【ストーカートラブル】禁止命令の前の聴聞に呼ばれた|聴聞で述べること
自宅の前や駅の改札、職場の近くで相手が待っている。その姿をスマートフォンで撮っておけば、警察に相談するときの材料になるかもしれない。一方で「勝手に撮ったら、肖像権の侵害だと言われないか」「撮っているところを見られたら、かえって相手を怒らせないか」と迷い、カメラを向けられずにいる方も少なくありません。
この記事では、待ち伏せをしている相手を撮影することが法的にどう扱われるのか、どのような撮り方や使い方をすると、こちらが責任を問われるおそれが出てくるのかを整理します。あわせて、安全を損なわずに記録を残す方法と、撮った記録の使い道もお伝えします。
本記事は2026年11月時点の法令と一般的な考え方をもとにしています。実際の判断は個別の事情によって変わりますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
被害の記録として撮ること自体は、直ちに違法とされるものではありません
人には、みだりに自分の顔や姿を撮影されない利益があり、一般に「肖像権」と呼ばれています。ただ、他人を撮影すれば必ず肖像権の侵害になるわけではありません。最高裁判所の判例(平成17年11月10日判決)は、撮影された人の社会的地位、撮影されたときの活動の内容、撮影の場所・目的・態様・必要性などを総合して考え、撮影による不利益が社会生活の中で我慢すべき限度を超えるかどうかで違法かどうかを判断するという枠組みを示しています。
この枠組みに当てはめると、待ち伏せをしている相手の姿を、被害を記録する目的で、人目のある屋外から撮影する場合は、撮影の必要性が認められやすく、違法と評価される場面は限られると考えられます。相手は、こちらを待ち伏せするという、記録されてもやむを得ない行動をとっているためです。
判断の分かれ目になりやすい事情
- 何のために撮ったのか(被害の記録か、それ以外の目的か)。
- どこで撮ったのか(公道や駅などの公共の場所か、相手の私的な空間か)。
- どのように撮ったのか(離れた場所から短時間か、至近距離で執拗にか)。
- 撮った後にどう扱ったのか(警察や弁護士に見せただけか、広く公開したか)。
特に重く見られやすいのは、撮影そのものよりも、撮った画像や動画をその後どう扱ったかという点です。記録として手元に残し、相談先に提出する範囲であれば、問題になることはあまりありません。
こちらが責任を問われるおそれがある場面
撮影の目的が正当であっても、撮り方や使い方によっては、被害を受けている側が法的な責任を問われたり、相手から反論の材料にされたりすることがあります。代表的な場面を確認しておきます。
撮った画像をSNSに載せる、知人に見せて回る
「この人にストーカーされています」と顔写真を添えて投稿すると、内容が事実であっても、相手の社会的評価を下げるものとして名誉毀損にあたる可能性があります。顔が分かる画像を不特定多数に公開すること自体が、肖像権やプライバシーの侵害とされるおそれもあります。被害を周囲に知ってもらいたいという気持ちは自然なものですが、公開は相手に損害賠償を求める口実を与え、こちらが訴えられる側に回ることにもなりかねません。
撮影のために相手を追いかける、張り込む
証拠を集めようとして相手の後をつけたり、相手の自宅や勤務先の近くで待ったりすると、今度はこちらの行動が「つきまとい」と受け取られることがあります。軽犯罪法は、不安や迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとう行為を禁じていますし、都道府県の迷惑防止条例にも、目的によってはつきまといを規制する定めがあります。相手が「自分のほうが付け回されている」と警察に訴えれば、話が複雑になるおそれもあります。
至近距離でカメラを突きつける、言い争いになる
相手の顔にスマートフォンを近づけて撮り続けると、相手が逆上して端末を奪おうとするなど、もみ合いに発展することがあります。けがをする危険があるうえ、どちらが先に手を出したかをめぐって、互いに被害を主張し合う状況にもなりやすくなります。
相手の敷地や建物の中に入って撮る
相手の自宅の敷地や、関係者以外の立ち入りが制限されている建物に入って撮影すると、住居侵入や建造物侵入が問題になることがあります。撮影の場所は、自分が正当にいてよい場所に限るのが基本です。
画像を材料に相手へ要求をする
「この動画を会社に送られたくなければ、二度と近づかないと約束しろ」といった伝え方は、内容によっては脅迫や強要と評価されるおそれがあります。接触をやめてほしいという要求そのものは正当でも、伝え方を誤ると、こちらの立場を弱めてしまいます。相手への要求は、警察や弁護士を通じて行うほうが安全です。
撮影の仕方とリスクの目安
| 撮影・利用の仕方 | 問題になるおそれ | 主な理由 |
|---|---|---|
| 自宅の窓越しや防犯カメラで、敷地の外に立つ相手を記録する | 低い | 被害の記録という目的があり、こちらが正当にいる場所から撮っているため |
| 駅や路上で、離れた位置から短時間撮る | 低い | 公共の場所で、必要な範囲にとどまっているため |
| 撮影のために相手を追いかける、張り込む | あり | こちらの行動がつきまといと受け取られるおそれがあるため |
| 至近距離でカメラを向け続ける | あり | もみ合いや逆上を招き、互いの主張が対立しやすいため |
| 顔が分かる画像をSNSなどで公開する | 高い | 名誉毀損・プライバシー侵害を主張される余地が大きいため |
| 画像を材料に相手へ要求する | 高い | 伝え方によっては脅迫・強要と評価されるおそれがあるため |
安全を優先した記録の残し方
証拠は、身の安全と引き換えにするものではありません。相手がこちらの撮影に気づくと、行動がかえって激しくなることもあります。撮影するのであれば、相手と距離を保ち、気づかれにくい方法を選ぶことが大切です。
- 自宅の中から、窓越しやドアの内側から撮る。
- ドアホンの録画機能や防犯カメラを使い、自分が現場に出ずに記録する。
- 顔をはっきり写そうと無理をせず、服装や立ち位置、時刻が分かる程度にとどめる。
- 撮影中に相手へ話しかけたり、撮っていることを告げたりしない。
- 危険を感じたら撮影より避難と110番を優先する。
- 撮った画像や動画は加工せず、元のデータのまま保存する。
防犯カメラの設置や映像の保存方法については、【ストーカートラブル】防犯カメラの映像を証拠にする|設置と保存の注意点で詳しく解説しています。
撮影できなくても、残せる記録はあります
「怖くてカメラを向けられなかった」「撮ったが顔が写っていなかった」という場合でも、相談をあきらめる必要はありません。待ち伏せの被害は、撮影以外の記録を積み重ねることでも示すことができます。
- 日時、場所、相手の様子、自分がどう感じたかを、その日のうちにメモに残す。
- 同じ場面を見た家族や同僚、店の従業員などの名前と連絡先を控えておく。
- 110番通報をした場合は、通報した日時を記録しておく。
- 相手から届いたメッセージや着信の履歴を消さずに保存する。
- 駅や店舗の防犯カメラに写っている可能性がある場合は、早めに警察へ伝える。
施設の防犯カメラの映像は、一定期間が過ぎると上書きされることが多く、個人が開示を求めても応じてもらえないのが一般的です。警察に相談すれば、捜査の中で確認してもらえる場合があります。記録の付け方の基本は、証拠の残し方|あとで警察・弁護士に通用する記録とはもあわせてご覧ください。
撮った記録は、相談先に渡して使います
待ち伏せは、ストーカー規制法が定める「つきまとい等」の一つです。恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みの感情から、住居や勤務先、通常いる場所の付近で待ち伏せをすることが対象になります。撮影した画像や動画、日々のメモは、警察が警告や禁止命令を検討する際の判断材料になります。近年の法改正では、被害を受けている方からの申出がなくても、警察が警告を出せる仕組みも設けられました。待ち伏せとストーカー規制法の関係は、元交際相手のつきまとい・待ち伏せ|ストーカー規制法でできる対応でも解説しています。
弁護士に依頼した場合は、記録をもとに相手へ接触をやめるよう求める通知を送ったり、裁判所に接近禁止の仮処分を申し立てたりすることができます。いずれの場面でも、記録は相談先に渡して使うものであり、ご自身で相手に突きつけたり、公開したりする必要はありません。
相手から「勝手に撮影された」と言われたときは
撮影に気づいた相手から、画像を消すよう求められたり、「肖像権の侵害で訴える」と言われたりすることがあります。その場で言い返したり、求めに応じて画像を消したりすることは避け、まずは安全な場所に離れてください。被害の記録として撮った画像を消してしまうと、後で警察に相談するときの材料を自分で失うことになります。
相手から書面や連絡で正式に請求が届いた場合も、直接やり取りをせず、記録を持って警察や弁護士に相談するのが安全です。相手の主張に理由があるかどうかは、撮影の目的や態様、その後の扱いを確認したうえで判断することになります。
よくあるご質問
相手の顔が写っていない画像でも、意味はありますか
意味はあります。服装や背格好、立っている場所、撮影した日時が分かれば、ほかのメモや目撃した人の話と組み合わせて、同じ人物が繰り返し現れていることを示す手がかりになります。無理に顔を写そうとして相手に近づくより、安全な位置から記録を重ねることを優先してください。
撮影していることを相手に伝えたほうが、抑止になりますか
相手によっては行動をやめることもありますが、逆に刺激して接触が激しくなるおそれもあります。記録していることを相手に伝える役割は、警察の警告や弁護士からの通知に任せるほうが、こちらの安全を保ちやすいと考えられます。
家族が代わりに相手を撮影してもよいですか
同居する家族が自宅から撮影するなど、被害を受けている方と同じく正当な目的と方法の範囲であれば、考え方は変わりません。ただし、家族が相手に詰め寄ったり、後を追いかけたりすると、家族の側が問題とされるおそれがあります。役割は記録までと決めておくと安心です。
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待ち伏せの記録は、相談先が状況を把握するための大切な材料ですが、ご自身の安全より優先すべきものではありません。撮れた記録も、撮れなかった場面のメモも、そのまま相談の場に持ってきていただければ、そこから次の手立てを一緒に考えることができます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


