大切なことは絵本から学んだ ⑧ あさのこないよるはない 「あさになったので まどをあけますよ」
今回取り上げた絵本はこれ
“ぼくはここで、大きくなった。 たまたまね。”
土の中の穴ぼこに、たまたま落ちた種。
秋になると、落ち葉がぼくを包み込んでくれ暖めてくれ、冬の寒さから守ってくれました。
そうしてぼくを守ってくれた落ち葉は次第に土に還り、
やがて春の暖かさがぼくの目を覚ましてくれたのです。
植物と言うのは生命の基本なのだろうと私は思っています。
たねから芽が吹いて、ぐんぐん伸びて大きくなり、そしていつの間にか成長して大きな木となります。
もちろん、木の力だけでは大きくなれません。
暖かさと栄養で命をはぐくむ母なる大地。
暖かい陽の光を投げかけてくれて、こちらへ向かって伸びて来い、と方向を示してくれる父なる太陽。
そして雨は命の潤いを与えてくれ、
風は新鮮な呼吸をうながしてくれます。
虫や鳥や獣たちは、時には植物を食べることもありますが、
その糞は、逆に植物の栄養になります。
さらに人は、
子どもの頃に木に登り、
思春期に入ると異性と出会う恥ずかしさから木の陰に姿を隠し、
青年期になるとその相手と木陰で愛を語り合う。
大人になると、木陰で休みをとり
子どもが生まれると木に登らせたり、ブランコを作ってあげ、
年をとるにつれ、老木の安らぎに自分の人生を重ねたりする。
この「ぼくはここで、大きくなった」は、その木の立場から自然や人との関わりの様子を淡々と描いてくれます。
なんだか見ているだけで、こころがほっこりしてくる絵本です。絵もなんとも言えず魅力的。
最後にこういう言葉でこの絵本を締めくくります。
“そして、またあたらしい命がはじまる”
ただし今度は「たまたま」ではなく、人の手によって土の中にたねが埋められるのでした。