W不倫(ダブル不倫)の慰謝料|相殺・求償・関係整理の考え方
この記事は、結婚や内縁の関係にない交際相手と副業を始めた場合を前提にしています。夫婦や内縁の場合は、財産分与など別の考え方が加わります。
ネットショップ、ハンドメイド品の販売、動画配信、SNSの運用代行など、交際相手と二人で副業を始める方は少なくありません。うまく回っているうちは売上の分け方を細かく決めていなくても困りませんが、別れることになると、口座に残った売上、在庫や機材、アカウントの扱いをめぐって話がまとまらなくなることがあります。
この記事では、恋人と一緒に始めた副業の収益を別れた後にどう整理するか、まず確かめたい点と、話し合いで決めておきたい項目を順に解説します。
恋人どうしには「財産分与」の仕組みがない
夫婦が離婚するときは、婚姻中に二人で築いた財産を分ける財産分与の制度があります(民法768条)。内縁の関係でも、これに近い扱いが認められることがあります。
これに対して、結婚も内縁もしていない交際関係には、別れたときに財産を分け合うための決まった制度がありません。そのため、副業の収益をどう分けるかは、二人がどんな約束で副業を始め、誰の名義で、誰がお金と労力をどれだけ出したかという個別の事情から考えることになります。交際していたこと自体から「半分ずつ」が当然に導かれるわけではない点に注意が必要です。
まず確かめたい三つの点
事業は誰の名義で運営されていたか
販売サイトや配信プラットフォームのアカウント、売上の振込先口座、開業届や確定申告を誰の名義でしていたかを確認します。プラットフォームとの契約上は、名義人に売上が支払われるのが通常です。ただし、名義はあくまで出発点であり、名義人がすべてを受け取ってよいとは限りません。二人の間の約束によっては、名義人が相手に分配すべき金額を負っていると考えられる場合があります。
二人の間にどんな約束があったか
「利益は半分ずつにしよう」「仕入れ代を出した分は先に返す」といった約束は、書面がなく口頭やLINEでのやり取りだけでも、契約として成立していることがあります。問題になりやすいのは、約束があったかどうか、その中身がどうだったかを後から示せるかどうかです。当時のメッセージや、実際に分配していた振込の記録が手がかりになります。
お金と労力をどう出し合ったか
仕入れ代、機材費、広告費などの資金を誰が負担したか、撮影や編集、梱包や発送、顧客対応などの作業を誰が担っていたかも整理しておきます。どちらがどれだけ出したかは、分け方を考えるうえで重要な事情になります。
関係の性質によって考え方が変わる
同じ「二人でやっていた副業」でも、法的な見方はいくつかに分かれます。どれにあたるかは事情によって異なり、一つの副業に複数の要素が混ざっていることもあります。
| 関係の見方 | 典型的な場面 | 別れた後の考え方 |
|---|---|---|
| 共同事業(民法上の組合) | 二人がそれぞれ出資し、共同で事業を営んで利益を分けると約束していた | 脱退や解散に準じて、残った財産や持分を清算する余地がある |
| 一方の事業を手伝った | 名義人が主体で、相手は報酬の約束なく作業を手伝っていた | 収益は名義人に帰属するのが原則。報酬の約束があれば、未払い分を請求できる余地がある |
| 作業ごとの報酬制 | 編集1本いくら、発送1件いくらと決めて作業を頼んでいた | 約束した報酬が支払われているかの問題として整理する |
| 資金の援助・貸付 | 一方が資金を出しただけで、事業には関わっていなかった | 見返りの約束がなければ返還を求めるのは難しいことが多い。貸したお金であれば返還を求められる |
民法は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約束する契約を「組合契約」と定めています(民法667条)。組合にあたる場合、利益や損失の分け方を決めていなければ出資の割合に応じて分けるとされ(民法674条1項)、脱退した人には持分を金銭で払い戻すことができるとされています(民法681条)。解散した後に残った財産も、出資の割合に応じて分けるのが基本です(民法688条3項)。
もっとも、交際中の「一緒にやろう」という会話だけで、直ちに組合契約が成立していたとまでいえるとは限りません。出資の有無や、利益を分け合う約束がどこまで具体的だったかなどから判断されます。
別れる時点で整理しておきたいもの
清算の話し合いに入る前に、副業に関わるものを一通り洗い出しておくと、話が具体的になります。
- 売上の入金先口座と、別れる時点の残高。
- プラットフォームに保留されている、まだ入金されていない売上。
- 在庫、機材、制作した作品やデータ。
- 立て替えた経費と、これから支払う予定の費用(仕入れ代、サーバー代、広告費など)。
- アカウント、屋号、ドメイン、顧客や取引先の連絡先。
- 受注済みで対応が終わっていない注文や取引。
- これまで誰の所得として確定申告をしていたか。
確定申告の扱いは、収益が誰のものだったかを考えるときの手がかりの一つになりますが、税務上の申告と二人の間の取り分は必ずしも一致しません。清算に伴って申告の修正などが必要になるかどうかは、税理士に確認しておくと安心です。
交際期間や交際中の金銭のやり取り全体との関係については、【男女トラブル】交際期間の長さは金銭の清算に影響するのかもあわせてご覧ください。
話し合いで決めておきたい項目
別れた後も売上の入金や注文が続く副業では、「いつの時点までの分を、どう分けるか」を決めておかないと、後から追加の請求が出てくることがあります。話し合いでは次のような項目を確認しておくとよいでしょう。
- 清算の基準日(いつまでの売上と経費を対象にするか)。
- 売上と経費の精算方法と、支払う金額・支払時期。
- 在庫や機材を誰が引き取るか。
- アカウントや屋号を今後どちらが使うか、または閉鎖するか、名義変更の手続を誰がするか。
- 基準日より後の売上や費用を誰のものとするか。
- 今後の連絡の方法と範囲。
- この合意のほかに互いに請求するものはないことの確認。
まとまった内容は、合意書として書面に残しておくのが望ましいといえます。書面の効力については【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で、口頭で決めてしまった後の対応は【男女トラブル】口約束で別れの条件を決めてしまった|後から書面にする方法で解説しています。
よくある行き違い
相手にアカウントのパスワードを変えられた
共同で運営していたアカウントから締め出されると、売上の状況すら確認できなくなります。かといって、相手が管理しているアカウントに無断でログインすることは、不正アクセス禁止法に触れるおそれがあるため避けるべきです。まずは売上の明細や残高の開示を求め、話し合いの材料をそろえるところから始めます。別れる前のパスワードの扱いについては【男女トラブル】相手がSNSのパスワードを知っている|別れる前に切り替える順序も参考になります。
売上を相手が先に引き出していた
共同で管理していた売上を一方が引き出していた場合、約束していた取り分を超える部分については、返還を求められることがあります。どの時点の残高から、誰がいくら引き出したかを、通帳や入出金の履歴で確認しておくことが大切です。
「手伝った分を払ってほしい」と言われた
交際中に無償で手伝ってもらっていた作業について、別れた後に報酬を求められることがあります。報酬の約束がなかった場合、後からまとめて支払う義務があるとは言いにくいことが多いですが、実際には作業の量や約束の有無についての認識が食い違いやすい場面です。当時のやり取りを確かめたうえで、清算全体の中で調整する方法も考えられます。
赤字や借入れが残っている
利益だけでなく、損失や借入れの負担も問題になります。借入れや支払いの契約をした名義人は、取引の相手方に対して支払う責任を負うのが原則です。そのうえで、二人の間で負担を分ける約束があれば、相手に負担分を求められる余地があります。
記録として残しておきたいもの
話し合いでも、その後の手続でも、約束の内容と実際のお金の流れを示せるかどうかが重要になります。
- 副業を始めたときや、利益の分け方について話したメッセージ。
- 売上の入金履歴、相手への分配や立替えの振込記録。
- 仕入れや機材購入の領収書、カード明細。
- プラットフォームの売上管理画面のスクリーンショット。
- 作業の分担がわかる記録(制作データ、作業のやり取り、発送記録など)。
証拠の残し方の基本は男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするでまとめています。
よくあるご質問
副業の収益を、離婚のときのように財産分与として請求できますか
結婚も内縁もしていない交際関係では、財産分与の制度は使えません。二人の間の約束や、出資・作業の分担に基づいて、分配や清算を求めることになります。
二人で育てたチャンネルやアカウントは、どちらのものになりますか
プラットフォームとの契約上は、アカウントの名義人が利用者として扱われるのが通常です。そのうえで、二人の間では、アカウントを引き継ぐ側が相手に一定の金額を支払うといった形で調整することも考えられます。別れた後、それぞれが似た屋号で活動する場合は、取引先や購入者が混同しないような取り決めもしておくと後の行き違いを防ぎやすくなります。
利益の分け方を口頭でしか決めていませんでした
口頭の約束でも、契約として成立していることはあります。実際に毎月その割合で分配していた振込記録や、分け方に触れたメッセージがあれば、約束の内容を示す手がかりになります。
話し合いが進まないときは
交際の終わりと副業の清算が重なると、お金の話に感情的な対立が入り込み、当事者どうしでは話が進まないことがあります。相手が話し合いに応じない場合の進め方は【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法で解説しています。
弁護士が窓口になれば、売上や経費の資料の開示を求め、清算の基準日や分け方を整理したうえで、合意書の作成まで進めることができます。相手と直接やり取りせずに関係を終えたい場合は、【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるもご覧ください。当事務所が交際関係の解消に伴うトラブルにどう対応しているかは、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご紹介しています。
恋人と始めた副業は、名義、約束、お金と労力の出し方が人によって大きく異なり、分け方に決まった答えがあるわけではありません。手元にある記録を整理し、どこまでが清算の対象になるのかを確かめるところから始めることが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


