ドキュメンタリー映画「徘徊」:認知症の母と娘の日々を描いた作品
今回取り上げた映画はこれ
コンジュという名の身体障碍を持つ女性とと前科を持つ男性との間の見事な愛情表現の映画であり、さらに加えて障害者の性と愛、障害者差別の実態をも表した映画です。
主人公の男性は前科があり、最初はヒロインのコンジュに不埒な目的で近づいたようでしたが、そのうち本当の愛に目覚めていくことになります。その過程が、身体障碍を持つヒロインのイメージ世界をも借りて描かれていきます。この表現には思わず引き込まれました。素晴らしい!
それにしても、この女優さんはなかなか見事でしたね。私も本当に彼女は障害をお持ちなのか、と思わされましたが、途中イメージ世界に入るときは、スッと健常な女性に変化してゆきます。その演技のすばらしさ!!
ヒロインの前科のある男性もなんとなく軽い知的障害を感じさせましたが(この演技も見事でした)、ただ、そういうこととは関係なく、二人の間に芽生えた愛情の深さを感じさせられたドラマでした。
ただこの映画は、たぶんさまざまな切り口で語ることができる作品なのだと思います。恋愛に焦点を当てても良いですが、障害とともに生きる方々の社会における立場の切り口から語ることも可能でしょう。
確かアマゾンのカスタマーレヴュー欄に
〝私も重度障害者、本を読んでから映画を見てガッカリしました。コンジュの気持ちが半分も表現されていないことにです。
そして、演技は私達の障害をよく理解・観察された上での演技ですごいと思うと同時に私もあんな風に見えるのかとショックでした。いろんな意味で、障害者を美化してない映画で嬉しくもありどこか悲しくもあります。以前、ネットをしていて今どき信じられない差別をされました。この映画、「純愛」だけで終わらせてほしくないと思います。〟(ゆめ色イルカさん)
という投稿がありましたが、私もヒロインのコンジュの気持ちをもっと表現できれば、と少しもどかしく思ったのも事実でした。純愛という点ではよく伝わってきたのですが、それ以外の場面でコンジュが感じながら、表現できない(あるいは、しない)内容、つまり障害への「差別」や運命への「あきらめ」を背景に、色々な思いを切り離して感じないようにしてしまっている本当の姿がもう少し表現されていれば、と思いました。
たぶんそこのところ(「どうしたらわかってもらえるのか」「どうせわかってもらうのは無理に決まっている」というあきらめ)が一つのテーマなのでしょう。そしてそれが伝わるかもしれない、という希望を感じさせてくれる関係が愛情に基づく共感なのではないでしょうか。クライマックスの二人の行動が、そのもどかしさやあきらめに対する希望を感じさせてくれました。
それにしても、日本ではなかなか触れられない内容(障害者の性と愛、差別の実態等)に取り組んだ映画として素晴らしい作品でした。
みなさんも興味をもたれたら、ぜひ一度ご覧ください。
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