開発ラッシュが沸く東京都内のビル管理事業
フィリピン マニラ経済圏 マカティ市より
2024年も押し迫った12月12日。
私は、翌年度にURVグローバルグループが事業開業と運営を総合受託するクライアント企業様の、飲食業における海外進出・海外出店に向けた市場調査のため、フィリピンに入りました。
今回の調査対象は、首都マニラを中心とするマニラ経済圏の中でも、富裕層・外国人駐在員・ビジネス層が集積するマカティ市です。
この原稿は、マカティ市に滞在中のCity Garden Grand Hotelから、現地視察の一次情報としてお届けします。
海外進出の判断において、机上の市場データだけでは見えないものがあります。空港から市街地に向かう道路の表情、街を歩く人々の服装、飲食店の価格帯、交通インフラ、治安感覚、商業施設の客層、そして富裕層エリアと周辺地域の格差。
そうした現地でしか得られない情報を、経営者・事業責任者の視点から記録していきます。
このシリーズは、フィリピン・マニラ経済圏への進出、特に飲食店の海外出店や現地市場調査を検討するビジネスマンに向けた3話構成の第1話です。
マカティ市とBGC
フィリピンは、現在、東南アジアの中でも高い経済成長を続ける国の一つです。その成長の熱量を象徴するエリアが、マカティ市とBGCです。
フィリピン、特にマニラと聞くと、老朽化した建物、混沌とした交通、夜の歓楽街の猥雑さ、銃犯罪への不安などを連想する方も少なくありません。確かに、マニラ経済圏には、そうした側面が今も残っています。
しかし、マカティ市やBGCに入ると、街の印象は大きく変わります。
高層ビルが林立し、外資系企業のオフィス、ホテル、レストラン、商業施設が集まり、物価水準も周辺エリアとは明らかに異なります。日本人を含む外国人駐在員も多く、フィリピン国内で増加する富裕層・アッパーミドル層の消費が集中するエリアです。
海外進出を検討する企業にとって、ここで重要なのは、「フィリピン全体の平均像」で市場を判断しないことです。
フィリピンは、国全体としては人件費や生活コストの安さが語られがちですが、マカティ市やBGCのような中核商業エリアでは、価格、賃料、顧客層、競合環境がまったく異なります。
飲食業の海外出店であれば、現地の平均所得だけを見るのではなく、実際に出店を検討する商圏の購買力、消費者の外食頻度、外国人比率、競合店の価格帯、交通動線を確認する必要があります。
マカティ市とBGCは、フィリピン進出において「成長市場の表玄関」であると同時に、「高い競争環境に晒される実戦市場」でもあるのです。
フィリピン到着 マカティ市へ
12日の午後、成田空港からフィリピン航空を利用し、マニラの玄関口であるニノイ・アキノ国際空港に到着しました。
フィリピンには、日本人は観光・短期滞在であればノービザで入国できます。ただし、現在フィリピンに渡航する際に避けて通れないのが、eTravelという電子渡航申告システムへの登録です。
eTravelは、フィリピンへのフライト前に登録が必要となるシステムで、渡航前の準備として必ず確認しておくべき項目です。
このeTravelは、軽く考えると意外に時間を取られます。観光目的の方であっても、複数ページにわたる入力が必要です。特に注意すべき点は、日本語への自動翻訳機能を使って入力しようとすると、表示や入力に不具合が起きる場合があることです。
そのため、eTravelに登録する際は、英語ページのまま入力した方がスムーズです。
また、入力完了後に表示されるQRコードは非常に重要です。入国手続きや搭乗前確認で提示を求められる場合があるため、登録後は必ずQRコードをスクリーンショットで保存しておくべきです。
実際に、空港ではスマートフォンの通信環境がフィリピン側のネットワークにうまく接続できず、手続きに戸惑っている方も見かけました。海外では、空港到着直後にインターネット接続が安定しないことがあります。
したがって、eTravelのQRコードは、通信がなくても表示できるよう、事前に画像として保存しておくことが実務上の重要なポイントです。
入国審査を無事に通過して空港の外へ出ると、まず感じるのは、一年中真夏のような蒸し暑さです。そして、その熱気をさらに増幅するように、けたたましいクラクションを鳴らしながら空港に入ってくる大量のタクシー、送迎車、バイクの流れに圧倒されます。
今、フィリピンをはじめとする東南アジアでの移動に欠かせないのが、配車アプリのGrabです。日本にいるうちに、クレジットカード情報を含めて登録しておけば、現地でGrabに登録している車両を呼ぶことができ、安全性と利便性が高まります。
東南アジアの流しのタクシーでは、不当な料金請求や遠回りのリスクがあります。一方、Grabであれば、目的地までのルート、所要時間、料金の目安が利用者のスマートフォンに表示されます。支払いも登録した法人クレジットカードで自動決済できるため、海外出張時の経費管理にも適しています。
私も空港でGrabを呼び、マカティ市で滞在するCity Garden Grand Hotelまで、運転手の方との短い英会話を交えながら移動しました。
空港からマカティ市に向かう途中、パサイ市周辺を通過します。このエリアでは、幹線道路沿いに老朽化した建物が並び、低所得層の居住エリアを想起させる風景が広がります。
ところが、そこからマカティ市に入ると、街の表情が一変します。
整然とした街路、高層建築、オフィスビル、ホテル、商業施設。数分前まで見ていた街並みとは、まるで別の都市に入ったかのようです。
この変化は、フィリピンという国の成長力と、同時にその成長が生み出す格差の大きさを端的に物語っています。
海外進出を検討する経営者は、この「成長」と「格差」の両方を直視しなければなりません。市場が伸びているからといって、すべての商圏で成功できるわけではありません。逆に、国全体の所得水準だけを見て低価格戦略に寄せすぎると、マカティやBGCのような富裕層エリアではブランド価値を下げてしまう可能性もあります。
現地視察で見るべきものは、街のきれいさだけではありません。そこに誰が住み、誰が働き、誰が消費し、どの価格帯に反応するのか。その見極めこそが、海外出店の成否を分けます。
マカティ市の物価
ホテルにチェックインし、荷物を整理したあと、いよいよ現地調査を開始しました。
私が新しい国や都市に到着して最初に確認するものの一つが、ハンバーガーショップの価格です。マクドナルドやバーガーキングなどのグローバルチェーンは、その国や都市の物価感覚、購買力、為替感覚をつかむためのわかりやすい指標になります。
もちろん、ハンバーガーの価格だけで市場全体を判断することはできません。しかし、現地の生活者が日常的に接する価格帯を確認するには、非常に有効な入口です。
12日は、バーガーキングに入りました。
最も基本的なハンバーガーとコークの小サイズで、合計99フィリピンペソ。日本円の現時点のレート換算で、約277円です。
一方、滞在用にセブンイレブンで購入した中サイズのペットボトルの水は、1本17ペソ。日本円の現時点のレート換算で、約48円です。
この時点では、おおよそ日本の5割から6割程度の価格感覚です。
このようにして、まずは日本の物価感覚とフィリピンの基礎的な物価感覚を比較します。
12日は、ホテルにチェックインしたのが夕刻だったため、本格的な市場調査は翌13日から開始することにし、この日は夕食を取りながら、周辺の歓楽街と飲食店の価格帯を確認することにしました。
まずは、マカティの中心を南北に通るマカティアベニューを南下しながら、周辺の飲食店を見て回ります。
大量のオートバイと車が行き交う道路を、歩行者はその隙間を縫うように進んでいきます。歩道の状態が十分に整っていない箇所もあり、道路環境に気を取られていると、思うように前へ進めません。
これは、飲食店出店の観点から見ると重要な情報です。単に人通りが多いかどうかだけではなく、歩行者が安全に歩けるか、店の前で立ち止まれるか、夜間に安心して来店できるか。こうした要素が、集客力に直結します。
マカティアベニュー沿いの台湾料理店に入り、飲茶と焼きそばを注文してみました。
ビーフンを使った大盛りの焼きそばが335ペソ。日本円換算で約938円。焼き餃子の飲茶が345ペソ。日本円換算で約966円です。
ちなみに、隣に座った日本人の2人連れ、現地駐在員と思われる方々のお会計は、お酒を飲んでいない状態で1,400ペソ。日本円換算で約3,920円。2人で割り勘にして支払っていました。
この価格帯は、もはや日本と大きく変わりません。
つまり、マカティ市の中心部における外食価格は、フィリピン全体の物価水準ではなく、ほぼ日本の都市部に近い水準で考える必要があります。
ここに、フィリピン進出の難しさと面白さがあります。
フィリピンは、一般的には日本より物価が安い国として語られます。しかし、マカティ市やBGCのような富裕層・外国人・ビジネス層が集まるエリアでは、外食価格は想像以上に高い水準にあります。
飲食業の海外進出では、「フィリピンだから安く売る」という単純な発想は危険です。
むしろ、マカティ市のようなエリアでは、立地、内装、サービス、商品品質、ブランドストーリー、客単価設計を総合的に組み立てなければ、現地の競争環境には対応できません。
低価格で勝負するのか。日本品質を前面に出してプレミアム価格を狙うのか。現地富裕層を狙うのか。外国人駐在員を狙うのか。フィリピン人のアッパーミドル層を狙うのか。
その答えは、統計資料だけでは出ません。
現地を歩き、食べ、移動し、支払い、街の空気を感じることで、初めて戦略の輪郭が見えてきます。
今回のVol.1では、マニラ到着からマカティ市の第一印象、そして初日の物価感覚を中心にお伝えしました。
次回以降は、マカティ市・BGC周辺の商業環境、飲食店の競合状況、富裕層エリアにおける出店可能性について、さらに踏み込んで考察していきます。
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