「ちくちく言葉」と反対の「ふわふわ言葉」気を付けたい言い回しや影響など
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みなさんは「ふわふわ言葉とちくちく言葉」というのを聞いたことがありますか?最近の教育現場で、「元気の出る言葉かけ」のワークを実施する際に用いられています。相手の心をちくちく刺すような、嫌になるような、悲しい気分にさせるような言葉を「ちくちく言葉」と言います。反対に相手の心を優しく包み、暖かく幸せな気持ちにさせ、思わず笑顔になる、そんな言葉を「ふわふわ言葉」と言います。子どもの教育に使われる言葉の概念ですが、職場など大人の生活の場面でも実践できる内容です。言葉がどこにどう影響するのか、「ちくちく言葉」「ふわふわ言葉」について考えてみましょう。
心を刺すような「ちくちく言葉」とは
「ウザい」「キモい」「ムカつく」など、若い人を中心に口癖のように言う人がいますが、言われた相手はどんな気持ちになるでしょうか。言われるとイヤな気持ちになったり、落ち込んだり怒りがこみ上げたりする言葉を「ちくちく言葉」といいます。そして、相手の気分をよくする言葉「ふわふわ言葉」とともに小学校低学年の道徳の授業で取り上げられています。
「ちくちく言葉」についていかがですか?言われた方の気持ちをうまく言い当てていると思いませんか?子どもは、しがらみがないので何事にも素直に反応します。喜怒哀楽をはっきり表現するので、言葉を発した側も自分の言動を振り返ることができます。
ところが、ビジネスシーンにおいてはどうでしょうか?取引先や上司・部下といった関係性ができていて、多少「ちくちく言葉」を言われても感情を鞘(さや)に納めながら仕事をしているのではないでしょうか。
さすがにビジネスシーンで「ウザい」「キモい」の類いの言葉を、直接交わすことはないと思いますが、相手の気分を害したり傷つけたりする「ちくちく言葉」を無意識に発していることがあります。「ちくちく言葉」とはどのようなものがあるか一覧にしてみましょう。
<ちくちく言葉の例>
・バカ、アホ、のろま
・ダサい、ウザい、キモい、クサい、ムカつく
・目ざわりだ、あっちへ行け、消えろ
・うるさい、黙れ、黙ってろ
・何をやっているんだ、頭が悪いんじゃないか、早くしろ
・調子にのるな、お前なんかいらない、勝手にしろ
・ふざけるな
・意味がわからない
・はあ?何言ってんの?
相手をののしったり、人格を否定したりするような言葉が主ですが、「何やってるんだ」「調子にのるな」などは強く非難するというよりは、ミスを犯さないよう叱る際に口をついて出ることもあって、職場で耳にする言葉かもしれません。言ったほうは、注意するつもりだったかもしれませんが、相手と親しい関係にあっても言葉の持つ「ちくちく」としたトゲが、知らないうちに相手の心を傷つけていることがあります。
このほかにも、「間違っている」「できるわけがない」「どうせ○○だろう」「ダメに決まっている」など、相手や自分自身の言動、考え方を否定するような言葉も「ちくちく言葉」の仲間です。言われ慣れ、言い慣れると何とも思わなくなって、「やっぱりそうだよね」「やっぱりそうか」など、すぐにあきらめるクセがついてしまいます。
子育て中は「ちくちく言葉」に気をつける
小さな子どもは好奇心いっぱいで、大人が目を離すと何をしでかすかわかりません。危険なことも平気です。そこで親は、つい「危ないからダメ」「汚いからダメ」「あっち行っちゃダメ、こっち行っちゃダメ」と口を開くと「ちくちく言葉」を言ってしまいます。
でも、子どもは「ダメ」と言われたことを繰り返すものです。もちろん、ダメなことはダメですが、言い方をちょっと変えて、子どもの気持ちが「ダメなこと」の方向に向かないように誘導して、うまくいったらほめてあげるようにしましょう。
それでも、子どもがなかなか言うことを聞かないこともあります。そうなるとつい「なんで言うことを聞かないの」「何度言わせるの」「何度言ったらわかるの」と感情的になって、子どもが失敗すると「だから言ったでしょ」「もう知らないからね」など、責める言葉を口にしてしまいます。これもまた「ちくちく言葉」です。
また、子どもの成長に期待するあまり「ちくちく言葉」をキツイ口調で言ってしまうこともあります。
「早くしなさい」「どうしてできないの?」「みんなはできているのに」などは、言われた子どもはどうしていいかわからなくなります。ほかの子どもと比べられるのも、いい気分がしません。さらに、子どもが難しいことに挑戦しようとしたとき「どうせできないからやめなさい」と言ってしまうこともあります。子どもにも人格があり、プライドがあります。上から押さえつけるような言葉も「ちくちく言葉」です。
「自分自身に満足しているか」との問いに「イエス」と答えた日本の若者は半数以下だった、というデータがあるなど、日本は、先進国の中でも自己肯定感の低い人が多いといわれています。自己肯定感は生まれてから3〜4歳頃までの親の言葉や態度に影響されるといわれているので、子どもの自己肯定感を下げるような「ちくちく言葉」は避けるべきだということがわかります。
「ちくちく言葉」と反対の「ふわふわ言葉」とは
冒頭で触れましたが、「ちくちく言葉」とは反対の「ふわふわ言葉」があります。「ふわふわ言葉」は、「ありがとう」「いいね」「がんばってね」など、言われるとうれしく、幸せな気分になれる言葉です。「ふわふわ」という響きは人の心を包み込むイメージで、「ふわふわ言葉」を言う方も言われる方も元気が出てきます。特に「いいね」は、SNSでコメントの評価に使われているほど、みんなが受け取りたい言葉です。ほかにどのような言葉があるのか一覧にしてみましょう。
<ふわふわ言葉の例>
・ありがとう、助かったよ、あなたのおかげよ
・かわいいね、カッコイイね、ステキね、キレイね
・すごいね、最高だね、やったね
・がんばろうね、がんばって、応援してるよ、信じてるよ
・ドンマイ、大丈夫だよ、元気出して
・いいね、いいじゃない、よかったね
・ごめんね、悪かった
・いっしょだね、仲間だね
・うれしいね、楽しいね
主に相手をほめたり、元気づけたりする言葉です。「ありがとう」のように相手に感謝を伝えたり、「ごめんね」と傷つけた相手に謝ったりする言葉もありますが、相手を尊重する気持ちが伝わってきて心を元気にしてくれます。
「いっしょだね」「うれしいね」などは、相手に対する共感を伝えて幸せな気持ちを共有することができます。「ふわふわ言葉」は、言われた相手が笑顔になって、言った方も幸せになれる魔法の言葉ともいえます。
「ちくちく言葉」を「ふわふわ言葉」に変えると考え方や価値観にも影響が
周りの人に投げかけられた言葉によって気持ちが沈んだり、反対にモチベーションが上がったり…。みなさんは、そんな経験をしたことはありませんか?
逆も真なりで、自分の何気ない言動が相手に影響を及ぼしていることに気づいているでしょうか?言葉づかいは人柄を表します。いかに相手を大切にしているか、心をつかっているかは言葉づかいから察することができます。
言葉は「言霊(ことだま)」とも言われ、「ちくちく言葉」のような気分がマイナスになる言葉をつかえばバットラックを招いてしまい、「ふわふわ言葉」のような前向きでハッピーな言葉をつかうと、望んでいることを実現できると言われています。
従って、自分が普段どのような言葉を使っているか、発している言葉のくせを知ることは大事です。
セルフトーキング(自分や他者に対して語りかけること)の言葉には強い自己暗示効果があり、言葉を口にすることは心理面に強く影響を及ぼします。「ちくちく言葉」の多くは、「ふわふわ言葉」に置き換えることができます。 言葉が変わったくらいで結果は変わらないと思うかもしれませんが、まずは試してみてはいかがでしょうか。
言葉、すなわち口ぐせが変わると、考え方や価値観に変化が生まれ、行動や結果までもが変わってきます。
言葉に関してはほかに、「明元素(めいげんそ)」と「暗病反(あんびょうたん)」という考え方があります。ヒューマンウェア研究所の清水英雄さんという方が提唱していて、「明元素」は明るくポジティブな思考、「暗病反」は暗くてネガティブな思考のことです。「ちくちく言葉」は「暗病反」を引き起こし、「ふわふわ言葉」は「明元素」を呼び覚まします。暗示をかけるなら、「ふわふわ言葉」で心が元気になるプラスの暗示をかけましょう。
職場の「ちくちく言葉」を見直すと人間関係改善に
「ちくちく言葉」「ふわふわ言葉」は、お友だちと仲良くしていくにはどうすればいいかを、言葉の使い方から学ぶ小学校の道徳の内容ですが、人間関係などに悩む大人にも応用できます。特に、相手の気持ちや場面によって適切な言葉を選ぶ必要のあるビジネスシーンに役に立つ考え方といえます。
社会人として、敬語の重要性を理解し神経を使っているかと思いますが、言葉として正しく使えているから「それでいい」というわけではありません。場合によっては、相手に素っ気ない印象を与えることもあれば、過剰な表現になってしまい、自分の思いが正しく伝わらないこともあります。
例えば、取引先からほめられたとき「とんでもございません」「たいしたことではありません」などと謙遜することはありませんか?相手も「控え目に答えているのだろう」とは思いますが、言い方によっては言葉を否定されたように受け取られてしまうかもしれません。どんな形でも否定する言葉は「ちくちく言葉」です。素直に「ありがとうございます」「そのように言っていただけるとうれしいです」と「ふわふわ言葉」で返しましょう。
今、職場で一番気を使うのは、上司や先輩など上の立場の人が使う言葉ではないでしょうか。言い方ひとつでパワハラと捉えられる可能性もあるので、必要以上に気を使ってストレスになってしまいます。ここでも、「ちくちく言葉」から「ふわふわ言葉」への変換が大切です。
最初は面倒に思うかもしれませんが、「ちくちく言葉」が口癖になっていないかどうか注意してみましょう。「否定」から入るのでなく、解決方法のアドバイスなど落とし所を示す方向で言葉を選んでみましょう。
下の立場の人も、「できません」「わかりません」など身もふたもない言い切りや、「それは教えてもらっていません」といった責任転嫁の言い方は心象がよくありません。この場合も「どうすればいいか」を考えて、「○○について、教えていただけますか?」「○○の件でご意見を伺いたいのですが」と、わからないところはどこか具体的に伝えるなど前向きな言葉を選びましょう。弱い立場なので、つい防御本能が出てしまいますが、「ちくちく言葉」には「ちくちく言葉」で返されてしまいます。
円滑な人間関係を築くためには、常に相手がどう思うかを考えながら発言することが大切です。そして、管理職など上に立つ人は特に相手を尊重する気持ちを忘れてはなりません。
また、個人の価値観が多様化している現代では、自分が何を考えているのか、何を思っているのかを、正しい言葉でわかりやすく伝える必要があります。同世代であれば理解できるニュアンスも、相手によっては通じないこともあります。
日本人は、相手の気落ちを察する「空気を読む」のが得意だと言われていますが、その感度は人によります。これくらい察してもらえると思っても、こちらの真意が伝わらず「スルー」されることもあります。
習慣化することで無意識にふわふわ言葉が出てくるように
「言葉づかい」を漢字で表すとき、「心遣い(づかい)」と同様に「遣」の字を用います。「言葉遣い」に心を配ることは、相手を「思い遣る(やる)」ことなのです。
私が研修を実施しているとき、受講者の悩みとして多いのはやはり「コミュニケーションがうまくいかないが、どうすれば良好になるだろうか」という相談です。自分では精いっぱい気をつかっているつもりでも、コミュニケーション成立のカギは受け手が握っています。相手がどのように感じたかで、良好なコミュニケーションが図れたかどうかが決まります。あなたの言葉づかいは相手への思いやりが表現されていますか?
「いちいちそんなことを考えて言葉を発するのは面倒だな」と思うかもしれませんが大丈夫です。アメリカの行動科学では、ある一定の行動を繰り返したとき、潜在意識に刻印され、習慣化されるまでの日数は21日間だといわれています。
習慣化されるまで21日間、「ありがとう」「それはいいね」「がんばろうね!」とふわふわ言葉を使ってみてください。まずは意識することから始めてみましょう。習慣化されると、無意識でも「ふわふわ言葉」が出てくるようになり、自他ともにハッピーな関係を築くことができるようになります。
人材を人財へ開花させる研修講師
葛西久仁子さん(株式会社 K.BLOOM)
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