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大切なことは絵本から学んだ ⑭  「きずついたつばさをなおすには」  

岸井謙児

岸井謙児

テーマ:大切なことは絵本から学んだ

今日の絵本はこれ



ある日のこと・・・・・

“とかいの たかい ところで まどガラスに トンと つばさが ぶつかった。だれも きいていない。”

高いビルのガラスの窓ガラスに、一羽の鳥がトン、とぶつかってしまったのです。
そして高い空の上から、地上にざわめく雑踏の中に落ちてしまいました。
しかし、だれも気がつきません。いや気がついていても、みんなそんなことより自分のことで精一杯なのでしょう。
一羽の鳥のことなど気にかけている暇はないのです。

しかし

“ウイルだけが・・・・つばさを いためた とりに 気がついた”

そしてウイルはその鳥を家に連れて帰ったのです。
子どもは、とても素直に行動します。道端で子猫が捨てられていたら、「可愛そうにこのまま放っておけない」と家につれて帰ります。たいていの場合、大人は「もとの場所に戻してきなさい」と子どもに言うのですが、このウイルの両親は違いました。一緒にそのきずついた鳥を家に迎え、きずついた羽が直るまでウイルと一緒に世話をしたのです。

私はこの絵本を読んでこう思いました。
「この鳥はだれだろう?」と。
もしかしたらこの鳥はウイル自身だったかもしれません。
あるいはお父さん、またはお母さんであったのかもしれません。
あるいは、この絵本を読んでいる私自身なのかもしれません。

たとえそれがだれであろうとも
きずついたつばさをなおすには だれかが一緒にいてくれることが必要なのだ、と。
ウイルがしたことは、

“とれた はねは もどらないけど・・・・・”

と傷に手当てをし、

“きずついた つばさは なおるかも”

と、段ボール箱でとりの居場所を作ってあげて

“ゆっくりやすんで・・・・”

十分な休養と睡眠をとった後で鳥かごを用意してあげました。
そして

“ときが たって・・・・”

きずついたつばさをいやしてもらったとりは、ウイルの家族と一緒に部屋の中から窓ガラス越しに、空を眺めました。そこには仲間たちが空を舞う光景が・・・

“ほら きぼうが・・・・”

ほとんどせりふやト書きがなく、絵そのものに多くのことを語らせる絵本です。
それだけに、ウイルたち家族の愛情が感じられます。
人のこころをつたえるのは言葉がすべてではないのだ、むしろ本当に大切なことは言葉にしない方が伝わるのだよ、と教えてくれた絵本でした。

読んでくれてありがとう

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岸井謙児
専門家

岸井謙児(臨床心理士)

カウンセリング・オフィス岸井

カウンセリング暦35年。子供から大人まで、うつ・対人関係の悩み・発達障害・不適応・ひきこもりに関わる問題に丁寧に、かつ誠実に対応します。また全国から電話・スカイプなどでも相談を多数受け付けています。

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