映画「精神」:「病と共に生きる人」、そしてその彼らと共に生きる人
今回見た作品はこれ
この映画はなかなか真に迫った作品です。一度見始めると目が離せない、というか、「これって他人事じゃないよな」という気持ちから結末を見ずにおれない作品なのです。
きっかけはある仲の良いスェーデン人家族がフレンチアルプスに5日間のスキーバカンスにやってきた、という設定で別にどうということはないのですが、それが逆に日常感あふれていて後から身につまされるのです。というのはそういう家族旅行の中で、スキーを楽しんだ後、みんなでロッジのテーブルで食事をしていました。これも別にどうということもないよくある子供二人を囲んだ仲睦まじい風景。ところがそういう日常を一変させてしまう出来事がその後起こるのでした。
ふと山を見ると遠くの方から雪崩が起き始めます。最初は遠いところだし、計画的に専門家が起こした雪崩だろうと思っていたのですが、次第にその雪崩が家族のいるロッジへと迫ってくるのです。家族の不安を打ち消すように父親は「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と声をかけますが、さらに雪崩は目の前まで迫ってきて、今にもロッジをのみ込みそうになるのでした。
これだけでも大変な出来事で、自然災害の恐ろしさや日本で頻発している地震被害や津波被害を連想させられます。自然の災害は、人間の力ではコントロールできない恐ろしさを持っています。この場面を見るのもつらい方もいらっしゃるかもしれませんから、注意して下さい。
しかし幸運なことに雪崩はロッジの手前で止まり、家族には大きな被害はありませんでした。アぁ~良かった、これでもう安心・・・・と思ったあなた、違うのです、この作品の怖さは実はここから始まるのです。
なぜならその雪崩が今にも家族のいるテーブルの寸前まで押し寄せようとした瞬間、それまで「大丈夫、大丈夫だ」と家族に声掛けをしていた父親が、自分の手袋と携帯を握ってあろうことか、家族を守らずに一番先に逃げ出してしまったのです。
う~ん、この気持ちはわかるよなぁ、とっさにパニックになって取った行動だから責めるわけにもいかないし・・いやいやそうはいってもやっぱり…などと見ているこちらも迷います。ところがこの事態に一番衝撃を受けたのが、彼の奥さん、つまり母親なのでした。「私はまず子供たちのことを守ることだけを考えて行動したのに、彼はそういう家族を見捨てて自分だけが逃げ出した」ということが奥さんの脳裏から離れなくなります。「緊急の時にはそう言うこともある」と周囲は説得するし、奥さんも頭ではわかっているのですがどうしても感情が鎮められない。
あとは延々と奥さんとご主人の葛藤が続きます。その様子を見ている子供たちも情緒不安定に。果たしてこの結末はどうなるのだろうか?ネタバレになってはいけませんので、ここでお話しできませんが、この作品はこういう不測の事態に陥った時に、普段の日常がいかにもろく崩れていくか、その時に改めて家族のきずなが試されるのだ、ということを教えてくれる作品でした。
ただし最後に付け加えておきますが、日本の地震の後にもいわゆる「震災離婚」や逆に「震災婚」という現象が起きると言われる方もおられます。自然災害や事故などの非日常的な出来事は、私たちの当たり前の日常に、さまざまな影響を及ぼすのだ、ということは言えるでしょう。それを個人の責任や人格の問題にすべて結び付けていいものかどうか、少し考えさせられました。
それにしてもよくできた作品でした、興味を持たれたら、ぜひ!
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