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天才の頭の中って、一体どうなっているんだろう??羽生善治さんの著書「大局観」

岸井謙児

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テーマ:あの人の本を読んでみた

今回取り上げる本はこれ



私は将棋と言っても「うん、やったことある」程度の経験しかないので、この羽生さんのすごさ、というものがたぶん全然わかっていないのだと思いますが、それでもこの本を読むと、「おぉ~すげぇ!」と思わず口走ってしまいました。何しろ著者の紹介を読むと・・・“・・…小学6年生で・・・プロ棋士養成機関の奨励会に入会。19歳で初タイトルの竜王位を獲得する。…タイトル戦登場102回、タイトル獲得78期。…現在、永世棋聖、永世王位、名誉棋王、永世棋王、永世王将の全7タイトル戦で6つの永世称号を保持する最強の棋士である・・・”ですから。

その羽生さんの頭の中は一体どうなっているんだろう、って誰でも思いますよね。そのつもりで読んでみると、さすがに切れ者で勉強家だ、と感心しました。たとえば、将棋の話のたとえ話として宇宙物理学者のペンローズから、アインシュタインの相対性理論、果ては源氏物語から空海までを引き合いに出されるのですからね(私などどなたも名前しか知りません)。

知性の塊のような羽生さんですが、書かれていることはこれがまた面白い。将棋というのは理詰めの論理力がすべてなのかと思っていたら、どうもそうではないらしいのです。“よく聞かれる質問に「何手ぐらい読むのですか?」がある。正確に数えたことはないのでよくわからないが、1時間ぐらい考えれば千の単位の近くになっているのではないか”とサラッとおっしゃられるのですが、昔の木村義雄十四世名人が同じ質問をされた時には「ひとにらみ2千手」と答えたそうです(!!!!)。


ビックリするしかありませんが、それでも羽生さんが「大局観」という言葉でおっしゃられたかったことは、“「大局観」とは、具体的な手順を考えるのではなく、文字通り、大局に立って考えることだ。パっとその局面を見て、今の状況はどうか、どうするべきかを判断する”事なのであり、“がむしゃらに読み込む力は、年齢が若い棋士が上だが、熟年になると、この「大局観」で逆に「読まない心境」になり、勝負の上で若い棋士とも互角に戦える”と言われるのです。

あぁ、それならわかる。理屈ではなく、経験からくる直観みたいなもののことなのでしょうね。もっともその直感が的を外さないためには若いころからの猛烈な努力の積み重ねが必要なのでしょう。

しかしこの本、内容を熟読すればきっとものすごく深いものを語ってくれているのでしょう。私にはそれを全部まとめる力などとてもありませんが、それこそ直感からピンときた言葉を最後に紹介します。本の一番最後に記された数行の文章です。

“私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。信じていただけないと思うが、常に無計画、他力志向である。突き詰めると「結論なし」となる。人生は突き詰めてはいけないと思う。何のために闘うのかは、七十歳になってからじっくり考えたいと思う”

かっこいい!!

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岸井謙児(臨床心理士)

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