【男女トラブル】告白を断られた相手に、それまでのプレゼント代を請求できる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は2026年11月時点の法令をもとに、交際に至らなかった相手へ渡したプレゼントやお金を想定して解説しています。交際していた相手との清算については、別の記事で取り上げています。


告白に合わせて、あるいは告白までの間に、誕生日や記念日のたびに贈り物を重ねてきた。ところが思いを伝えたところ、交際は断られてしまった。こうした場面で「せめてプレゼント代だけでも返してほしい」と考える方は少なくありません。

 法律の考え方では、すでに相手に渡し終えたプレゼントは「贈与」として完了しており、告白を断られたことだけを理由に返還を求めるのは難しいのが原則です。ただ、お金を貸していた場合や、好意を利用して金品を求められていた場合など、事情によっては返還を求める道が残ることもあります。一方で、求め方によっては、請求した側がストーカー規制法などで問題にされるおそれもあります。本記事では、請求できる場面とできない場面の分かれ目と、求めるときに気をつけたい点を順に整理します。

渡し終えたプレゼントは、原則として返還を求めにくい

 プレゼントを贈ることは、法律上は「贈与」という契約にあたります。贈与は、一方が自分の財産を無償で相手に与える意思を示し、相手がそれを受け入れることで成立します(民法549条)。契約書を交わしていなくても、「これをあげる」「ありがとう」というやり取りがあれば、それだけで契約は成り立ちます。

 書面によらない贈与は各当事者が解除できるとされていますが、履行の終わった部分については解除できないと定められています(民法550条)。手渡した品物や、相手に届いた物は「履行の終わった部分」にあたるため、後から取りやめたいと考えても、法的に取り戻すのは難しいのが原則です。

 法律相談サイトにも、マッチングアプリや店で知り合った相手に贈り物をした後、交際に至らなかったことを理由に代金の支払いを求めたという相談が繰り返し寄せられています。こうした相談への弁護士の回答も、おおむねこの原則に沿ったものになっています。

状況ごとの見通し


渡したときの状況返還を求められる見込み主な根拠
品物を手渡した、または相手に届いた原則として難しい民法550条ただし書
贈ると約束したが、まだ渡していない書面がなければ約束を取りやめられる民法550条本文
「貸す」と伝えてお金を渡した返済を求められる民法587条(消費貸借)
好意を装った相手に求められて渡した取消しを主張できる余地がある民法96条1項(詐欺)


「告白を断られたこと」は返還の理由になるのか

 多くの方が気にされるのは、「付き合えると思って贈ったのだから、断られたなら返してもらえるのではないか」という点です。ここで分けて考えたいのが、贈った理由(動機)と、贈与に付けた条件の違いです。

好意を伝えるための贈り物は、条件付きとは扱われにくい

 「喜んでほしい」「好意を伝えたい」「いずれ交際できたら」という気持ちは、贈る側の動機です。動機は贈る人の内心にあるもので、相手との合意の内容になっていない限り、贈与の効力には影響しないと考えられています。告白が断られたことは、期待していた結果にならなかったということであり、それによって贈与が無効になったり、解除できるようになったりするわけではありません。

条件付きの贈与と認められるには

 これに対し、「交際しないのであれば返す」という条件が、贈る側と受け取る側の間で合意されていた場合は、条件付きの贈与として扱われる余地があります(民法127条)。ただし、そう扱われるためには、受け取る側もその条件を理解したうえで受け取ったことが必要です。贈る側が心の中でそう考えていただけでは足りず、やり取りの記録などから合意があったことを示す必要があります。

 実際には、告白前の贈り物に条件が明示されることはまれで、「付き合ってくれたらうれしい」といった言葉があったとしても、それだけで返還の条件と認められるとは限りません。また、交際するかどうかは本人の自由な意思に委ねられる事柄であるため、交際を贈り物の見返りとするような取り決めは、その効力自体が慎重に判断されると考えられます。

 なお、飲食店などで知り合った相手に贈った場合は、贈与にあたるのか、店でのサービスの対価にあたるのかという別の論点も加わります。この点は【風俗トラブル】キャストに贈った金品|贈与と対価の切り分けが争点になる理由で解説しています。

返還を求められる可能性がある場面

 原則は上のとおりですが、渡したものの性質や、渡すまでの経緯によっては、返還を求める道が残ることもあります。

お金を「貸した」と言える記録がある場合

 品物ではなくお金を渡していた場合、それが贈与だったのか貸付だったのかが分かれ目になります。「必ず返すので貸してほしい」と頼まれた、「来月返す」と約束されたといった記録があれば、消費貸借として返済を求めることが考えられます(民法587条)。借用書がなくても、LINEやメールのやり取り、振込の記録などが手がかりになることがあります。贈与と貸付の区別については別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違い、記録が少ない場合の考え方については恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?でも解説しています。

好意を利用して金品を求められていた場合

 相手に交際する気がないにもかかわらず、好意があるように装って高額な品物やお金を求めていた場合には、だまされて贈与したとして取消しを主張できる余地があります(民法96条1項)。もっとも、告白を断られたという結果だけで、だまされたと認められるわけではありません。相手の側から繰り返し金品を求めていたか、交際をほのめかす言葉と金品の要求が結びついていたかなど、具体的な事情の積み重ねが必要になります。病気や家族の事情などの話を信じてお金を渡していた場合の考え方は、【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後で扱っています。

まだ渡していない贈り物の約束

 「次の誕生日にバッグを贈る」と約束していたものの、まだ渡していない段階であれば、書面で約束していない限り、その約束を取りやめることができます(民法550条本文)。反対に、分割払いで購入した品物を贈った場合は、品物を渡し終えていれば贈与は完了しており、残りの支払いは購入した側の負担として残る点に注意が必要です。

相手が自分から返すと言っている場合

 法的な義務がなくても、相手が「受け取れないので返したい」と申し出ることはあります。その場合に受け取ること自体に問題はありません。受け取り方は、直接会うのではなく、郵送や共通の知人を通すなど、互いの負担が少ない形を選ぶと、後のトラブルを避けやすくなります。

 なお、告白の前から実質的に交際していたといえる関係で、生活費やプレゼント代を負担していた場合の清算については、交際中に立て替えた生活費・プレゼント代は返してもらえる?もあわせてご覧ください。

求め方によっては、請求した側が問題にされることがある

 返還を求めること自体は、根拠があれば正当な権利の行使です。ただ、告白を断られた後の請求は、受け取った側から見ると「断ったことへの仕返し」と受け止められやすく、求め方によっては請求した側の行為が問題にされるおそれがあります。

ストーカー規制法との関係

 ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行うつきまとい等を規制しています(同法2条1項)。この「つきまとい等」には、義務のないことを行うよう要求することや、拒まれているのに電話やメッセージを続けて送ることも含まれます。

 告白を断られた後に、プレゼント代の支払いを求めるメッセージを何度も送ったり、相手の自宅や勤務先に出向いて返還を迫ったりすると、本人は清算のつもりでも、好意が受け入れられなかったことへの不満から出た行為と見られる可能性があります。その結果、警察から警告を受けたり、繰り返しの程度によっては刑事手続の対象になったりすることもあります。正当な用件のつもりでも問題になる場面については【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面、メッセージを送り続けた場合の扱いについてはしつこいDM・メッセージを送った|脅迫とストーカー規制法の重なりで詳しく扱っています。

脅すような言い方や、ネットへの書き込みは避ける

 「返さなければ職場に言う」「家族に知らせる」といった言葉を添えて支払いを求めると、脅迫罪や恐喝罪に問われるおそれがあります。また、相手が特定できる形で経緯をSNSに書き込むと、名誉毀損やプライバシーの侵害として、反対に損害賠償を求められる原因にもなり得ます。法的手続を取る可能性を伝えることと、脅迫にあたる告知との境目は、「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線で解説しています。

返還を求める際の言動問題にされるおそれ
断られた後に何度もメッセージを送るストーカー規制法のつきまとい等
自宅や勤務先で待ち伏せて返還を迫るストーカー規制法のつきまとい等
「返さないと職場や家族に知らせる」と伝える脅迫罪・恐喝罪
相手が分かる形で経緯をSNSに書き込む名誉毀損・プライバシー侵害


それでも返還を求めたいときの進め方

 お金を貸していた、だまされたと考える具体的な事情があるなど、返還を求める根拠がある場合でも、進め方には順序があります。

  1. 渡した品物やお金を一覧にし、日付・金額・渡した経緯を書き出します。
  2. 「贈った」のか「貸した」のかが分かるやり取りを、LINEやメール、振込の記録から集めます。
  3. 返還を求める根拠がある分と、好意から贈った分とを分け、根拠のある分に絞ります。
  4. 連絡は一度の書面にまとめ、返還を求める対象・方法・期限を簡潔に伝えます。
  5. 応じてもらえない場合は、連絡を重ねずに、法的な手続を使うか、請求をやめるかを判断します。


 60万円以下の金銭の支払いを求める場合には、原則として1回の審理で判決が出る少額訴訟という手続もあります(民事訴訟法368条1項)。ただし、相手の住所が分からなければ訴えを起こすことは難しく、手続にかかる時間や費用、相手と裁判の場で向き合う負担もあります。請求額との見合いを考えて判断することが大切です。

 当事者どうしで直接やり取りをすると、感情がぶつかりやすく、意図しない言葉が問題を大きくすることもあります。弁護士が代理人として連絡すれば、請求の根拠を整理したうえで一度の書面で伝えることができ、相手とのやり取りを本人から切り離すこともできます。そもそも返還を求めるべきかどうかの見極めを含めて、早めに専門家の意見を聞くことも一つの方法です。

気持ちの区切りと、法的な清算を分けて考える

 告白を断られた後に、贈ってきたものを取り戻したいと感じるのは、気持ちに区切りをつけたいという思いの表れでもあります。ただ、法律が扱えるのは、渡したものが贈与だったのか貸付だったのか、相手にだまされた事情があったのかといった点であり、断られたこと自体を埋め合わせる仕組みはありません。気持ちの整理と法的な清算を分けて考えることが、結果として自分自身を守ることにもつながります。返還を求める根拠があるのか、求めるとしたらどのような方法が安全かを確かめたい場合は、一度ご相談ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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