消費増税延期で金利はどうなる?
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GDP、2四半期連続のマイナス成長。消費増税延期へ
安倍晋三首相は11月18日、2015年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを17年4月まで1年半延期し、21日に衆院解散・総選挙に踏み切る考えを表明しました。7~9月期の国内総生産(GDP)が速報値で2四半期連続のマイナス成長となったことがその理由です。
GDPがマイナス成長になった原因は、4月の消費税の8%への増税です。消費が低迷し住宅着工棟数は6.7%減少しました。消費増税や円安による物価の上昇に比して、賃金の上昇が追いついていないため、多くの消費者は増税による影響が長引くと判断していているのです。また、円安による恩恵を受けているのも一部の輸出企業に限られ、中小企業は材料費の高騰を価格に転換しきれていません。個人消費だけでなく、企業の設備投資も伸び悩んでいます。また、民間の予測では平均2.0%程度のプラスになると見られていたため、予想外の結果に東京金融市場では株安と円高が進みました。
社会保障制度への影響と消費マインドの低下が懸念される
消費増税延期により、次のような影響が危惧されています。その一つは社会保障制度であり、もう一つは直接市場に与える影響です。消費税は社会保障が目的とされているため、子育て支援制度や所得が少ない人向けのサービスに向ける費用を別途捻出する必要があります。
また、直接市場に与える影響としては、4月の消費増税前にあったような耐久消費財の購入への駆け込み需要が来年に向けてある程度想定されていましたが、今回のマイナス成長を受けて消費者マインドが低下する可能性が指摘されています。
「異次元緩和」追加策で国債価格は維持。金利への影響は無い
それでは、金利に与える影響はどうでしょうか。金利は、国債の価格を受けて変動します。国債の価格が高いと国債の金利が下がり、市場の金利が連動して下がります。金融緩和により、国債は史上最高価格を維持しています。消費減退の予測を先読みしてか、黒田東彦日銀総裁は10月末に思い切った「異次元緩和」追加策を打ち出しました。そのため国債の価格はある程度維持され、金利も影響を受けていません。消費増税延期自体は金利に影響を与えづらい状況なのです。
しかし、金融緩和策による日銀の国債の買取には限界があります。日銀の保有する国債は全体の20%、201兆円に及んでいます。そのため早期の財政再建が求められています。2015年度の国債発行額は今年度より増えることが予想されており、今年度末には国の借金はさらに増えて1010兆円に達するともいわれています。そこで、低金利のうちに償還期間の長い国債を増やして将来の利払いを減らすために、30年物などの超長期国債が合わせて2兆円程度と、今年度より大幅に増える見通しです。さらに償還期間の短い短期の国債の発行を減らし財政再建への長期的な道筋を作ろうとしています。
年率2%程度の成長を維持できれば、金利はゆるやかに上昇
今後は、財政再建への道筋をしっかりと立てきっていくことが求められます。財政再建には、増税、歳出削減、そして経済成長の3つがあります。今後、消費増税は避けて通れません。また、歳出に関しては、社会保障費が増えていくことが予想されます。経済成長のためには個人の消費と企業の投資が増えていかないといけません。
消費を増やすための人口増への対策、そして企業の育成が進められていくことで、日本経済が年率2%程度の成長を維持できるようになれば、それに連れて、金融緩和策も不要になり金利もゆるやかに上昇していくでしょう。
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福間直樹さん(株式会社 成都地所)
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