大切なことは絵本から学んだ ② あなたならどう答えますか? 「せかいはいったいだれのもの?」
私は以前から、絵本が大好きです。
「絵本」というと子供が読む本、というイメージもありますが、決してそういうものではありません。
子どもが読んでも伝わるように絵を使って簡単な言葉で書かれてはありますが、それだけに決して嘘はつかないし、子どもが大人に成長して行く上で本当に大切なことがわかりやすく書かれているのです。
そういう絵本の中から、私の気に入ったものを時々紹介して行こうと思います。
ます最初は「とげとげ」
簡単にストーリーを紹介します。
<とげとげは女の子でしたが、自分が誰の子なのか、どこでう生まれたのか、そして自分の名前さえもわからくなっていました。いつもみんなにいじめられ「とげとげ、くるな!」「あっちいへけ!」とのけ者にされるたびに、とげとげの「とげ」はどんどん伸びていくのでした>
この絵本を手にするたびに、私は以前関わったA子のことを思い出します。
A子と関わり始めた時、彼女はとてもトゲトゲした態度でした。何を言っても拒否的な答えしか返ってこないし、周囲の人が思いやりを込めて接しても、決して心を開かないどころか、むしろ挑戦的な態度でとても乾いた凍り付いたまなざしを向けてくるのでした。
<ある日、また意地悪なサルにいじめられていたとげとげ。しかしそこへ飛び込んできてとげとげを救ってくれたのはヤマアラシのトムでした。トムはヤマアラシの身体の針を突き立ててサルを追い払ったのです。しかしお互い「とげ」と「はり」を突き立てたままのとげとげとトムは近づきたくても近づくことができません。しかししばらくしてトムはとげとげにこう言うのでした。「僕は弱虫なんだ・・・だから僕に「はり」がいるんだ」>
「とげ」や「はり」を突き立てている間は自分を守ることができます。しかしそれは、そうでもしなければ耐えられないほど弱い自分がいるからなのです。
A子は家庭環境に恵まれず、十分な愛情を受けてきませんでした。そういう愛情を求めても与えられない体験やいじめられた体験が、これ以上自分を傷つけられないようにと、彼女の「とげ」を突き立てさせたのです。
<とげとげは次第にトムに心を開くようになり、泣きながら自分の苦しみを孤独を打ちあけます。その時、トムはとげとげの針をやさしくなで続けてくれたのです。「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言いながら、ずっと>
A子にとって周囲の人達に恵まれたことは幸いでした。A子の苦しみと孤独を心から理解した周囲の人たちが、本当に根気強くやさしさを持って接してくれたのです。そのおかげで、A子は自分の弱さや傷つきやすさを受け入れることができるようになり、いつの間にか自然な笑顔が見られるようになりました。
「弱さ」を受け入れる「強さ」を育てるには、「やさしさ」が必要なんですね。
A子さん、今はどうしているだろうか・・・・
「とげとげ」 内田鱗太郎・文 佐藤茉莉子・絵 童心社