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「別れることになったが、同棲していた部屋の家賃が数か月分たまっている」「相手が払うはずだった分を、契約者の自分が請求されている」。同棲を解消する場面では、こうした滞納家賃の負担をめぐるご相談が寄せられます。気持ちの整理がつかないうちに、管理会社や保証会社からの督促が届くことも少なくありません。
この記事は、2020年4月に施行された改正民法を前提に、同棲を解消する場面での滞納家賃の負担を一般的な考え方として整理したものです。実際の負担は、賃貸借契約書の内容、二人の間の約束、支払の記録などによって変わります。
まず「大家に対して」と「二人の間で」を分けて考える
滞納家賃を誰が払うのかという問いには、実は二つの問題が含まれています。一つは、大家や管理会社に対して誰が支払義務を負うのかという問題です。もう一つは、いったん誰かが支払った後、その負担を二人の間でどう分けるのかという問題です。
前者は賃貸借契約の内容で決まり、後者は二人の間の約束や同棲中の支払の実態で決まります。「家賃は折半と決めていたのだから、相手の分は相手が大家に払うべきだ」と考えたくなる場面もありますが、二人の間の約束は、原則として大家に対する支払義務を変えるものではありません。この二つを分けて整理すると、次に何をすべきかが見えやすくなります。
大家・管理会社に対して誰が払うのか
契約者(名義人)が一人の場合
賃貸借契約を結んでいるのが一方だけであれば、大家に対して家賃を支払う義務を負うのは、原則としてその名義人です(民法601条)。もう一方が実際に住んでいて家賃の一部を負担していたとしても、契約の当事者でなければ、大家から直接請求されることは通常ありません。
そのため、相手が自分の分を払わないまま出ていった場合でも、名義人は大家に対して全額の支払を求められます。名義人の立場では、まず大家への滞納をこれ以上増やさないことを優先し、相手への請求は別の問題として進めるのが現実的です。
二人の連名で契約している場合
二人がともに契約者になっている場合、家賃は二人で半分ずつ払えばよいとは限りません。共同で借りた部屋の家賃については、それぞれが全額の支払義務を負うと考えるのが判例上の一般的な理解です。大家はどちらに対しても全額を請求できるため、一方が払わなければ、もう一方に請求が向かうことがあります。
連帯保証人・保証会社がついている場合
連帯保証人がいる場合、名義人が滞納すると、大家は連帯保証人にも支払を求めることができます。保証人が親族であれば、交際していた相手の事情とは関係なく、家族に請求が届く可能性があります。なお、2020年4月以降に結ばれた個人の保証契約では、保証の上限額(極度額)の定めが必要とされており(民法465条の2)、契約書にその記載があるかは確認しておきたい点です。
保証会社がついている場合は、保証会社が大家に立て替えて支払い(代位弁済)、その後、保証会社から名義人に支払を求める流れが一般的です。督促の相手が大家から保証会社に変わるだけで、名義人の支払義務がなくなるわけではありません。
| 契約の形 | 大家に対して払う人 | 二人の間の約束の影響 |
|---|---|---|
| 一方の単独名義 | 名義人 | 大家との関係では原則として影響しない |
| 二人の連名 | それぞれが全額について | 大家との関係では原則として影響しない |
| 連帯保証人あり | 名義人と連帯保証人 | 保証人が払った分は名義人に求められる |
| 保証会社あり | 名義人(保証会社が立て替えた後は保証会社へ) | 立て替え後も名義人の義務は残る |
二人の間ではどう分けるのか
折半などの約束があった場合
「家賃は半分ずつ」「相手が毎月○万円を振り込む」といった約束があれば、その約束に沿って負担を分けるのが基本です。口約束でも合意としては成り立ちますが、後から争いになったときには、約束の内容を示す材料が求められます。LINEのやり取り、毎月の振込の記録、家計簿などが残っていれば、約束の存在や金額を説明しやすくなります。
名義人が相手の分まで大家に払った場合、約束に基づいて相手に支払を求めることが考えられます。反対に、名義人でない側から見ると、約束していた自分の負担分については、名義人から請求を受ける可能性があります。
約束がはっきりしない場合
負担の取り決めがないまま、一方が家賃を払い続けていたというケースも少なくありません。この場合、交際中に任意で負担していた家賃は、後から返すことを前提とした立替えとは見られにくいことがあります。弁護士ドットコムなどの相談でも、「払ってとも貸してとも言っていないのに、別れた後に過去の家賃を請求された」という声が見られます。
どこまで請求できるかは、同棲に至った経緯、生活費全体の分担、別れ際のやり取りなどを踏まえて個別に判断されます。家賃だけを取り出すのではなく、生活費全体の流れを確認しておくと整理しやすくなります。
別れた後も相手が住み続けていた期間
同棲を解消した後、名義人が先に部屋を出て、相手だけが住み続けるというケースもあります。この期間の家賃を名義人が払っていた場合、相手が部屋を使っていた対価として、名義人から相手に支払を求めることが考えられます。ただし、住み続けることを名義人が認めていたか、家賃の扱いをどう話していたかによって、結論は変わります。
相手も初期費用や家具・家電を負担していた場合
家賃の未払い分を請求すると、相手から「入居時の初期費用は自分が出した」「家具や家電は自分が買ってきた」と反論されることがあります。同棲中の費用は家賃だけで成り立っているわけではないため、相手が負担していた費用を差し引いて考えるべきだという主張にも、一定の理由がある場合があります。
こうした場面では、家賃の滞納分だけで話を進めるよりも、初期費用、家具・家電、光熱費などを一覧にして、誰が何をどれだけ負担したかを並べてみると、互いに受け入れやすい着地点を探しやすくなります。
滞納を放置したときに起こりうること
二人の間で負担の話がまとまらないうちに、滞納が続いてしまうこともあります。滞納を放置すると、次のようなことが起こるおそれがあります。
- 遅延損害金が加わり、支払額が増えていくことがあります。
- 滞納が続くと、賃貸借契約の解除や明渡しを求められることがあります。
- 連帯保証人である家族に請求が届くことがあります。
- 保証会社の利用歴が残り、次の部屋を借りる際の審査に影響することがあります。
相手との話し合いが長引きそうな場合でも、名義人としては、大家や管理会社に事情を伝え、支払方法を相談しておくことが、選べる手立てを残すことにつながります。
同棲を解消するときに整理しておきたいこと
- 賃貸借契約書で、契約者・連帯保証人・保証会社の有無を確認する。
- 滞納している月と金額を、管理会社の通知や引き落としの記録で確定させる。
- 同棲中の家賃の分担について、約束の内容と支払の記録を集める。
- 誰がいつ退去するのか、解約の手続を誰が行うのかを決める。
- 滞納分と退去費用の負担割合、支払期限、支払方法を取り決める。
取り決めは書面に残す
負担の分け方が決まったら、合意書などの書面に残しておくことをおすすめします。金額、支払期限、分割の有無、支払が遅れた場合の扱いに加え、ほかに請求し合わないことを確認する条項(清算条項)を入れておくと、後から別の費用を持ち出される事態を防ぎやすくなります。敷金や原状回復費用も同じ時期に問題になりやすいため、まとめて整理しておくと手戻りが少なくなります。
よくあるご質問
名義人ではない自分に、大家から請求が来ることはありますか
契約の当事者でも連帯保証人でもなければ、大家から直接請求されることは通常ありません。ただし、契約書に同居人として記載されている場合や、保証会社との間で何らかの書面に署名している場合には、その内容を確認する必要があります。
相手が払うと約束した滞納分を払わないまま、連絡が取れなくなりました
大家への支払は名義人として先に検討しつつ、相手への請求は、約束の記録をもとに書面での請求や、60万円以下であれば少額訴訟といった手続を検討することになります。相手の住所が分からない場合には、調べ方から考える必要があります。
何年も前の同棲中の家賃を、今になって請求されました
約束に基づく請求であっても、権利を行使できると知った時から5年が経過すると、時効が問題になることがあります(民法166条)。ただし、途中で支払や承認をしていると時効の進み方が変わるため、請求の根拠と時期を確認したうえで対応を考えることが大切です。
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滞納家賃の負担でお悩みの方へ
同棲を解消するときの滞納家賃は、大家に対する義務と二人の間の負担を分けて整理することで、取るべき順序が見えてきます。相手と直接話すことが難しい場合や、家族に督促が届きそうな場合には、弁護士が窓口となって負担の取り決めと書面化を進める方法もあります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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