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岸井謙児

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岸井謙児(きしいけんじ) / 臨床心理士

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コラム

映画「息もできない」:暴力に支配された孤独な二つの魂の邂逅

2015年5月13日

テーマ:「こころ」を描いたこんな映画

コラムカテゴリ:メンタル・カウンセリング

少し前の映画ですが、大阪のある映画館でこれを見ました。
最初はあまり期待していなかったのですが、見終わった後、魂が震えると言うのはこんな感じか!?と言うぐらい感激して涙しました。

息もできない

韓国映画やドラマは、宮廷料理人を描いた「宮廷女官チャングムの誓い」とか「ホジュン」「チュオクの剣」「チュモン」「冬ソナ」あたりは見たことはありました。
でも恋愛ものやお涙ものが中心で、この手の映画は初めて見たので本当ににショックでした。

テーマはパッケージに「愛を知らない男と愛を夢見た女子高校生 傷ついた二つの魂の邂逅」とあるとおり、甘い恋愛ものではなく、まさしく傷ついた二人の人間がそれぞれの人生の中で出会う、その魂の交互作用を見せてくれる作品です。

こんなすごい映画をとる人もいるんだ。
実はこの主人公を演じるヤン・イクチュンさんが、初監督で撮った映画なのです。

とにかく見て頂きたい、としか言いようがないのですが、
タイトル「息もできない」に含まれた意味は何なのでしょうか?

「息」ってなんだろう?
「息もできない」ってどういう意味だろう?
「息をすること」はギリシャ後で「プシケー」と言います。
その「プシケー」という言葉の意味として、実は「魂」「こころ」など言う意味があるのです。

そこから考えると「息もできない」と言うことの意味は「魂が死んだような状態」のなのでは?

主人公のサンフンは、少年の頃、父親のドメスティック・バイオレンスで、愛する母と妹を死なせてしまったことが忘れられずに、大人になった今も父親に暴力を通して責め続けている。

またもう一人の主人公ヨニは、父親がベトナム戦争後の後遺症からか精神状態が不安定になり、
弟はそれを不満に暴力・非行へと走っていく。
そういう複雑な家庭状況にも関わらず必死で前向きに生きようとしている女子高校生ヨニ。

その「息もできない」ような暴力に支配された家庭状況や生育暦を抱えた二人の孤独な魂が、
ふとしたきっかけで出会い、絆を深めていく。
暴力を通してしか自分と言うまとまりを保てないサンフン。
そういうサンフンの哀しみを、見つめて寄り添うことしかできないヨニ。

そして副題にもあるように、「二人でいる時だけ、泣けた」のです。

専門用語を使えば、反社会性人格障害だとか、非虐待児だとかいろいろ言えるのでしょうが、
そんなことより、とにかく愛を求め、愛に迷い、愛に苦しむ二人の魂が見事にリアルに描かれています。
どうしようもない暴力は、悲しみや渇愛の表現なのです。

この映画を見てわたしは昔、ある人に教えてもらったことばを思い出しました。
最後にそれを紹介します。

「汝の哀しき性(さが)に 泣け!
 泣いて、泣いて、泣きぬけ!!」

◇◆◇◆ 「こころ」を描いたこんな映画もあります
ドキュメンタリー映画「徘徊」:認知症の母と娘の日々を描いた作品
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/50972/
ドキュメンタリー映画「パンク・シンドローム」:これは元気をもらえる映画ですよ!!
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/51036/
自閉症に対する無理解が引き起こした悲劇 「彼女の名はサビーヌ」
http://mbp-japan.com/hyogo/officekishii/column/46192/

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