映画「精神」:「病と共に生きる人」、そしてその彼らと共に生きる人
正月休みに見た映画を紹介。今日はこれ「メイジーの瞳」
このDVDケースの、少女メイジーの瞳と表情を見て下さい。この6歳の少女の瞳に映っている光景は何なのでしょうか?
ロック歌手の母と美術商の父の間に生まれた少女メイジー。両親はお互いに自分の仕事に夢中で、顔を合わせると激しいののしり合いの喧嘩ばかり。その様子をじっと見つめるメイジー。両親はついに離婚を決め、親権を巡る裁判の中で下された結論は、メイジーがそれぞれの家を10日ごとに行き帰するという生活でした。それでも両親はメイジーを巡ってお互いの愛情の深さを競うのでしたが、それは親としての本当の愛とは言えず、あくまでもお互いが相手に対する優位を得るための手段なのです。
案の定、忙しい父はベビーシッターのマーゴに、母は新恋人リンカーンにメイジーを預けるようになって行きます。しかしマーゴとリンカーンは実の両親とは違い、不器用ながらも心からメイジーに愛を注いでくれるのでした。
こんな騒動に巻き込まれた子どもはどういう気持ちになるでしょうか。その答えをこのメイジーの乾いた瞳が表現しています。
虐待やネグレクトの被害者となった子どもによっては、「凍り付いたまなざし」と言われる、乾いた、冷たいほどの冷静さに覆われた、人を信じることができない瞳を見せることがあります。
私が関わったある「凍り付いたまなざし」を見せる中学生は「自分は5歳の時から人を信じられなくなった」と伝えてくれました。
元来「親と子の間の愛着」と言うものは子どもが生きていくために欠かせない「生きる喜びと安心感」を与えてくれるものです。その生きていく土壌となるべき親の愛を信じることができなくなった時の気持ちの殺伐さは想像するに余りあります。
ただしメイジーは、「愛を与えてくる他人」に出会うことができました。人は「愛情」さえあれば生きていける。たとえその愛が実の親からのものでなくても、誰かに「愛される体験」こそが子どもの「生きていく希望」をはぐくんでくれるのだ、とこの映画を見て思いました。
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