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アスペルガー障害の苦しみを描いたクレイ・アニメ「メアリーー&マックス」

岸井謙児

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テーマ:「こころ」を描いたこんな映画

今回見た映画はこれ




この映画はなかなかよくできたクレイアニメの秀作です。決して子供だましではなく、質の高いアニメーションと現代的なテーマの選択は、見終わった後も感動が残ります。

アルコール依存の母親と鳥の剥製作りに没頭する父親という機能不全家庭に育ったオーストラリアに住む8歳のメアリーはヒョンなことからアメリカに住む40歳のマックスと文通を始めることになります。メアリーは自分の容姿についての悩みや、周囲からのいじめにも苦しみながら毎日を過ごしています。そしてマックスはアスペルガー障害とともに生きる男性で、いつも自分を取り巻く世界に違和感を感じながら一人で苦しんでいました。

自分の世界に閉じこもっていると言う点以外、どう見ても何の共通点もないような二人なのですが、文通はなんと断続的に20年も続きます。その間さまざまなエピソードや二人のそれぞれの生き様や葛藤が描かれるのですが、それが実に切実かつリアル、かつユーモアに満ちた優しさを持っていて、それがアニメというにはその表現の枠を大きく広げた秀作だと思う理由です。

ドラマはその二人の20年にも続く交流をていねいに描いているのですが、ドラマとしての山場は、マックスがメアリーに自分の障害についてカミングアウトするところから始まります。それを聞いたメアリーはもちろん善意から、自分の力でアスペルガー障害を研究し治療法を見つけたいと大学院へ進み、マックスを題材に研究に没頭し成果を挙げるのです。が、マックスにすれば自分を一人の人間としてではなく、研究対象や障害者という視点でしか見られていなかったことにひどく傷つき、怒りを覚え、それを激しい怒りの表現とともにメアリーに告げたのでした。

これは本当に気をつけなくてはいけないことだと思いますね。良く病院などで、患者さんを一人の人としてみるのではなく、治療すべき病気だけしか見ていないことの批判がありますが、医療関係者のみならず、研究や福祉に関わる人たちも同じことが言えるでしょう。例えば、A君という人を「障害」という見方からしか見えていない場合、往々にしてA君のことを「発達障害児・者」「自閉スペクトラムの人」と言うような言い方や見方をしがちです。しかしそれよりも、まず彼・彼女に対する一人の人間としてのリスペクト(敬意)を抱くことが大切なのだと思います。

そしてそのことを私に気づかせてくれたのは、自分に対するリスペクトを忘れていたメアリーの行動を長い年月をかけて苦しみながらも受け入れ、許し、そしてメアリーに対するリスペクトを示したマックスの次のような手紙の文章でした。
“(メアリーの行動を)許した訳は、君が完璧ではないから。 君は不完全だ。もちろんも僕もね。人間はみんな不完全だ。”
“(主治医の精神科医にこう言われた) 欠点を含めて自分を受け入れろ。欠点は選べない。欠点も自分の一部なんだ。
でも友達は選ぶことができる。そして君を選んで本当によかったと思っている。”


この文章を読んで、メアリーはマックスに対してだけでなく、自分自身に対するリスペクトを持つことができるようになったのでした。私の文章で、この映画の言わんとするところを伝えきれたかどうか、不安ですが、いずれにしても本当に大切なことを、クレイ・アニメーションと言う手法を通じて、見事に描いている映画「メアリー&マックス」。もし興味があれば、一度見て下さい。

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岸井謙児(臨床心理士)

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カウンセリング暦35年。子供から大人まで、うつ・対人関係の悩み・発達障害・不適応・ひきこもりに関わる問題に丁寧に、かつ誠実に対応します。また全国から電話・スカイプなどでも相談を多数受け付けています。

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