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コラム
こころの問題<8> 思春期へ向かう時の喪失感③ 「自分に対する自信が揺らぐ時」
2015年9月5日
さて前回までは、小学校前半までのバラ色の世界に住んでいた時代から抜け出して、いよいよ思春期に入り現実に目覚めてくる時の喪失感について説明しました。
「うちのママは世界一」「うちのパパも最高のお父さん」と思っていたのに、よくよく見てみると、案外そうでもない、普通のおじさん・おばさんのところもある、と気が付いた時の喪失感はなかなかのものです。
しかしその目覚めは周囲の人にだけ向かうものではなく、自分自身にも向かうのです。
つまり今までなんでもできそうに思っていた「自分」が、「案外そうでもない」ということに気が付いてきます。
これもショックです。
でも実際、算数はA君に負けるし、国語もBさんにはかなわない、理科・社会はちんぷんかんぷんだし、音楽は音痴で、体育は運動神経がゼロ、とシビアーに自分を見るようになると、これは大変です。
友達についても冷静に見えてくるし、能力の優劣はどうしようもない。
これは困った。
これでは「思春期うつ」と呼ばれる状態になるのも無理はありません。
実際多くの思春期の子どもたちは、内心もやもや、鬱々とした気持ちを抱えています。
親としては数年前まで、あれだけまとわりついていた子どもが、何であんなにうっとおしそうな表情になるのか、訳がわかりませんが、そういう方はご自分の思春期の頃のことをじっくりと思い出してください。
誰でも通過する関門です。
そこを何とか潜り抜けるためのエネルギーとなるのが、思春期を迎えるまでバラ色の時期に、いかに楽しい思い出や自分に対する自信を育ててこれたか、という点なのです。
算数がダメでも、国語がわからなくても、虫だけは詳しいとか、マンガだけは良く読んだ、とか、なんでもいいから「自分だけの世界」を持てているかどうかは、思春期以降の人生を根底から支えてくれる大切な土台になっているのです。
もちろん「世界一素敵なうちの親」のイメージも、親子喧嘩の決定的な瞬間の防波堤になってくれます。
そして「きっと自分はできる!」という現実的な根拠のない万能感こそ、困難に打ちひしがれた時に背中を支えてくれる自尊心となってくれているのです。
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