大切なことは絵本から学んだ ③ 「いろいろあっても あるき つづける」
“このひとは むしの がくしゃです しらない むしなんて いないね といばっています ”
でもね、ホントはがくしゃのしらないむしは たくさんいるんです。
たとえば 「はらのむし」や「にがむし」や「なきむし」なんてむし。
でも・・・・
“がくしゃは むしして 『おりませ~ん』”
なんてとぼけたやり取りが続く楽しい絵本です。
ホントに大人はだめですね、見たことのないものや証拠がないものは認めようとしません。
頭で考えているからでしょうね。
専門的になればなるほど、専門以外を信じなくなる。
と、ここまで書いてきて、私はフッと思い出しました。
まてよ・・・・・こんな見えない「むし」をやっつける、というセラピーがあったぞ!
と、取り出してきたのが、東 豊先生の「セラピストの技法」日本評論社。
その中に東先生の創案された「虫退治」という技法の紹介があります。
これぞ、今回の絵本そのもの!!
キミの心の中の「虫退治」をしよう!
引用してみましょう。
“大輔は小学6年生である。両親に伴われ、不安と興味の混じったような顔で、面接室に現れた。”
大輔くんは、理由もはっきりしないのに学校に行くことができなかった。
その大輔君と両親に東先生はいろいろと経過を伺った後でこう言ったのです。
“「あのね、今なぜ大輔くんが学校に行けないでいるかっていうことなんだけどね・・・・・」”
“「このへんにね、ちょっと変な虫がいてね。こいつがビ~ンて飛んでいるのよ」”
“「その虫は、キミの中に入ってドンドン大きくなって増えていくの。どうや?嫌な虫やろ?」”
“「その虫はな、キミの邪魔をして、・・・・・・キミが何かをがんばろうとすると『そんなんせんでもいい』『お腹が痛いからなにもできないよ~』・・・・てな具合にキミにささやくの。わかる?こういうね、ヘンテコリンな虫が入ったんよ”
と続け、そして先生はこう続けたのです。
「で、ここでやらないかんのは・・・・」とセラピストは言った
“「で、ここでやらないかんのは・・・・」セラピストは声を冷静に戻した。「・・・・この虫をやっつけること、虫退治。それが、ここの治療です。なんとか皆さんと一緒に虫退治をしたいと思うわけです・・・・」”
その後の治療経過は、実際に本を読んでもらうしかありませんが、なんと画用紙に大輔くんが書いた『なまけ虫』の周りに家族全員正座して「なまけ虫、出て行け!」と大声をあげながら、パ~ンと『なまけ虫』を平手で叩いていくように、真剣に指示したのです。
これ以外にも虫退治のプロセスはあるのですが、とにかくこのような指示を家族全員に伝えたのです。
そして実際にそれに取り組んだ、(なんと立派な!)家族は見事大輔くんの中にいる『なまけ虫』を退治することができ、大輔くんは無事、学校に登校できるようになったと言うことです。
ブリーフセラピーやシステムズアプローチ、家族療法などに関わっていらっしゃる方々には有名な技法でしょうが、まさしくこの絵本の世界です。
もちろん、単に技法としての「虫退治」ではなく、その背景に東先生の非凡な個性と実力があることは忘れてはならないでしょう。誰でも同じことをやればできると言うものではありません。
人の心はファンタジーやイメージによって支えられている
しかしこういう実践を見ると、この世の中には、科学的な証拠や証明がなされなくても、とにかく「ありうるイメージの世界」、と言うか、ファンタジーの世界と言うものにに支えられているのだなぁ、とと改めて思いますね。
私が箱庭療法やコラージュ療法、絵画療法などの芸術療法に惹かれるのも、そこのところなのです。
大人も子どもも、心の中に埋もれているエネルギーを掘り出す作業が必要なのでしょう。
こころの中の良い幼虫を見つけ出して、育て、蝶として飛び立たせてあげることができればうれしいですね。