うつ病自殺従業員、決定覆り異例の労災認定
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労働基準監督署の決定が覆る
先日、2012年7月に自殺した自動車販売会社「スズキ自販北陸」の社員男性(当時24)について、厚生労働省の労働保険審査会は「長時間労働などによるうつ病が原因」として、労災と認めなかった福井労働基準監督署の決定を取り消し、労災認定しました。労働基準監督署の決定が覆るのは異例のことですが、その原因として、現在の精神障害の労災認定要件を満たしたことが挙げられます。
現在、労災認定のための要件は次の通りです。
1) 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
2)認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められない事
自殺に追いやられた原因は長時間労働
裁決では「自殺に追いやった原因は長時間労働」と判断されており、この男性の自殺直前の3カ月は月100時間以上の時間外労働が確認されています。これは、前項「2)業務による強い心理的負荷が認められたこと」となります。
現在、発病直前の3カ月間連続で1月あたりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合や、2カ月間連続しておおむね120時間以上の時間外労働を行った場合は心理的負荷が強いと判断され、労災認定となります。また、労働時間が月間260時間から300時間程度となり、この状況が2、3カ月続き、発病した場合も労災として認定されます。
どの企業も他人事ではない
実際、長時間労働せざるを得ない企業は少なくないはずで、どの企業も他人事ではありません。また、多くの人が集まる企業では、人間関係の中で何らかの問題があっても当然といえば当然で、多くの企業が今回のような事件の当事者になる可能性をはらんでいます。企業は労務管理を徹底し、悲しい結末を起こさないよう、充分に配慮をする必要があります。
豊富な経験と細やかな対応で頼れる人事・労務の専門家
大東恵子さん(あすか社会保険労務士法人)
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