「上場企業3600社で同族経営が5割以上」から読み解く知恵
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同族経営から何を学べるか
9月、日本経済新聞に『「同族」は5割以上に 上場3600社・最新調査』との記事が掲載されました。国内の全上場企業3600社を対象にした「ゆかりの深い一族との関係について」の実態調査の結果です。
どこまでの関与を同族と定義するのかにより数字が変わるため、5割以上という結果には注意が必要ですが、同族企業が一定の存在感を持っていることは確かだといえます。ここで考えるべきは、「同族経営が企業価値を高め、継続的に発展する力を備えているとしたらそれは何か?」「同族経営から何が学べるのか?」という点だと考えられます。
同族経営という統治形態は有利な状況
同族企業の経営を考える上で、「経営者の在任期間」はキーワードになります。三品和広氏(神戸大学院教授)の研究によると、経営者の在任期間が短く、事業基盤の転換など抜本的な改革に取り組めなかった企業が、戦略不全に陥り利益率を低下させているとされています。例外はありますが、同族企業の方が長期政権を築きやすい環境にあり、有利という結果です。これは、短期的な業績が不要ということではありません。現実には投資家や社員からの信頼を得ることが安定的な経営に繋がるため、もちろん、短期的に業績を示していくことも事業を行う上では避けて通れません。
このことを、経営学者のピーター・ドラッカーは、「あらゆる決定と行動において、ただちに必要とされているものと遠い将来に必要とされているものを調和させていくことがマネジャーの役割である。いずれを犠牲にしても組織は危険にさらされる」と述べています。この役割を果たす上で、同族経営という統治形態は有利な状況にあり、一定の存在感を発揮していると考えられます。
グローバルで活躍する同族企業は数多く存在
具体的には、「後継者が早期に決まり、派閥争いが生じにくい」「後継者候補を早期に絞りやすく、実務経験を通じた育成がしやすい」「投資家に経営者との関係性があり、経営者を育てる意識がある」「一定の株式を同族で保有することで、視野の狭い株主の意見を排除しやすい」などが考えられます。
この長期と短期を調和させるためのポイントは、経営のみならず、各セクションの運営や人材育成においても必要な視点となります。例えば、期間限定で成果創出をミッションとして組織されたチームであっても、その期間の業績を出すことだけを志向しては成功しません。もちろん、成果を出せなければ失敗ということになるので、成果を出すことは必要条件です。しかし、真の成功を欲するのであれば、その後の展開を見据えながら、厳しくも温かい意見をもらえるアドバイザリーボードを作り、実践を通じて理解者を増やし、発展させられるような形での成果創出に取り組むべきです。
「フォード」「ポルシェ」「サムスン」「タタ」「イケア」「J・Pモルガン」「ウォルマート」「ヴァージン」「ヴィトン」「フェラガモ」など、グローバルで活躍する同族企業は数多く存在します。こうした同族企業の知恵から学ぶべき点も多いはずです。
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