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この記事は、2026年10月時点のストーカー規制法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)の内容をもとに、警察から警告を受けた方に向けて一般的な扱いを整理したものです。実際の扱いは、事案の内容や警察署ごとの運用によって異なることがあります。
警察からストーカー規制法にもとづく警告を受けたあと、「会社に連絡されるのではないか」「家族に知られてしまうのではないか」と不安を抱えてご相談に来られる方は少なくありません。弁護士ドットコムなどの法律相談サイトにも、同じ会社の同僚との間で警告を受けたが会社に報告する義務はあるのか、勤務先の規程で懲戒の対象になるのではないか、といった質問が寄せられています。
結論からお伝えすると、警察が警告をしたことを勤務先や家族に知らせる制度はありません。ただし、制度がないことと、誰にも知られないことは同じではありません。この記事では、警告の法的な位置づけを確認したうえで、会社や家族に伝わることがある経路と、警告を受けた後に気をつけておきたい点を整理します。
警告は刑罰ではなく、前科にはならない
ストーカー規制法の警告は、つきまとい等をしたと認められる人に対し、警察本部長や警察署長が「さらに反復してつきまとい等をしてはならない」と告げるものです(ストーカー規制法4条)。警察署に呼ばれて書面を渡される方法のほか、電話などで口頭により伝えられる場合もあります。
警告は裁判を経て科される刑罰ではなく、行政上の措置と位置づけられています。そのため、警告を受けただけで前科がつくことはありません。一方で、警察の内部には警告をした事実が記録として残ります。後に同じ相手に対する行為が問題になった場合、警告を受けていたことは、禁止命令や捜査の判断材料として扱われることになります。
警告そのものの意味や、その後に起こりうる流れについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかで詳しく解説しています。
警察から会社や家族に連絡が行くことはあるのか
勤務先へ知らせる仕組みはない
警察官には、職務上知った秘密を漏らしてはならない守秘義務があります(地方公務員法34条)。警告をしたことを本人の勤務先へ通知する制度も設けられていません。そのため、警察の側から会社に「この社員に警告をした」と連絡が入ることは、通常は考えにくいといえます。
ただし、刑事事件として捜査が進んだ場合には、警察が勤務先に資料の提出を求める照会を行うことがあります。警告の段階と、事件として捜査される段階とでは、周囲への影響の出方が異なると考えておくとよいでしょう。
家族へ知らせる仕組みもない
成人の方が警告を受けた場合、警察から親や配偶者に連絡する仕組みもありません。警告は本人に対して行われるもので、家族の同意や立会いを必要とするものではないからです。
なお、警告を受ける方が未成年の場合には、保護者に連絡したり、同席を求めたりする運用がとられることがあります。
「仕組みがない」ことと「知られない」ことは別
警察からの通知がなくても、手続の進み方や周囲の人の動きによって、事実上伝わってしまうことがあります。勤務先に伝わる経路を制度上のものと事実上のものに分けて考える視点は、勤務先に伝わる経路|通知制度と事実上の伝達を分けるでも整理しています。
会社や家族に知られることがある経路
実際に伝わることがある主な経路は、次のとおりです。
| 経路 | 起きやすい場面 | 伝わりやすい相手 |
|---|---|---|
| 警察からの電話や訪問 | 自宅の固定電話に連絡が入る、警察官が自宅を訪ねてくる | 同居している家族 |
| 郵便物 | 警告書や、禁止命令の前に行われる聴聞の通知が自宅に届く | 同居している家族 |
| 警察署への出頭 | 平日の日中に呼び出され、仕事を休む必要がある | 職場(事実上) |
| 被害者本人や共通の知人 | 相手が同じ職場にいる、共通の友人が多い | 職場・知人 |
| 行為が職場で行われていた | 職場での待ち伏せや、社内のチャットでの連絡が問題になった | 職場 |
| 警告後も行為が続いた場合 | 禁止命令、逮捕による欠勤や報道 | 職場・家族 |
相手が同じ職場にいる場合
警告の相手が同じ会社の同僚である場合、会社に伝わる可能性は高くなります。相手の方が、上司やハラスメントの相談窓口に相談することは、職場で安心して働くための正当な行動だからです。会社には従業員が安全に働けるよう配慮する義務があるため、相談を受ければ、事実関係の確認や配置の見直しなどを検討することがあります。
社内での待ち伏せや、業務用のチャットを使った連絡が問題になっている場合も、行為そのものが職場で起きているため、会社が把握する可能性があります。
相手や周囲の人が話した場合
相手の方が、家族や友人に被害を相談することもあります。そこから共通の知人へと話が広がり、結果として勤務先や家族の耳に入ることも考えられます。
事実を不特定多数に広める行為は、内容や方法によっては名誉毀損の問題になりえます。ただ、身の安全のために家族や職場へ相談することまで止めることはできません。また、相手の新しい交際相手などから「会社や親に事実を伝えろ」「会社を辞めろ」と求められることもありますが、こうした要求に応じる法的な義務はありません。対応に迷う場合は、直接やり取りを続けず、弁護士にご相談ください。
会社に自分から報告する義務はあるのか
警告を受けたことを勤務先に報告するよう定めた法律はありません。報告の要否は、主に勤務先の就業規則によって決まります。多くの会社では、逮捕や起訴、有罪判決を受けたときの報告を定めている例がみられますが、行政上の措置である警告まで報告の対象にしている規程は多くないと考えられます。まずは、ご自身の会社の就業規則で、どのような場合に報告が求められているかを確かめてください。
懲戒についても、私生活上の行為を理由に処分できる場面は、会社の秩序や信用に具体的な影響が出た場合などに限られると考えられています。ただし、相手が同僚で、行為が職場の内外にまたがっている場合には、ハラスメントとして社内の規程にもとづく調査や処分の対象になることがあります。会社から事実関係を尋ねられたときに事実と異なる説明をすると、そのこと自体が別の問題として扱われるおそれがあるため、答え方は慎重に整理しておく必要があります。
また、履歴書の賞罰欄は一般に確定した刑罰を書く欄と理解されており、警告を受けたことを記載する必要はないと考えられています。刑事と労務の手続が同時に動くときの考え方は、退職届と懲戒解雇|刑事と労務が同時に動くときの順序をご参照ください。
家族に知られずに手続を進めたいときに確かめておくこと
家族に事情を伝えるかどうかは、ご本人が判断してよいことです。警察とのやり取りで、次の点を確認しておくと、意図しない形で家族に伝わることを減らせる場合があります。
- 警察からの連絡先として、自宅の固定電話ではなく携帯電話の番号を伝えておくこと。
- 警告書などの書面を、郵送ではなく警察署で受け取れるか相談すること。
- 出頭の日時を、仕事や家族の予定と調整できるか尋ねること。
- 弁護士に依頼した場合に、弁護士を連絡の窓口にできるか確認すること。
ただし、警察の連絡や書面の受け取りを避けようとして、呼び出しに応じなかったり、連絡先を偽ったりすることは避けてください。かえって事態を重くするおそれがあります。連絡方法や書面の送付先の工夫については、家族に知られずに解決できるか|連絡方法・書面の送付先の設計も参考にしてください。
周囲に知られることより大きな影響が出るのは、警告後の行動
警告を受けた後に、会社や家族に知られることを心配するあまり、相手に「誰にも言わないでほしい」と連絡を取ろうとする方がいます。しかし、警告を受けた後の連絡は、それ自体がつきまとい等として扱われるおそれがあります。謝罪のつもりの連絡であっても同じです。この点は、【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由で詳しく説明しています。
警告後もつきまとい等が繰り返されると、公安委員会から禁止命令が出されることがあります。禁止命令の前には、原則として本人の言い分を聴く聴聞が行われます。さらに、ストーカー行為をした場合は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金の対象とされています。逮捕されれば欠勤が続き、勤務先や家族に知られる可能性は大きく高まります。
つまり、会社や家族に知られる事態を避けるうえで最も大切なのは、警告の内容を守り、相手への連絡や接近をしないことです。禁止命令や刑事処分に進む分かれ目については、【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合と、【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べることで解説しています。
よくあるご質問
転職先の採用調査で、警告を受けたことが分かることはありますか
警察が保有する記録を、民間の企業が照会して取り寄せる仕組みはありません。そのため、採用の際の調査で警告の事実が分かることは、通常は考えにくいといえます。前科や前歴がどこに残り、どのような場面で照会されるかについては、前科と前歴はどう違い、どこに残るのか|期間と照会される場面をご覧ください。
警告に納得できない場合、会社に説明する前に何をすればよいですか
警告の内容に納得できない場合でも、まずは警告に従い、相手への連絡を控えることが前提です。そのうえで、警告に至った経緯や、相手とのやり取りの記録を手元に整理しておくと、後に会社から事情を聞かれたときや、手続の中で言い分を述べる場面で役立ちます。
弁護士に相談するとできること
当事務所では、警告を受けた方からのご相談をお受けしています。警告の位置づけや今後の見通しの説明に加えて、警察との連絡の窓口を弁護士が担うこと、就業規則を確認したうえで勤務先にどこまで説明するかを一緒に考えること、相手の方への対応が必要な場合に代理人として連絡することなど、ご事情に応じた支援を検討できます。
警告を受けた直後は、周囲に知られることへの不安から、焦って行動してしまいがちです。会社や家族への伝わり方は、警告後の行動や、事実の整理の仕方によって大きく変わります。一人で判断する前に、まずは状況をお聞かせください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


