パパ活相手が既婚者だった|相手の配偶者から慰謝料請求されるリスク
交際相手が自分より年上で、相手に持ち家やまとまった預金がある場合、相手の子どもやきょうだいから「財産目当てではないか」と責められることがあります。面と向かって言われるだけでなく、交際をやめるよう迫られたり、「財産は受け取らない」と一筆書くよう求められたり、これまでに受け取ったお金を返すよう言われたりする場面もあります。
本記事では、責められた側の立場から、家族がどこまで口を出せるのか、責める言葉や行動がどこから問題になるのかを整理し、手元で整えておきたい記録について解説します。
本記事は2026年11月時点の法令にもとづいています。交際相手が独身(配偶者がいない)で、交際している二人がいずれも成人である場面を想定しています。交際相手に配偶者がいる場合は、不貞慰謝料など別の論点が加わります。
家族から責められる場面と、最初に押さえたい前提
当事務所に寄せられるご相談には、たとえば次のようなものがあります。
- 交際相手の子どもから「父の財産を狙っている」と何度も電話が来る。
- 親族の集まりで「お金目当ての人」と言われた。
- 「財産は一切受け取らない」と誓約書を書くよう迫られている。
- 交際中にもらったお金や贈り物を、相手の家族から返すよう言われた。
- 「別れないなら勤務先に知らせる」と告げられた。
交際するかどうかは、本人どうしが決めること
成人どうしの交際に、家族の同意は法律上求められていません。結婚についても、憲法24条1項が婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると定めており、相手の子どもやきょうだいの承諾がなければ交際や婚姻ができない仕組みにはなっていません。交際相手が自分の財産を誰のために、どう使うかも、原則として本人が決めることです。
ただし、交際相手の判断能力が衰えている場合は事情が変わります。認知症などで判断能力が十分でない状態でされた贈与や契約は、後から効力が争われることがあります(後半で取り上げます)。
家族の不安と、自分への非難を分けて考える
家族が心配しているのは、多くの場合「将来、財産がどうなるか」です。一方、責められた側にとっての問題は「自分がどう扱われているか」です。この二つを分けて考えると、応じてもよい話(お金の流れの説明など)と、応じる必要のない話(交際をやめる約束など)が見分けやすくなります。
家族の言葉や行動が法的な問題になる場面
家族が交際に反対すること自体は、違法ではありません。問題になるのは、責め方が一定の線を越えたときです。
言われた場所と言葉の内容
「財産目当て」という言葉を一対一の場で言われただけでは、名誉毀損罪や侮辱罪にはあたりにくいと考えられます。これらの罪は、不特定または多数の人が知りうる状態(公然性)で人の社会的評価を下げることなどを要件としているためです。一方、親族の集まりや勤務先、SNSなどで同じことを言いふらされた場合は、名誉毀損や侮辱として問題になる余地が出てきます。罪にあたらなくても、内容や回数によっては民事上の慰謝料が問題になることもあります。周囲に悪口を広められた場合の考え方は、【男女トラブル】別れた相手が共通の友人に悪口を広めている|名誉毀損になる線でも解説しています。
押しかけ・繰り返しの連絡・勤務先への連絡
自宅に押しかけて帰るよう求めても居座る、「別れないなら勤務先に知らせる」と告げるといった行動は、内容によって刑法上の罪や条例違反に触れることがあります。家族からの行為は恋愛感情にもとづくものではないため、多くの場合ストーカー規制法の対象にはなりません。もっとも、東京都の迷惑防止条例のように、ねたみや恨みなどの悪意の感情によるつきまといも規制の対象としている条例があります。
| 家族の行動 | 問題になりうる枠組み | 手元に残したいもの |
|---|---|---|
| 親族の集まりやSNSで「財産目当て」と言いふらす | 名誉毀損・侮辱、民事上の不法行為 | 投稿の画面、その場にいた人の名前 |
| 退去を求めても自宅から帰らない | 不退去罪(刑法130条) | 退去を求めた日時と言葉の記録 |
| 「別れないと勤務先に知らせる」と告げる | 脅迫罪(刑法222条)・強要罪(刑法223条)が問題になる場合 | メッセージの保存、通話の録音 |
| 勤務先に電話をかけ、交際について話す | 名誉毀損、業務妨害が問題になる場合 | 勤務先から聞いた内容のメモ |
どの枠組みにあたるかは、言葉の具体的な中身や回数、前後の経緯によって変わります。日時、誰が何と言ったか、その場に誰がいたかを、その日のうちにメモしておくと整理しやすくなります。記録の残し方は、男女トラブルの証拠の集め方|LINE・録音・写真を法的に有効にするも参考にしてください。
「財産は受け取らない」と一筆書くよう求められたら
家族から誓約書や念書を求められても、書く義務はありません。そのうえで、書くかどうかを考える前に相続の仕組みを確認しておくと、家族が何を心配しているのかが具体的に見えてきます。
交際しているだけでは相続人にならない
民法で相続人になるのは、配偶者と、子・親・きょうだいなどの血族です(民法887条・889条・890条)。結婚していない交際相手は、同居していても相続人にはなりません。内縁関係でも同じです。交際相手の財産がこちらに渡るのは、生前に贈与を受ける場合、遺言で遺贈を受ける場合、将来結婚して配偶者として相続する場合が中心になります。
先回りの「放棄」には限界がある
相続放棄は、相続が始まった後に家庭裁判所へ申述する手続です。相続が始まる前に「放棄する」と約束しても、その約束どおりの効果は生じません。結婚した後に配偶者として遺留分を放棄する場合も、相続開始前であれば家庭裁判所の許可が必要です(民法1049条1項)。
そのため「財産は一切受け取らない」と書いた紙は、家族が期待するほどの効力を持たない一方で、文言によっては、後の話し合いで自分に不利な材料として使われるおそれがあります。違約金の定めや「交際をやめる」といった条項が入っている場合は、特に慎重に読む必要があります。書面の効力の考え方は【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力、すでに書いてしまった場合は【男女トラブル】別れ際に書いた誓約書を撤回したい|強く迫られて書いた書面で解説しています。
結婚を考えている場合は、婚姻届を出す前に夫婦の財産の扱いを取り決める夫婦財産契約(民法755条)という制度もあります。ただし利用例は少なく、登記などの手間もかかるため、交際相手本人と相談しながら検討することになります。
受け取ったお金や贈り物を「返せ」と言われたら
家族から、交際中に受け取ったお金や品物を返すよう求められることもあります。このときは、誰が、どのような根拠で請求しているのかを順に確かめます。
請求しているのは誰か
交際相手が健在で、自分の意思で渡したお金について、家族が自分の権利として返還を求めることは、原則としてできません。家族が交渉に出てくる場合は、交際相手本人から委任を受けているのか、家庭裁判所に選ばれた成年後見人などの立場にあるのかを確かめることになります。確かめ方は【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で解説しています。交際相手が亡くなった後であれば、相続人が交際相手の権利を引き継いで請求してくることがあります。
贈与だったのか、貸したお金だったのか
受け取ったお金が贈与であれば、書面によらない贈与であっても、すでに渡し終えた部分を後から解除することはできません(民法550条)。一方で、家族側から「貸したお金だ」と主張されることもあります。贈与か貸付かは、渡したときのやり取りや金額、返済の話があったかどうかなどから判断されます。詳しくは別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いをご覧ください。
判断能力が争われる場合
家族の主張で注意が必要なのは、「渡したときに判断能力がなかった」というものです。意思能力がない状態でされた法律行為は無効とされます(民法3条の2)。また、家族が家庭裁判所に後見開始を申し立て、成年後見人が選ばれた後は、本人が一人でした行為は、日用品の購入などを除いて取り消すことができます(民法9条)。高齢の交際相手から多額の援助を受けている場合、受け取った時期の相手の様子や、周囲の人とのやり取りが、後から重要な意味を持つことがあります。
「結婚詐欺だ」と言われることもありますが、詐欺罪は、うそを言って相手を誤らせ、お金などを出させた場合に成立するものです。援助を受けたこと自体が罪になるわけではありませんが、評価は個別の事情によるため、警察への相談をほのめかされた場合は早めに弁護士へ経緯を伝えておくと見通しを立てやすくなります。
疑いを深めないために整えておきたいこと
家族の疑いに言葉で反論するよりも、お金の流れが見える状態にしておくほうが、結果として話し合いが進みやすいことがあります。
- 交際相手から受け取ったお金・品物の日付、金額、名目の記録。
- 生活費や旅行費の負担割合が分かるメモや明細。
- 高額な援助を受けるときの、贈与か貸付かを明らかにした書面。
- 交際相手の通帳・カード・印鑑を預からないという線引き。
- 交際相手の財産の管理や契約手続に一人で関わらないという線引き。
とくに、交際相手の預金の引き出しや不動産の手続を手伝う場面は、善意であっても疑いを招きやすいところです。本人が窓口で手続をする、ほかの家族や専門職に立ち会ってもらうなど、一人で関わらない形を選ぶと、後の説明がしやすくなります。
家族との話し合いを進めるときの順序
家族と話し合う場合は、交際相手本人が同席し、本人の口から交際の意思と財産についての考えを伝えてもらうのが基本です。一人で家族と会うと、言った言わないの争いになりやすくなります。
交際をやめるかどうか、誓約書を書くかどうかといった約束は、その場で決めずに持ち帰って構いません。
家族が弁護士を立ててきた場合や、押しかけ・勤務先への連絡が続いている場合は、こちらも弁護士に窓口を任せる方法があります。当事務所では、ご本人に代わって家族側とのやり取りを担い、誓約書の文面の確認、返還請求への回答、連絡や接触を控えるよう求める通知などに対応しています。交際関係をめぐるトラブルへの当事務所の対応は、【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご案内しています。
よくあるご質問
交際相手本人は味方なのに、家族だけが強く反対しています。それでも相談できますか?
ご相談いただけます。交際を続ける前提で、家族とのやり取りをどう整理するか、どの記録を残しておくかを一緒に考えることができます。
交際相手が亡くなった後、遺言で受け取った財産を放棄するよう家族から求められたら?
遺言で特定の財産を受け取る特定遺贈であれば、受け取るかどうかは受け取る側が選ぶことができ(民法986条)、家族に求められたからといって放棄しなければならないわけではありません。一方、交際相手の子どもなどには遺留分があり、遺留分を侵害する遺贈については、金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求を受けることがあります(民法1046条)。財産の全部や一定の割合を受け取る包括遺贈では手続や期限が異なるため、遺言の内容を確認したうえで判断することをおすすめします。
まとめ
- 成人どうしの交際に家族の同意は要らず、交際をやめる約束や誓約書に応じる義務はありません。
- 言いふらし、押しかけ、勤務先への連絡などは、内容によって名誉毀損や脅迫などが問題になることがあります。
- 交際しているだけでは相続人にならず、相続が始まる前の「放棄」の約束には限界があります。
- 返還を求められたら、請求している人の立場、贈与か貸付か、渡したときの判断能力を順に確かめます。
- お金の流れを記録し、交際相手の財産管理に一人で関わらないことが、疑いを深めない備えになります。
「財産目当て」と責められると、交際そのものを否定されたように感じるかもしれません。それでも、家族の心配と自分への非難を分け、法律上の線引きと手元の記録を確かめていけば、どこまで応じ、どこから断ればよいかは見えてきます。家族とのやり取りに不安があるときは、話し合いの前の段階でもご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


