【解決事例】元交際相手から遊興費の返還を求められ4年近く毎月15万円を支払っていた女性|弁護士の通告で支払いと接触が止まった事例
別れ話がこじれ、同棲していた相手を部屋に入れないようにしたい、鍵を替えてしまおうか、と考える方は少なくありません。自分が契約者や所有者であれば、なおさら「自分の部屋なのだから問題ないはず」と感じるかもしれません。
この記事は、婚姻していない交際相手と同棲していた部屋について、どちらか一方が賃貸借契約の名義人や所有者になっている場面を想定しています。婚姻中の夫婦の場合や、共有名義の不動産の場合は、扱いが異なる点があります。
結論から言うと、名義人であっても、同棲相手を一方的に締め出すことは、後で法的な問題を生じさせるおそれがあります。この記事では、締め出しがなぜ問題になりうるのか、どのような責任が生じる可能性があるのか、そして相手に出ていってもらうためにどのような順序で進めればよいのかを整理します。
「締め出し」といっても場面はさまざま
一口に締め出しといっても、実際の場面にはいくつかの形があります。
- 名義人である自分が、相手の不在中に鍵を替えて部屋に入れないようにする。
- 相手が外出したすきにドアチェーンをかけ、帰ってきても開けない。
- 相手の荷物をまとめて玄関の外や実家に送り、合鍵を取り上げる。
- 名義人ではない自分が、名義人である相手を一時的に部屋に入れない。
どの形でも、相手がその部屋を生活の拠点にしていた以上、「住んでいる人を住まいから出す」という点で共通しています。以下では、主に名義人が締め出す場面を中心に、名義人でない側の場面にも触れながら見ていきます。
名義人でも、締め出しが問題になりうる理由
同棲相手にも、その部屋に住む根拠がある
同棲相手は、名義人の了解を得てその部屋に住み始めているのが通常です。家賃を受け取らずに住まわせていた場合は、法律上は「使用貸借」(無償で物を貸す契約)に近い関係と考えられることがあります。家賃や生活費を分担していた場合には、二人で暮らすための何らかの合意があったと評価されることもあります。
使用貸借であれば、期間や目的の定め方によって、貸した側から契約を終わらせることができる場面があります(民法597条・598条)。別れたことで、交際を前提とした使用の目的が終わったと考えられる余地もあります。ただし、契約が終わったと言えることと、相手を実力で部屋から出してよいことは別の問題です。
「自力救済」は原則として認められていない
日本の法律では、自分に権利があると考える場合でも、裁判などの手続によらず自分の力で権利を実現する「自力救済」は、原則として許されていません。たとえ相手に部屋を使う権利がなくなっていたとしても、出ていってもらうには、話し合いで合意するか、裁判所の手続を経る必要があるとされています。
家主が家賃を滞納した借主の部屋の鍵を替えたり、荷物を運び出したりした事案で、家主の側に損害賠償を命じた裁判例もあります。交際相手との間でも、考え方の基本は同じです。
相手の「占有」も法律で守られている
民法には、実際にその物を支配している状態(占有)を奪われた人が、その回復を求めることができる仕組みがあります(民法200条)。同棲相手が日常的にその部屋で暮らしていた場合、鍵を替えて締め出すことは、相手の占有を奪ったと評価されるおそれがあります。この請求は、奪われた時から1年以内に行うものとされています(民法201条3項)。
締め出したことで生じうる問題
締め出しそのものが直ちに犯罪になる場面は多くないと考えられますが、締め出しにともなう行為によっては、民事・刑事の両面で問題になることがあります。
| 行為 | 問題になりうる点 |
|---|---|
| 鍵を替えて部屋に入れない | 自力救済として、損害賠償を求められるおそれ |
| 相手の荷物を捨てる・売る | 器物損壊罪や横領罪などに問われるおそれ、損害賠償の対象 |
| 荷物を返さずに手元に置き続ける | 返還や損害賠償を求められるおそれ |
| 押し出す、腕をつかむなどして追い出す | 暴行罪・傷害罪に問われるおそれ |
| 「出ていかないと〇〇する」と迫る | 内容によっては脅迫罪・強要罪に問われるおそれ |
| 賃貸の部屋の鍵を無断で替える | 賃貸借契約上の義務違反として、家主との間で問題になるおそれ |
損害賠償として求められる内容には、締め出された期間のホテル代や仮住まいの費用、使えなくなった荷物の価値、精神的な苦痛に対する慰謝料などが考えられます。どの程度認められるかは、締め出しに至った経緯や期間、相手の生活への影響などによって変わります。
また、賃貸の部屋では、鍵の交換に管理会社や家主の承諾が必要とされていることが多くあります。名義人であっても、契約の内容を確認しないまま鍵を替えると、家主との関係で別の問題を抱えることになりかねません。
名義人ではない側が締め出した場合
反対に、部屋の名義人ではない側が、名義人である相手を締め出す場面もあります。たとえば、相手の外出中にチェーンをかけ、帰ってきても入れないようにしたというケースです。
この場合、締め出された名義人には、その部屋を使う権利がはっきりとあります。名義人ではない側には、名義人の了解のうえで住んでいたという立場しかないため、締め出しが問題とされる程度は、名義人が締め出す場合よりも大きくなる可能性があります。相手がチェーンを壊して入った場合でも、その修理費の負担をめぐって争いが生じることがあり、関係の清算がかえって難しくなることもあります。
相手名義の部屋に住み続けたい事情がある場合は、締め出しという形ではなく、退去までの期間や条件を話し合う方向で考えるほうが、結果的に自分の立場を守ることにつながります。この点は【男女トラブル】相手名義の部屋に住んでいる|別れた後も住み続けられるかでも解説しています。
身の危険があるときは、別に考える
相手から暴力を受けている、または受けるおそれがある場面では、ここまでの話とは分けて考える必要があります。身を守るために一時的に鍵やチェーンをかけて相手を入れないことは、退去を迫るための締め出しとは性質が異なります。危険を感じたときは、ためらわずに110番通報をしてください。
生活の本拠をともにする交際相手からの暴力については、配偶者暴力防止法(DV防止法)の対象になり、裁判所に保護命令を申し立てられる場合があります。保護命令には、相手に一定期間、住まいから退去するよう命じる内容も含まれます。詳しくは交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応をご覧ください。
また、相手を出ていかせることにこだわらず、まず自分が安全な場所へ移るという選択肢もあります。住まいの問題は、安全を確保した後に、代理人を通じて整理することができます。
相手に出ていってもらうための順序
締め出しではなく、相手に自ら退去してもらうためには、次のような順序で進めるのが一般的です。
- 別れることと、部屋を出てほしいことをはっきり伝え、退去の期限を話し合う。
- 期限や荷物の運び出し方、合鍵の返却、費用の分担などを、書面やメッセージで残る形にまとめる。
- 話し合いが進まない場合は、内容証明郵便などで、使用の許可を終わらせることと退去の期限を通知する。
- それでも退去しない場合は、建物の明渡しを求める訴訟を起こし、判決にもとづいて強制執行を申し立てる。
訴訟から強制執行までには、相応の時間と費用がかかります。そのため実際には、引越し費用の一部を負担する、退去の期限に一定の余裕をもたせるといった条件を示し、話し合いで退去してもらうほうが早く終わることも少なくありません。
賃貸の部屋であれば、名義人として管理会社に事情を伝えておくことも考えられます。ただし、契約を解約した場合でも、相手が部屋に残っていれば、家主の側も法的な手続を経なければ明渡しを実現できない点は変わりません。相手が出ていかない場面の詳しい対応は【男女トラブル】同棲していた部屋から相手が出ていかない|名義を貸した側にできることで解説しています。
すでに締め出してしまった場合
感情的になって、すでに鍵を替えたりチェーンをかけたりしてしまったという方もいるかもしれません。その場合でも、次の点を意識することで、問題が大きくなることを抑えられる可能性があります。
- 相手の荷物は捨てたり売ったりせず、そのまま保管しておく。
- 荷物の受け渡しや、相手が一時的に部屋に入る日時について、相手と連絡が取れる手段を残しておく。
- 締め出しに至った経緯(別れ話の内容、相手の言動、家賃の負担状況など)を、時系列でメモにしておく。
- 相手が仮住まいを強いられている場合は、その期間をできるだけ長引かせない方法を考える。
荷物の扱いについては【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかを、合鍵の回収や鍵の交換については【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断もあわせてご覧ください。
相手から「警察に行く」「訴える」などと言われている場合は、相手と直接やり取りを続けるよりも、早めに弁護士を窓口にすることを検討してください。経緯によっては、締め出しをやめたうえで退去の条件を話し合うほうが、結果として負担が少なくなることもあります。
弁護士に相談することでできること
同棲の解消では、住まいの問題に加えて、家具や家電の分け方、立て替えた生活費、荷物の返還など、複数の問題が同時に起きやすいものです。当事者どうしで話すと感情的な対立が強まり、締め出しのような行動に至ってしまうこともあります。
弁護士が代理人として入ることで、次のような対応が考えられます。
- 相手との連絡窓口を弁護士に一本化し、直接顔を合わせずに話を進めます。
- 相手がその部屋に住む根拠がどの程度あるかを確認し、退去を求められる時期の見通しを立てます。
- 退去の期限や荷物の受け渡し、費用の分担などを合意書にまとめます。
- 話し合いで解決しない場合は、明渡しを求める法的手続を検討します。
当事務所でも、【解決事例】交際相手が自宅に住み着いて退去しない|弁護士介入の翌日に平穏な生活を取り戻した事例のように、同棲の解消にともなう退去の問題を扱っています。会わずに関係を終える流れについては【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるで紹介しています。
まとめ
- 名義人であっても、同棲相手を鍵の交換などで一方的に締め出すことは、自力救済として問題になるおそれがあります。
- 締め出しにともなって荷物を処分したり、力ずくで追い出したりすると、刑事責任を問われる可能性もあります。
- 暴力などで身の危険がある場合は、締め出しの問題とは分けて、警察への通報や保護命令を検討します。
- 相手に出ていってもらうには、話し合いで期限と条件を決め、まとまらなければ法的手続を経るのが基本的な流れです。
- すでに締め出してしまった場合でも、荷物を保管し、連絡手段を残すことで、問題の拡大を抑えられる可能性があります。
同棲していた部屋の問題は、別れ話の感情と生活の基盤が重なるため、つい急いで決着をつけたくなるものです。名義や家賃の負担状況、相手との関係によって取れる手段は変わりますので、鍵を替える前に、一度状況を整理してみることをおすすめします。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


