【ストーカートラブル】相手が釈放される|時期を知る方法と、その日に備えること
本記事は、2026年11月時点の法令と一般的な運用をもとに書いています。個別の事情によって取るべき対応は変わりますので、具体的な判断は専門家にご確認ください。
過去にストーカー被害に遭った方が新しい交際を始めるとき、「被害のことを話すべきか」「話すとしたらどこまでか」で迷うことは少なくありません。話せば相手を不安にさせるかもしれない、引かれてしまうかもしれない、と感じる一方で、黙ったままでは相手を危険にさらすのではないかという心配もあるでしょう。
この記事では、話すかどうかを決めるときの考え方、交際の段階ごとに伝える範囲の目安、話す前に確認しておきたい法律上の点、そして新しい交際相手に頼まないほうがよいことを整理します。
話すかどうかは、ご自身で決めてよいことです
過去の被害は、ご自身のプライバシーに深く関わる事柄です。交際相手であっても、すべてを打ち明けなければならない法的な義務はありません。被害を思い出して話すこと自体が負担になる場合もありますから、気持ちの準備が整わないうちに無理をする必要はないと考えます。
ただし、被害がまだ続いている場合や、加害者が新しい交際相手の存在に気づいている可能性がある場合は、事情が少し変わります。話すかどうかは「話したいか」だけでなく、「相手の安全のために知っておいてもらう必要があるか」という観点からも考えておくとよいでしょう。
話しておいたほうがよい場面
ストーカー規制法は、つきまとい等の対象を被害者本人に限っていません。同法2条1項は、本人のほか、その配偶者や親族、さらに「社会生活において密接な関係を有する者」に対する行為も規制の対象としています。警察の資料でも、この密接関係者の例として交際相手が挙げられています。つまり、新しい交際相手が加害者の行動の矛先になることは、法律上も想定されているといえます。
次のような事情がある場合は、少なくとも概要を伝えておくことを検討してよいでしょう。
- 加害者からの接触が今も続いていること、または最近まで続いていたこと。
- 自宅や勤務先、よく行く場所を加害者に知られていること。
- SNSなどを通じて、加害者が新しい交際相手の存在に気づいているおそれがあること。
- 新しい交際相手と自宅を行き来していること、または同居や結婚を考えていること。
- 加害者の釈放や警告の期限など、状況が変わる時期が近づいていること。
交際相手のもとに加害者が連絡してくるおそれがある場合の対応は、【男女トラブル】元恋人が新しい交際相手に連絡してくる|止めるための段階と、二人での動き方で詳しく解説しています。また、交際相手の側が元恋人からつきまとわれる場面については、【ストーカートラブル】交際相手の元恋人からつきまとわれている|ストーカー規制法と迷惑防止条例の分かれ目もあわせてご覧ください。
交際の段階ごとに伝える範囲の目安
一度にすべてを話す必要はありません。交際の深まりや、相手と共有する生活の範囲に合わせて、少しずつ伝える内容を広げていく方法もあります。以下は一つの目安です。
| 交際の段階 | 伝える内容の例 | まだ伝えなくてもよいことの例 |
|---|---|---|
| 交際を始めた頃 | 過去に被害があったこと、今は落ち着いているか続いているか、SNSへの投稿で気をつけてほしいこと | 加害者の氏名、被害の詳しい経緯 |
| 自宅を行き来するようになった頃 | 加害者の外見や車など見分けるための特徴、不審な人や連絡に気づいたときの知らせ方 | 示談の金額など手続の細かな内容 |
| 同居や結婚を考える頃 | 住所を知られないための手続の状況、警察や弁護士とのやり取りの現状、今後の見通し | ご自身が話したくないと感じる部分 |
この表はあくまで例です。被害が今も続いているなら、交際の初期であっても、加害者を見分ける特徴や連絡の方法は早めに共有しておくほうが安心です。反対に、被害が数年前に終わっていて接触の兆しもない場合は、「昔、そういうことがあった」と伝える程度にとどめる選択もあると思います。
話す前に確認しておきたい法律上の点
被害のことを話す前に、いくつか確認しておくと後のトラブルを避けやすくなる点があります。
示談書に口外を禁じる条項がないか
加害者と示談をしている場合、示談書に「本件について第三者に口外しない」といった条項が入っていることがあります。こうした条項は、示談の金額や条件を対象にしていることが多く、被害に遭った事実を身近な人に伝えることまで禁じているとは限りません。ただ、書き方は示談書によって異なるため、話す前に条項の範囲を確かめておくと安心です。判断に迷うときは、示談を担当した弁護士に確認するのがよいでしょう。示談の条件の考え方は、【ストーカートラブル】示談に入れる条件|接触禁止・転居・違約金で解説しています。
加害者の情報をどこまで伝えるか
新しい交際相手に事情を伝えることは、身を守るための自然な行動です。もっとも、加害者の氏名や勤務先などを伝える場合は、事実をそのまま伝えることを心がけ、推測や評価を交えすぎないようにしておくと無用な争いを避けやすくなります。名誉毀損は「公然と」事実を示した場合に問題となりますが、少人数への話でも、そこから広く伝わるおそれがあれば問題になりうるとする考え方があります。交際相手が善意から周囲に話したり、SNSに書き込んだりしないよう、伝えた内容は二人の間にとどめてほしいとお願いしておくとよいでしょう。
住所を知られないための手続と同居・結婚
ストーカー被害を受けた方は、市区町村に申し出ることで、住民票の写しなどの交付を制限してもらう支援措置を受けられる場合があります。新しい交際相手と同居したり結婚したりすると、住所や氏が変わり、手続の追加や見直しが必要になることがあります。相手にも関わる手続になる場合があるため、同居や結婚を考える段階では、制度を利用していることを伝えておくほうが進めやすいでしょう。手続の順序については、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序をご参照ください。
新しい交際相手に頼まないほうがよいこと
事情を知った交際相手が「自分が話をつけてくる」と申し出てくれることがあります。気持ちはありがたいものですが、交際相手が加害者に直接接触すると、加害者が交際相手を逆恨みし、危害が交際相手に向かうおそれがあると指摘されています。また、接触の仕方によっては、交際相手自身の行動が問題とされてしまうこともあります。
頼まないほうがよいことと、頼みやすいことを整理すると、次のようになります。
- 加害者に直接連絡を取ったり、会いに行ったりすること(頼まないほうがよいこと)。
- 加害者の自宅や勤務先を見に行くこと(頼まないほうがよいこと)。
- 加害者のSNSに書き込みや反論をすること(頼まないほうがよいこと)。
- 帰宅時の送迎や、外出時に一緒にいること(頼みやすいこと)。
- 不審な人物や連絡に気づいたときに知らせてもらうこと(頼みやすいこと)。
- 警察への相談に付き添ってもらうこと(頼みやすいこと)。
交際相手が見聞きしたことは、後に警察へ相談するときの記録としても役立つことがあります。いつ、どこで、何があったかを、その都度メモしてもらうよう頼んでおくとよいでしょう。
話した後に交際相手が不安を感じたとき
事情を聞いた交際相手が、自分の身の安全や今後のことに不安を感じるのは自然なことです。その不安をご自身ひとりで受け止めようとせず、専門の窓口を一緒に使うことを考えてみてください。
交際相手自身が加害者からの接触を受けた場合には、交際相手の立場で警察に相談することもできます。加害者の釈放や処分の時期が気になる場合には、被害者等通知制度を利用して情報を得られることがあります。詳しくは【ストーカートラブル】被害者等通知制度を使う|相手の処分や出所の時期を知るをご覧ください。
また、弁護士が代理人として加害者との窓口になれば、ご本人や交際相手が加害者と直接やり取りする場面を減らすことにつながります。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で解説しています。
まだ誰にも話せずにいる場合
交際相手だけでなく、家族や友人にも被害のことを話せずにいる方もいらっしゃいます。身近な人に話す前に、まず専門家に事情を整理してもらうことで、誰に何を伝えればよいかが見えてくることもあります。一人で相談に行くときの準備は、【ストーカートラブル】被害を家族に言えない|一人で相談に行くときの準備にまとめています。
まとめ
- 過去の被害を交際相手に話す法的な義務はなく、話すかどうかはご自身で決めてよいことです。
- 被害が続いている場合や加害者に交際相手の存在を知られているおそれがある場合は、相手の安全のために概要を伝えることを検討するとよいでしょう。
- 伝える範囲は、交際の段階や共有する生活の範囲に合わせて少しずつ広げる方法があります。
- 示談書の口外禁止条項や、住所を知られないための手続など、話す前に確認しておきたい点があります。
- 交際相手に加害者と直接接触してもらうことは避け、送迎や記録など安全につながる協力をお願いするのがよいでしょう。
新しい交際は、被害から前に進むための大切な一歩でもあります。話すべきかどうか、どこまで伝えるかに迷ったときは、ご自身と交際相手の双方の安全を守る方法を、一緒に考えるところからお手伝いします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


