大切なことは絵本から学んだ ⑧ あさのこないよるはない 「あさになったので まどをあけますよ」
今日の絵本はこれ
ある日のこと・・・・・
“とかいの たかい ところで まどガラスに トンと つばさが ぶつかった。だれも きいていない。”
高いビルのガラスの窓ガラスに、一羽の鳥がトン、とぶつかってしまったのです。
そして高い空の上から、地上にざわめく雑踏の中に落ちてしまいました。
しかし、だれも気がつきません。いや気がついていても、みんなそんなことより自分のことで精一杯なのでしょう。
一羽の鳥のことなど気にかけている暇はないのです。
しかし
“ウイルだけが・・・・つばさを いためた とりに 気がついた”
そしてウイルはその鳥を家に連れて帰ったのです。
子どもは、とても素直に行動します。道端で子猫が捨てられていたら、「可愛そうにこのまま放っておけない」と家につれて帰ります。たいていの場合、大人は「もとの場所に戻してきなさい」と子どもに言うのですが、このウイルの両親は違いました。一緒にそのきずついた鳥を家に迎え、きずついた羽が直るまでウイルと一緒に世話をしたのです。
私はこの絵本を読んでこう思いました。
「この鳥はだれだろう?」と。
もしかしたらこの鳥はウイル自身だったかもしれません。
あるいはお父さん、またはお母さんであったのかもしれません。
あるいは、この絵本を読んでいる私自身なのかもしれません。
たとえそれがだれであろうとも
きずついたつばさをなおすには だれかが一緒にいてくれることが必要なのだ、と。
ウイルがしたことは、
“とれた はねは もどらないけど・・・・・”
と傷に手当てをし、
“きずついた つばさは なおるかも”
と、段ボール箱でとりの居場所を作ってあげて
“ゆっくりやすんで・・・・”
十分な休養と睡眠をとった後で鳥かごを用意してあげました。
そして
“ときが たって・・・・”
きずついたつばさをいやしてもらったとりは、ウイルの家族と一緒に部屋の中から窓ガラス越しに、空を眺めました。そこには仲間たちが空を舞う光景が・・・
“ほら きぼうが・・・・”
ほとんどせりふやト書きがなく、絵そのものに多くのことを語らせる絵本です。
それだけに、ウイルたち家族の愛情が感じられます。
人のこころをつたえるのは言葉がすべてではないのだ、むしろ本当に大切なことは言葉にしない方が伝わるのだよ、と教えてくれた絵本でした。
読んでくれてありがとう