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少年はなぜ声を失ったのか?映画「あの日の声を探して」

岸井謙児

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テーマ:「こころ」を描いたこんな映画

今回見て大感激するとともに深く心が痛んだ作品がこれ



基本的には戦争の悲惨さを描いた作品なのですが、この作品はむしろ戦争という悲惨な状況に巻き込まれて翻弄されていく子どもの運命を描いた作品です。その中心となるのが二人の子ども。一人はDVDの表紙に載っているハジという名前の10歳前後の子どもです。ハジは幼い弟を抱きかかえながら息を殺して隠れている部屋の片隅から、両親が兵士にテロリストの疑いをかけられ、惨殺されていくさまを目のあたりにしてしまいます。

一方、その両親を笑いながら惨殺した若い兵士たちと悲しみに暮れる家族の表情をビデオカメラで映している若い男性。ビデオ画面にはその撮影者の男性の声が残っていましたが、どうも若い青年の様です。彼が誰なのか、そしてなぜ彼がこの場面をビデオカメラで撮影しているのか、それは映画の最後のシーンでわかります。それまではこのシーンに行きつくまでの青年の軍隊での過酷な日々を淡々と描いていくのです。

先に触れたハジはその光景に強い恐怖と衝撃を受けたのでしょう、その日その時から言葉を発することが無くなりました。誰から話しかけられても、哀しい顔つきのまま、黙っています。この表情が何とも言えず胸に迫ります。

言葉を発さない状態を「緘黙(かんもく)」といいます。ある特定の状況だけで言葉が出ない状態を「選択制(場面)緘黙」と言い、日常生活のすべてで声が出ない場合を「全緘黙」といいます。緘黙については私は別のところでまとめているので、興味がある方はそちらをお読みください。
<選択制緘黙> 「話さない」のではなく、「話せない」のです。
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/54987/

しかし言葉が出ない状態はいわゆる「緘黙」だけではありません。例えば、ヒステリー的な意味で言葉を出せないという場合もありますし、ストレスなどからくる「失声症」などもあります。ハジの場合はどちらかというと、ストレスからくる「失声症」の方が近いかもしれません。とにかく異常な事態に対して心を閉ざして、コミュニケーションをとれなくなっていることに違いはないでしょう。

映画はこのハジがたまたま出会った親切な女性と暮らすうちに心を再び開いて、何が起きたのか、どうして自分はここにいるのかを語ってくれるようになる様子を丁寧に追って行きます。それと同時に、先ほど述べた軍隊で過酷な体験を積み重ねていくうちに心がマヒして人間性を失っていく青年の様子を交互に組み合わせながら進んでいきます。そして最後にこの二人の関係が明らかになって行くのですが、残念ながらそこはネタバレになってしまうので紹介できません。なんとも言えない結末であり、それが戦争と言うものの悲劇なんだと改めて思わされました。

興味のある方はゼヒ、ご覧ください!

◇◆◇  こころを打つ、こんな映画も紹介します ◇◆◇
映画「サンドラの週末」:「うつ病」からの職場復帰の厳しさと回復への道
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51864/
映画「アリスのままで」:若年性アルツハイマー病に侵された大学教授の闘い
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51907/
映画「明日、君がいない」:若者のリアルな姿を描いた作品
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51645/
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http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51890/
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http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51903/
あやしうこそものぐるほしけれ 映画 「17歳のカルテ」
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/52565/
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http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/52105/
映画「パパが遺した物語」:大切な人を失った心の空洞
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/53383/

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岸井謙児(臨床心理士)

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カウンセリング暦35年。子供から大人まで、うつ・対人関係の悩み・発達障害・不適応・ひきこもりに関わる問題に丁寧に、かつ誠実に対応します。また全国から電話・スカイプなどでも相談を多数受け付けています。

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