映画「精神」:「病と共に生きる人」、そしてその彼らと共に生きる人
今回見たDVDはこれ
「箱入り息子の恋」
何だか、ダメ男の恋愛ものか、と最初は思っていたのですが、全体を貫くテーマは違いました。
天雫(あめのしずく)健太郎は市役所に勤務する35歳の男性。生真面目で内気な性格が災いし、人付き合いは苦手で役所のお昼御飯も毎日家に帰って食べてから再び役所へ戻るという生活。いわゆる地味でオタッキーな青年。これまで女性との恋愛経験が無くいまだに実家で両親と暮らしているのだが、そろそろ年頃なので両親が心配し見合いをさせます。ところが見合い当日、相手の女性・今井奈穂子が視覚障害者であることを知ります。
社長を務める父は社長を務め、健太郎の出世意欲のなさを批判するとともに、娘・奈穂子の相手として、「これまでに視覚障害者を介助し、サポートした経験はあるのか?」と問い詰め、健太郎を否定します。確かに視覚障害だけでなく、障害児者へのサポートには一定の知識と技能が必要です。例えば聴覚障害ならばできれば手話を身に着けることが求められますし、車いすならばそれを操作して介助をしなければなりません。
その経験や技能を身に着けておくに越したことはないのですが、しかしそれは「障害」に対するサポートの面についての話です。障害を持っている人は、すぐに「障害者」と言われてしまいますが、障害者である前に同じ人間であることに違いはないでしょう。
よく医療関係者が「病気を見てはいるけれど、人は見えていない」と言う批判をされますが、障害に関わる人々も同じで「障害は見えていても、人は見えていない」ということはないでしょうか?残念ながら、決して悪気はないものの、本人の将来を心配する身近な両親や専門的な力量を身に着けるために研修や努力を重ねてきた方の中にも、同様の傾向はあるかもしれません。
この映画は、そういう関わる側の問題をあぶりだしてくれます。
最後に、見合いの当日、「障害者をサポートした経験はあるのか?」と奈穂子の父親に問い詰められ、否定された健太郎が静かに答えた言葉を紹介します。この映画のテーマを一番表してくれている言葉だと思います。
“ぼくには、障害はありませんが、欠点なら山ほどあります。こんな見た目ですから女性は寄ってきません。声をかけようにも、極度の上がり症なので人の目を見て話せません。なのでぼくは今まで、他人と関わることを避けてきました。
今井さん(奈穂子の父のこと)は誰かに面と向かって笑われたことはありますか?こちらのことを知りもしない相手に、ヘンな人だといわれたことは?
・・・・・・・見た目や、きている服や、就職先などで人は値踏みされてしまいます。そういうランク付けをするのは目が見えている人だけです。 お嬢さんはそんなことはしません。お嬢さんが見えているものと、今井さんが見えているものは、違っているのではないでしょうか?”
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