保釈の条件(制限住居・接触禁止・渡航制限)に違反したらどうなるか
ネット上の投稿をめぐって相手や代理人から連絡が届いたとき、まず頭に浮かぶのが「謝罪の投稿を出して収めたい」という対応です。削除しただけでは足りない気がして、経緯を説明した文章や訂正の文章を、同じアカウントから公開する方も少なくありません。
ただ、公開の場に出す投稿と、相手に届ける謝罪とでは、届く先も、その後の手続での見られ方も違います。この記事では、投稿をした側の立場から、謝罪や訂正の投稿が示談の話し合いと刑事の処分にどう関わるのかを整理します。
謝り方には三つの形がある
ひとくちに謝罪といっても、誰に届くのか、どう残るのかは形によって異なります。まず三つに分けて考えます。
| 謝り方 | 届く相手 | 手続での見られ方 |
|---|---|---|
| 相手に直接届ける謝罪文 | 相手本人(代理人を通すことが多い) | 示談の資料として提出できる |
| 示談書に入れる謝罪の条項 | 相手本人 | 合意の内容として残る |
| 公開の場での謝罪・訂正の投稿 | 不特定多数の読み手 | 相手に届いたとは限らない |
三つ目だけが、相手ではなく世の中に向けた行為である点が大きな違いです。この違いが、後の評価を分けます。
刑事で見られているのは「相手に届いた対応」
起訴するかどうかの判断では、事件そのものの内容だけでなく、事件が起きた後の事情も材料になります。謝罪や被害の回復は、その材料のひとつです。
ここで見られているのは、相手に届いた対応です。捜査機関が確認するのは、示談が成立しているか、謝罪文が相手の手元に渡っているか、相手が処罰についてどう考えているかといった点で、公開の場に出した投稿がそのまま評価されるわけではありません。相手が目にしていない謝罪は、被害の回復として扱いにくいためです。
名誉毀損罪や侮辱罪は、相手の告訴がなければ起訴できない罪です。そのぶん相手の意向が結論に直結しやすく、公開の投稿を出したかどうかより、相手との話し合いが進んでいるかどうかが重く見られます。
謝罪や訂正の投稿は、それ自体が資料として残る
見落とされやすいのは、自分で書いた文章が後の手続で証拠として扱われるという点です。本人が自分で書いたもので、自分に不利な事実を認める内容であれば、刑事の手続でも証拠として使える場面があり、署名や押印がなくても差し支えないと考えられています。民事でも、投稿の画面を保存したものが書面の証拠として提出されます。
問題になりやすいのは、文面のなかで事実関係まで認めてしまう場合です。たとえば、次のような書き方です。
- 事実と異なることを書いてしまいました。
- 確認しないまま投稿しました。
- 相手が傷つくと分かっていました。
- 面白半分でやってしまいました。
どれも謝罪の言葉としては自然なものです。ただ、後になって、書いた内容にどれだけ根拠があったのか、読み手に誰のことか分かる状態だったのか、そもそも違法といえる内容だったのかを検討する余地を、先に狭めてしまうことがあります。話し合いの条件を詰める前に、争う余地を自分で閉じる形です。
投稿を消しても、この点は変わりません。画面を保存されていれば内容は残りますし、いったん公開した文章を後から出さなかったことにはできません。
訂正の投稿で、書いた時点の判断は補えるのか
書いた内容が事実であれば責任を問われない場面はあります。ただ、その判断は、投稿した時点で自分の手元にどれだけの根拠があったかを基準に見られます。後から資料を集め直しても、書いた時点の判断を遡って正当化することは難しいとされています。
訂正の投稿は、「後から改めた」という事情であって、投稿した時点の評価を置き換えるものではありません。もっとも、誤った内容が広がり続けるのを止める意味はあります。訂正するかどうかは、責任を消すためというより、被害をこれ以上広げないためという観点で考えることになります。
謝罪や訂正の投稿が、新しい問題を生むことがある
謝罪のつもりで出した投稿が、別の責任につながることもあります。よくあるのは次のような経路です。
- 経緯を説明したことで、それまで分からなかった相手が誰なのか、読み手に伝わってしまう。
- 相手の名前、勤務先、やり取りの中身まで書いてしまい、私生活に関わる情報の公開になる。
- 「一部は事実だと思っている」と書き添えたことで、新たに事実を示したと受け取られる。
- 釈明のつもりの説明が、相手の言い分への反論として読まれ、批判の形になる。
- 投稿を見た第三者が相手に向かい、その言動についてまで説明を求められる立場になる。
- それまで事情を知らなかった人にまで、もとの投稿の内容が知れ渡る。
最後の点は特に見落とされがちです。謝罪の投稿はもとの投稿より広く読まれることがあり、結果として相手の受けた影響が大きくなったと評価される場合があります。相手が望んでいるのが「これ以上広がらないこと」であれば、公開の謝罪はその希望と逆の方向に働きます。
示談の条件と衝突する場面
話し合いが進んでいる段階での投稿は、条件そのものとぶつかることがあります。
- 口外禁止の条項がある場合、SNSや掲示板への書き込みも対象に含めるのが通常で、成立後の謝罪投稿が約束に反することになる。
- 接触を控える約束がある場合、公開の場で相手に呼びかける形の投稿も、接触と受け取られる余地がある。
- 清算条項を入れた後に新しい投稿をすると、その投稿は合意の対象外として、改めて問題にされうる。
- 窓口を代理人に一本化した後で本人が公開の場で動くと、条件の調整が振り出しに戻ることがある。
口外禁止の条項に反したからといって、示談そのものが当然になくなるわけではないと考えられています。ただ、約束に反した部分について賠償を求められることはあり、示談書に違約金の定めが置かれている例も珍しくありません。
相手が公開の謝罪を求めている場合
民法723条は、名誉を毀損された人の請求により、裁判所が損害賠償に代えて、または損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命じることができると定めています。謝罪広告や訂正の掲載が、これにあたります。
最高裁は昭和31年7月4日の判決で、事態の真相を告白して陳謝の意を表明するにとどまる程度の内容であれば、謝罪広告を命じる判決も強制執行になじむとしました。あわせて、内容によっては本人の意思に任せるのが相当な場合や、強制執行に適さない場合もありうるとしています。
もっとも実務では、謝罪広告が命じられる例は多くありません。金銭の賠償で足りると判断されれば認められないことが多く、個人が相手の事案で新聞への掲載まで命じられることはまれです。投稿の削除は比較的認められやすい一方、謝罪の掲載までは踏み込まれにくい、という差があります。
一方で、話し合いのなかで相手の希望として公開の訂正を条件に入れること自体はできます。その場合は、文面、載せる場所、掲載する期間、削除の時期まで書面で決めておくと、後の行き違いを避けやすくなります。
削除とアカウントの扱い
投稿を消しても、それまでに生じた責任がなくなるわけではありません。他方で、アカウントごと消してしまうと、自分の側に残っていたやり取りの記録まで失われ、経緯を説明する材料がなくなります。投稿の内容と日付、相手とのやり取りは、消す前に保存しておくほうが後の話し合いに役立ちます。
整理しておきたいこと
- 問題になっている投稿の日付、内容、公開されていた範囲。
- その後に自分が出した投稿(削除、訂正、謝罪)の日付と文面。
- 相手や代理人から届いた書面、通知、メッセージ。
- 投稿のもとになった資料や、当時に見ていた情報。
- 相手から求められている内容(金銭、削除、訂正、公開の謝罪など)。
- 勤務先や学校に事情が伝わっているかどうか。
控えたほうがよい対応
- 代理人が付いた後に、相手へ直接連絡を取ろうとすること。
- 経緯や相手の言い分を書き添えた謝罪文を、公開の場に出すこと。
- 相手の反応を見ながら、投稿を出しては消すことを繰り返すこと。
- アカウントを削除して、やり取りの記録ごと失うこと。
- 話し合いがまとまる前に、示談の内容や金額を公開の場で書くこと。
よくある質問
すでに謝罪の投稿をしてしまいました。消したほうがよいのでしょうか
一律の答えはありません。相手や第三者がすでに画面を保存している場合が多く、消しても内容そのものは残ります。他方で、投稿が残り続けることで話し合いがこじれることもあります。相手から書面が届いている段階であれば、消すかどうかを自分だけで決める前に、その書面を持って相談したほうが判断しやすくなります。
相手から「公開の場で謝れ」と言われています。応じたほうがよいのでしょうか
応じること自体が問題になるわけではありません。ただ、文面をこちらだけで決めて出すのは避けたほうが無難です。文面に経緯や相手の情報が入れば新しい問題を生みますし、後から「求めていた内容と違う」と言われることもあります。公開の訂正を条件にするのであれば、文面と掲載の条件を書面で固めてから出す形が現実的です。
「勘違いでした」と投稿すれば、請求される金額は下がりますか
投稿だけで金額が決まるものではありません。裁判所が賠償額を考えるときには、投稿の内容や広がり方のほか、その後に削除や訂正といった対応が取られたかどうかも、事情のひとつとして見られています。ただ、それは相手に届く形での対応と合わせて評価されるもので、公開の投稿を出したことだけを取り出して金額が動くわけではありません。
まとめ
- 公開の場に出す投稿と、相手に届ける謝罪は、別のものとして扱われる。
- 起訴するかどうかの判断で見られているのは、相手に届いた対応と相手の意向である。
- 自分で書いた謝罪や訂正の文章は、不利な事実を認める内容であれば証拠として扱われうる。
- 文面で事実関係まで認めると、後で検討できたはずの点を先に狭めることがある。
- 書いた内容が事実かどうかの判断は投稿した時点の根拠を基準に見られ、訂正で遡って補うのは難しい。
- 謝罪の投稿が、相手の特定、私生活に関わる情報の公開、被害の拡大につながることがある。
- 口外禁止や接触を控える約束がある場合、謝罪投稿がその約束に反することがある。
- 民法723条の謝罪広告は裁判所が命じるもので、実際に命じられる例は多くない。
投稿をめぐる対応は、何を出すかと同じくらい、何を出さないかで結果が変わります。相手から連絡が届いた段階や、投稿を消すかどうかで迷っている段階で一度弁護士に相談しておくと、選べる対応の幅を残したまま進めやすくなります。当事務所では初回のご相談を無料でお受けしています。


