大切なことは絵本から学んだ＜121＞　「人殺しの女の子の話」西岡兄弟

2016年2月28日

テーマ：大切なことは絵本から学んだ

コラムカテゴリ：メンタル・カウンセリング

「西岡兄妹」ご存知でしょうか？兄が原作、妹が作画担当のマンガ家？絵本作家？のお二人ですが、何とも不条理で残酷な現実の世界を、シュールなフィルターを通してファンタジックなイラストで描いた作品を作られているお二人です。
その作品の一つがこれ

“人を殺したい。女の子はそう思いました。理由はありませんでした。”
毎日ぐるぐると続く日常に飽き飽きしていたのかもしれませんが、女の子はふと、なぜかそう思ってしまったのです。
そして
“「きっとこれが反抗期と言うものなのだわ。」「わたしくらいの年ごろには人を殺したくなることがあるものなのだわ、でも勇気がなくてできないだけなのだわ」”

ちょっと待ってくださいよ、といいたくなる展開ですが、それがこの西岡兄妹の世界。
とても子供には読んであげられない世界ですが、でもおとならわかるはず。それが一度は私たち誰もが通り過ぎてきた思春期の世界なのだと。

その後女の子は、、母を殺し、父を殺し、お巡りさんに告白し、裁判にかけられます。死刑を望みますが、死ぬ間際になって天国にいるはずの父母と出会う光景を心に浮かべます。ところが、想像する天国での暮らしは、これまでの生活とどこも何にも変わっていませんでした。
“『何だか、まったくつまらないわ』と女の子は思いました。『これでは何のために人殺しをしたのかわからないわ』”

何といってよいのか分からなくなる「大人を困らせる」絵本なのですが、「そういえばオレも思春期のあの頃は、この女の子ほどではなかったけれど、毎日虚しさと気だるさに苦しんでいたよな～」と思わずため息をついた私なのでした。

「母殺し」「父殺し」を通して、子ども時代から青年期へと「死と再生」を繰り返す、思春期の甘酸っぱいむずかしさを見事に描いてくれている「大人の絵本」でした。

一度読んだら忘れらない作品の一つです。

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