ピケティ論が日本経済に当てはまらないワケ
累進課税制度で資本家に高い税金を払わせて所得を再分配すべき
フランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた「21世紀の資本」が話題となっています。経済的不平等、つまり格差問題を扱っている書籍で、5,500円の価格、700ページにも及ぶ厚さにも関わらず、2か月ですでに13万部以上売れているそうです。
ピケティ氏は「21世紀の資本」の中で、200年分の各国の膨大な税務署データを元に、資本で得られる収益が、労働で得られる収益よりも大きいことを説明しています。教育を施された人が努力して働いても、資本家が投資して得られる収益の方が大きくなってしまうことを指摘しているのです。そこで、累進課税制度により、資本をたくさん持っている人々に高い税金を払わせて、所得を再分配すべきと解いています。
日本で最も深刻な格差問題は「世代間格差」
欧米では、所得格差がとても大きいことが知られています。相続税も比較的安く、その経済格差が自然には解消されない、とピケティ氏は説いているのです。しかし、ピケティ氏が分析したデータが欧米のデータであるため、日本経済にはピケティ氏の主張は当てはまらないと考えられています。その理由は、日本人の所得格差と資産格差が欧米ほど極端でなく、一番の問題は、高齢者と若者の間の世代間格差だと考えられているからです。
日本経済はバブルが崩壊して以降、労働分配率が上昇しています。個人事業主の数も減り続けていて、資産家の富が増え続けているわけではないことが実証されています。また、今年から相続税率が上げられたため、個人資産は3代もすれば無くなってしまうといわれています。不動産価値の下落や空き家問題など、資産といわれているものの実質的な価値も下落傾向です。それはひとえに、人口が減少しているからです。
国全体の富が拡大しないと分配は進まない。成長戦略は必須
そこで、今後、日本経済が進むべき道は、ひたすら成長戦略しかありません。なぜなら、国全体の富が拡大しないと分配が進んでいかないからです。また、人口減少が最大の経済停滞の原因となるため、少子化対策、そしてピケティ氏も言っているように教育への投資を進めることです。
質の良い労働者がたくさん生まれることで、グローバルに世界で活躍できる人材が増えれば、その人材が将来の日本経済を活性化させていくことになるでしょう。
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福間直樹さん(株式会社 成都地所)
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