げいこが得意ですが、それは日本人が感性の発達した民族であると言われているからなのでしょう。
例えば、 職人、芸事の徒弟制度など、弟子は師匠に全神経を注ぎ、見て、まねて、盗んで覚えました。
形を「まねる→まねぶ→学ぶ」という流れです。
他にも、 華道、茶道の学び方も「形げいこ」です。
形げいこは、 技を極めた人をまねることで、 熟練者が何十年もかけて一つずつ積み上げてきたことを短時間で学べます。
すなわち『守・破・離』です。
『守・破・離』とは、はじめに型を徹底的に体得します。
そして、そこから型を破り、さらに高みを目指す一連の流れのことを言います。
基礎がないまま型を破ると『型なし』となります。基礎があるから結果が伴う『型破り』なのです。
武道などの修行のやり方として表すと次のようになります。
守:流儀を忠実に守地型通りにやります。
破:一通り終わるころに型を破る努力をします。
離:高い段階に進みに自らの境地に至ります。
つまり最初に形を身につけることではじめて、高度な応用や個性の発揮が可能になるのです。
ラグビーの五郎丸選手はメンタルコーチと相談し、どんな状況でも集中しキックが成功するようになるため、動作を文字に起こすことを決めました。
プロとなるまで毎日基礎練習を積み重ねることを続け、その中で自分の形を明確にする作業を最初に行ったのです。
有名ですが五郎丸歩選手のルーティンは次の通りです。
①ボールの感触を確かめながらボールを2回まわしてセット。
②助走は後ろへ3歩、左へ2歩。
③右手でボールを前に押し出すイメージの動作。
④下半身の力を抜く意識をする動作。
⑤キックの瞬間、前方へ体重移動。
目標はキック成功率85%。このルーティンを取り入れてからのキック成功率は81%でした。
最初にも説明しましたが、どんな状況でも能力を発揮し、結果を出せるよう仕組み化することをパフォーマンスルーティンと呼びます。
そして、アスリートだけでなく、私たちも、能力を発揮する仕組み、「形」をつくっておけば、いつでもどこでも緊張知らずで、本番に強くなれるということです。
心と体の健康づくりを支援するプロ
森西美香さん(NPO法人 健康づくり推進機構BTB)
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