シンボリズムの森 ④ 「花」のシンボリズム
さて今これまで垂直の軸を中心にいろいろと考えてきましたが、そろそろ水平の軸に関係するシンボルを取り上げてみましょう。水平の世界と言えば、要するに「人間の世界」。
垂直が「人間には直接うかがい知れない神の世界との関係」を表すとすると、水平は「自分の力でそこに何があるのか確かめることが可能な世界」です。人間は様々な方法で自分たちの世界を広げてきましたが、まずその一つとして蒸気機関車の象徴的意味について考えて見ます。
人間が自分の足元の水平世界、つまり大地を移動する場合、昔は徒歩でない限りは馬などの動物に頼るのが一般的でした。しかしここに蒸気機関車という文化が登場してからは、「新しい空間を取り入れていくことで空間を広げていく」(「鉄道旅行の歴史」シヴェルウシュ)。つまり今まで見たこともなかった風景を鉄道によって短時間で目にすることができるようになったわけです。
そういう意味で鉄道・蒸気機関車の登場は私たちの文化にとって画期的な出来事だったわけですね。さてではそういう蒸気機関車について思いつくままに連想を書き上げてみましょう。
1)水を蒸気という気体に変えることでエネルギーを産み出す
2)敷かれたレールの上を走る(レールの上しか走れない)
3)客車を連結させて沢山の人を目的地まで運ぶ
4)それまでの移動機関であった船や馬車などと比べ、格段に速い
5)鉄道の駅によって、新しい交易地が生まれ、世界が開かれていく
こういった特徴が思い浮かびます。
それぞれについて象徴的に解釈を広げて見ます。
1)水を気体に変えてエネルギーを産み出す
これは水と気体の象徴的な意味を考える必要がありそうです。「水」というのはいろいろな意味があるでしょうが、たとえば身近な例として池や海を考えて見ます。池や海には魚を始め、沢山の生物が住んでいます。しかしそれはなかなか水上からは見えません。つまり見えないけれど、沢山の内容物がある、という意味で「無意識」にたとえられることがあります。
では、気体とは何か。「気体」にもいろいろありますが、普通は物質的な姿はなく、軽く上にあがっていくことが多いですね。ですから物質的・現実的な世界よりも、上方に住む神との関係、精神的な世界に属します。あえて言えば「意識」の世界といってもいいかもしれません。
つまり水という無意識・感情的な世界から、意識的・精神的な世界への成長といえます。これは、人間の世界の広がり・参入、文化の発展といってもいいかもしれません。
2)3)鉄道は社会生活の象徴
私たちは電車に乗る時、同じ客車に沢山の乗り合わせた人がいます。もちろん知り合いがいることもあるかもしれませんが、ほとんどは知らない人です。そういう意味で、不特定多数の集団、それが社会生活一般ですよね。つまり客車には血縁集団ではなく、一般の社会集団そのものが詰まっています。
その社会集団が、それぞれ決められた目的地に向かって移動していく、これは社会生活そのものでしょう。利益を上げるという共通の目的のために、たくさんの人々が労働する会社などまさしくそのものです。
つまり夢や箱庭に、鉄道が現れた場合、その意味するものは、会社であったり、学校であったり、何かの所属団体であったり、時には結婚して家庭を持ち社会生活に入ることが、象徴されていることが多いのです。
4)5)蒸気機関車は新しい世界をもたらしてくれた
さらに鉄道はとても速い。目的地に向かってまっしぐら。そして鉄道が敷かれたおかげで世界は広がり、どんどん発展していく。その最たるものが、蒸気機関車でしょう。それまでの馬車や船と比べ、格段に世界を広げ人間の世界を発展させてくれました。
つまり蒸気機関車は新しい世界をもたらしてくれた機械文明の象徴なのです。
まとめてみると、夢や箱庭に蒸気機関車が現れた時、夢見手の世界を新たに広げてくれるきっかけが意味されていることがあるのです。特に、駅から鉄道に乗り込もうとしている夢などは、新しい進路に向かう転機や状況を意味していることが多いようです。
と、言うことで、鉄道・特に蒸気機関車が現れた時の象徴的な意味をを考えてみました。では鉄道につきものの駅はどういう意味があるのでしょうか?
それを次回考えて見ます。