わいせつな画像を送った|わいせつ電磁的記録頒布等罪
別れた相手の誕生日が近づくと、「おめでとうと伝えたい」「せめてプレゼントだけでも送りたい」と考える方は少なくありません。交際中の習慣の延長として、悪気なく送ろうとする方も多いと思います。一方で、別れた後に届く贈り物は、受け取る側には「まだ関係が終わっていない」という合図に見えることがあり、相手が警察に相談したことをきっかけに、送った側が事情を聴かれる場面もあります。この記事では、元恋人に誕生日プレゼントを送る行為がストーカー規制法の上でどのように評価され得るのか、送る前に確かめておきたいこと、すでに送ってしまった場合の対応を、送る側の立場から整理します。
本記事は2026年11月時点の法令に基づいています。ストーカー規制法は2025年12月30日施行の改正により、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できる仕組みが設けられています。刑罰の表記は、2025年6月施行の拘禁刑への一本化を反映しています。
プレゼントを送るだけで、直ちに罪になるわけではない
ストーカー規制法が規制する「つきまとい等」は、特定の人への恋愛感情その他の好意の感情や、それが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる、法律に列挙された行為に限られています(ストーカー規制法2条1項)。物を送る行為として明記されているのは、汚物や動物の死体など、著しく不快または嫌悪の情を催させるような物の送付です(同項6号)。そのため、一般的な誕生日プレゼントを一度送ったというだけで、この類型に当たるとは考えにくいといえます。
弁護士ドットコムにも、関わりを断った相手から果物が届いたという相談に対し、受け取りを求められていない限り、それだけでつきまとい行為とするのは難しいとする回答が寄せられています。もっとも、同じ回答では、メールなどで何度も連絡してくるようであれば、つきまとい行為となる可能性があるとも述べられています。問題になるのは品物そのものよりも、送るときの方法や添える言葉、前後のやり取りだという点を押さえておく必要があります。
また、元恋人に誕生日プレゼントを送る背景には、「相手を祝いたい」「気持ちを伝えたい」「よりを戻すきっかけにしたい」といった思いがあることが多いはずです。こうした思いは、法律上の「好意の感情を満たす目的」と重なりやすく、目的の要件を理由に問題が否定されることは期待しにくい点にも注意が必要です。
問題になりやすいのは「届け方」と「添える言葉」
| 届け方・添える言葉 | 当たる可能性のある行為 | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 相手の自宅や勤務先へ持参する、帰りを待って手渡す | 住居等への押し掛け、待ち伏せ、付近をみだりにうろつくこと(2条1項1号) | ドアノブに掛ける、ポストに直接入れに行く場合も同様に見られやすくなります |
| 「会って渡したい」「受け取ったら連絡して」と求める | 面会、交際その他の義務のないことの要求(2条1項3号) | 返事や面会を条件にすると、要求の色合いが強まります |
| 連絡を拒まれた後に、手紙やメッセージを添えて送る | 拒まれた後の連続した文書の送付・メッセージの送信(2条1項5号) | SNSのメッセージやオンラインギフトの通知も対象となり得ます |
| 共通の友人や相手の家族に渡してもらう | 相手と密接な関係にある人に対するつきまとい等 | 相手本人に直接連絡していなくても対象となり得ます |
手紙やメッセージカードを添える場合
プレゼントに添える手紙は、送った側の目的を判断する材料になります。「おめでとう」の一言のつもりでも、「今でも大切に思っている」「また会いたい」「返事を待っている」といった言葉が加われば、復縁や面会を求める目的があったと受け止められやすくなります。別れ際に「もう連絡しないでほしい」と伝えられていた場合には、手紙を添えた送付そのものが、拒まれた後の文書の送付として扱われるおそれがあります。手紙を送る場面の考え方は、【刑事事件・ストーカー事件】元恋人の職場へ手紙を送ってしまった、ストーカーになる?でも解説しています。
オンラインギフトやSNSで送る場合
住所を知らなくても、SNSやメッセージアプリを通じてギフトを送れるサービスがあります。こうしたギフトは受け取りの案内がメッセージとして相手に届くため、電子メールやSNSのメッセージの送信と同じように評価される可能性があります。ブロックされた後に別のアカウントや別のサービスから送る行為は、相手が連絡を拒んでいると知りながら連絡を重ねたものと見られやすく、避けたい対応です。
共通の友人を通じて渡す場合
直接の連絡を避けるつもりで、共通の友人に渡してもらうよう頼む方もいます。しかし、友人を介して繰り返し物を届けることは、相手の側から見れば、交友関係を通じて自分に近づこうとしていると感じられることがあります。弁護士ドットコムにも、別れて数年たっても毎年の誕生日などに知人を通してプレゼントが届き、つきまといではないかと悩む相談が見られます。友人に近況を尋ねる行為を含めた考え方は、【刑事事件・ストーカー事件】共通の友人に元恋人の様子を聞くのは、問題になる?をご覧ください。
「年に一度だけ」でも、重なれば見え方は変わる
誕生日のプレゼントは年に一度のことなので、「毎日連絡しているわけではない」と考える方もいるでしょう。たしかに、ストーカー行為として処罰の対象になるのは、つきまとい等を同じ相手に反復して行った場合です(ストーカー規制法2条4項)。一度の送付だけで処罰に至ることは、通常は考えにくいといえます。
ただし、誕生日に加えてクリスマスや交際の記念日にも送る、プレゼントの前後にメッセージを送る、届いたかどうかを確かめる連絡をする、といった形で接触が重なると、全体として反復していると評価されるおそれがあります。間隔が空いていても毎年続いていれば、相手にとっては「何年たっても終わらない」という不安につながりやすいものです。連絡の回数とストーカー行為の関係については、連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく整理しています。
つきまとい等に当たる行為があると、警察は警告をすることができ、都道府県公安委員会は禁止命令を出すことができます。警告は行政指導であり、それだけで前科がつくものではありませんが、警告や禁止命令の後に送付を続けると、検挙につながるおそれが高まります。ストーカー行為をした場合の法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で(同法18条)、禁止命令に違反した場合にはさらに重い刑が定められています(同法19条・20条)。
なお、東京都の迷惑防止条例は、恋愛感情に限らず、ねたみや恨みなどの感情を満たす目的で行うつきまといも規制しています。祝う形をとりながら、別れ方への不満や相手を責める言葉を添える場合には、こちらの観点からも問題になり得ます。
送る前に確かめておきたいこと
送るかどうか迷っているのであれば、まずは次の点を振り返ってみてください。一つでも当てはまる場合は、送らないという選択を優先することをおすすめします。
- 別れ際や別れた後に、連絡や接触を控えてほしいと伝えられていたこと。
- メッセージアプリやSNSでブロックされている、または連絡先を変えられていること。
- 相手の現住所を、本人から教えられたのではなく、人づてや自分で調べて知ったこと。
- プレゼントをきっかけに、返事や再会、復縁を期待していること。
- 相手に新しい交際相手や配偶者がいると分かっていること。
- 過去に相手や警察から、連絡をやめるよう求められたことがあること。
とくに、相手の住所を人づてに聞き出したり調べたりしたうえで送る行為は、品物の中身に関係なく「居場所を知られている」という強い不安を相手に与えます。相手が引っ越していた場合や連絡先が分からない場合は、無理に届けようとしないことが大切です。
気持ちの整理をつけたいときは、プレゼントを送る以外の方法を考えることも一つです。用意した物を送らずに手元に置いておく、自分の区切りとして別の形で使う、といった選択であれば、相手の生活に影響を与えることはありません。
すでに送ってしまった場合にすること
すでにプレゼントを送ってしまった場合でも、その後の対応によって受け止められ方は変わります。まずは、届いたかどうかの確認や感想を求める連絡をしないことが大切です。返事がないことは、相手が関わりを望んでいないことの表れと受け止め、追加の連絡や再送は控えてください。
プレゼントが受け取り拒否などで返送されてきた場合は、相手の意思がはっきり示されたものとして、それ以上は送らないようにします。返送された品物を改めて届けに行く、別の方法で送り直すといった対応は、拒まれた後の接触として問題が大きくなるおそれがあります。
また、送ったときの送り状の控えや、添えた手紙・メッセージの内容は、削除や破棄をせずに残しておきましょう。後に警察から事情を聴かれた場合に、どのような内容を何回送ったのかを正確に説明するための資料になります。
相手や警察から指摘を受けたとき
相手から「怖い」「警察に相談する」と言われた場合、誤解を解こうとして説明や謝罪の連絡を重ねると、かえって接触が増える結果になりがちです。その段階でしておきたいことは、【刑事事件・ストーカー事件】相手から「ストーカーなら警察に言う」と言われた段階で、何をすべき?で解説しています。謝りたい気持ちがある場合も直接の連絡には慎重であるべきで、考え方は【刑事事件・ストーカー事件】被害者に謝罪の手紙を送りたい、送ってもいい?にまとめています。
すでに警察から警告を受けている場合は、誕生日などの節目であっても、相手への送付や連絡は控えてください。警告の意味と、その後に起こり得ることについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかをご覧ください。弁護士にご相談いただければ、送った内容や回数を整理したうえで、警察からの事情聴取にどう臨むか、相手との接触をどう断つかを一緒に検討できます。
よくあるご質問
相手がプレゼントを受け取ってくれたなら、問題はないと考えてよいですか
受け取ったことが、そのまま贈り物を歓迎している意思の表れとは限りません。宅配便を受け取った後で送り主に気づく場合や、職場で渡されて断れなかった場合もあります。受け取ったかどうかではなく、その後に相手から連絡があるかどうかを目安にし、反応がなければ追加の連絡は控えるのが無難です。
相手の家族宛てに送れば、本人に送ったことにはなりませんか
ストーカー規制法は、相手本人だけでなく、その配偶者や親族など、相手と社会生活で密接な関係にある人に対するつきまとい等も対象にしています。家族宛てに送ったとしても、実質的に本人への贈り物であれば、本人に送ったのと同じように評価されるおそれがあります。
以前に贈ったプレゼントを返してほしいと伝えることはできますか
交際中に渡したプレゼントは、法律上は贈与として扱われるのが一般的で、渡し終えた物の返還を求められる場面は限られます。返還を求める連絡を重ねると、それ自体がストーカー規制法上の問題に発展するおそれもあります。反対に、もらった物を返したい場面の考え方は、【刑事事件・ストーカー事件】元恋人にプレゼントを返そうとしたら、ストーカーと言われた?で解説しています。
別れた相手の誕生日を祝いたいという気持ちそのものは、自然なものです。ただ、別れた後の贈り物は送る側の意図とは異なる受け止め方をされやすく、届け方や添える言葉、続け方によっては警察の対応につながることがあります。送るかどうか迷ったときは送らないという選択肢も含めて考え、すでに相手や警察から指摘を受けている場合は、それ以上の連絡を控えたうえで、早めに弁護士へご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


