投票率の低下で得をするのは誰?
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投票率を上下させる「無党派層」
投票率が低下するということは、投票に行く有権者の数が減るということですから、「何らかの理由」で投票に行きたくないと思ったのでしょう。
投票に行きたくない理由としては、仕事やレジャー、育児や介護など、いろいろ考えられます。しかし、期日前投票制度があるにもかかわらず投票しないわけですから、投票に行かない人は「わざわざ投票に行く必要性を感じていない」という点で共通しています。よって、投票率が低下するのは、その選挙への関心が低いから、といえるのではないでしょうか。
このように、その時々により選挙への関心が上下する層の一票は、いわゆる「浮動票」と呼ばれ、その多くは特定の支持政党を持たない「無党派」である可能性が高いと思われます。
一定の固定票を確保できていれば相対的に得票率は高くなる
一方、特定の政党の支持者や、特定の団体に所属し、その団体が特定の政党を支持している人などは、ほぼ確実に投票に行くと考えられます。こうした層の一票は「固定票」と呼んで差し支えないでしょう。
とすると、投票率が低下したときに実際に票数が減るのはあくまでも浮動票であり、固定票の票数はあまり影響を受けないと考えられます。投票率が低下すれば総投票数が減りますから、一定の固定票を確保できていれば、相対的に得票率は高くなります。よって、投票率の低下で得をするのは「強い支持基盤を持っている政党」であるといえます。
「強い支持基盤を持ち、最も得票率を得られやすい政党」が得をする
もっとも、実際の選挙結果(議席数)は、さらに選挙制度の影響を受けることになります。もし、選挙制度が完全比例代表制であれば、各政党の得票率に近い形で議席が配分されるので、得票率の高さは議席数にあまり影響を与えません。しかし、小選挙区制の場合は1選挙区から1人しか選出されませんので、得票率が最も高い候補しか当選しません。極端なことをいえば、たとえ1%の差でも全ての選挙区で最も高い得票率を得られれば、その政党だけが議席を独占することになります。
現在の日本の参議院の選挙制度は完全な小選挙区制ではなく、1~5の改選数を持つ選挙区制と比例代表制ですが、それでも改選数1の選挙区がかなりあるため、小選挙区制のような「得票率が最も高い政党だけが極端に議席数を増やす」傾向が出ることも否定はできないのです。
以上から、現状の日本の選挙制度を前提とすると、投票率の低下で最も得をするのは「強い支持基盤を持ち、最も得票率を得られやすい政党」ということがいえるのではないでしょうか。
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