風俗トラブルの全体地図|「刑事」「民事」「発覚」の3つの時計で整理する
風俗店を利用している最中に、胸の痛みやめまい、息苦しさなどで急に体調を崩し、救急車を呼んで病院に運ばれる方がいます。命に関わる場面で迷わず救急車を呼ぶのは当然のことですが、落ち着いた後に店から「営業ができなくなった」「女の子が次の予約に入れなかった」「救急隊や警察が来て迷惑した」などと言われ、料金とは別のお金を求められることがあります。この記事では、利用中に自分が体調を崩した場合に、店からの請求にどこまで応じる必要があるのかを、請求の名目ごとに整理します。
本記事は、2026年11月時点の民法・消費者契約法を前提にしています。個別の事情によって評価は変わりますので、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
体調を崩したときは、まず救急車を呼ぶことを優先する
体に異変を感じたときに最も大切なのは、ご自身の命と健康です。店に迷惑をかけたくない、利用していたことを知られたくないといった気持ちから、救急車を呼ぶのをためらう方もいますが、後で請求を受けるおそれがあるからといって、必要な救急要請を控える理由にはなりません。キャストや店のスタッフが救急車を呼んだ場合も同じです。
救急車を呼んだこと、病院に運ばれたこと自体を理由に、利用客が店に賠償の責任を負うわけではありません。体調の急変が問題になるのは、後で見るように、その原因や経過に本人の落ち度があったといえるかどうかという点です。
なお、搬送の際に店や家族に利用が知られるのではないかという不安については、【風俗トラブル】利用中に体調が急変し救急搬送された|店と家族に知られることで解説しています。この記事では、その後に店から金銭を求められた場面に絞って整理します。
店から求められやすいお金と、確かめたいこと
体調不良による中断や救急搬送の後に、店から持ち出されやすい請求には、次のようなものがあります。名目によって根拠の考え方が異なるため、まとめて「損害」として扱わず、分けて確かめることが出発点になります。
| 請求の名目 | 店側が持ち出しやすい理由 | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| コース料金・延長料金 | サービスが途中で終わった、搬送まで時間がかかった | 事前に支払った金額と、実際にサービスがあった時間 |
| 営業損害・休業補償 | キャストが当日休んだ、次の予約を断った | 実際に失われた売上と、その裏付け |
| 清掃費・備品の弁償 | 部屋や寝具が汚れた、物が壊れた | 汚損の有無と程度、実際にかかった費用 |
| キャストへの慰謝料・見舞金 | キャストが驚いた、怖い思いをした | けがや具体的な被害があったかどうか |
| 罰金・違約金・迷惑料 | 規約に違反した、救急隊や警察が来て迷惑した | 規約の内容と、利用前に示されていたか |
賠償を求めるには「落ち度」と「つながり」が必要
店が利用客に損害の賠償を求めるには、不法行為(民法709条)であれば利用客に故意または過失があること、契約違反(民法415条)であれば利用客の責めに帰すべき事由があることが前提になります。民法415条1項ただし書は、債務者の責めに帰することができない事由による場合には賠償責任を負わないとしています。
急な体調不良は、本人の落ち度とは言いにくいことが多い
持病の発作や、予期しない心臓・脳・血圧などの異変は、本人が避けようとして避けられるものではないことがほとんどです。こうした体調の急変によってサービスが中断し、救急車を呼ぶことになったとしても、それだけで利用客に過失があったとは評価しにくいと考えられます。
落ち度が問われやすい場面
一方で、体調を崩した経緯によっては、本人の行動が問題にされることもあります。たとえば、次のような場面です。
- 店が禁止している状態での利用(大量の飲酒など)が体調不良の原因になった。
- 店のルールで禁止されている薬物やサプリメントを使った。
- 体調の異変を感じながら、キャストに止められても利用を続けた。
- 体調を崩した際に、部屋の備品や設備を壊した。
もっとも、こうした事情があったとしても、ただちに店の言う金額をすべて支払う義務が生じるわけではありません。違法な薬物の使用などが絡む場合は刑事上の問題が別に生じることもあるため、店との話し合いを進める前に、弁護士に事情を伝えておくことをおすすめします。
落ち度があっても、請求できる範囲には限りがある
仮に利用客の側に落ち度があったとしても、賠償の対象になるのは、その行為と相当な因果関係のある損害に限られます(民法416条の考え方)。また、損害が実際に生じたことや、その金額は、請求する店の側が示す必要があります。「店の評判が落ちた」「今後の売上が減る」といった抽象的な理由だけで、高額な金額が認められることは考えにくいでしょう。
名目ごとの考え方
料金・延長料金
途中で終わったとしても、利用したコースの料金そのものは、支払いを求められることが多いのが実情です。事前に支払った料金の返金を求めるのは、サービスがほとんど提供されなかったなどの事情がない限り、難しい場合が多いと考えられます。
他方で、救急隊の到着を待つ時間や搬送の準備の時間まで「延長」として料金を加算するのは、その間にサービスが提供されていない以上、根拠が乏しいと考えられます。延長料金を求められた場合は、時間の数え方を確かめることが大切です。
営業損害・休業補償
「キャストがショックで当日の勤務を続けられなかった」「次の予約を断った」として、その分の売上を求められることがあります。まず前提として、体調の急変に本人の落ち度がなければ、こうした損害の賠償責任は生じにくいと考えられます。落ち度があった場合でも、本当に予約が入っていたのか、他のキャストへの振り替えはできなかったのかなど、店が具体的に示すべき点は少なくありません。請求項目ごとの考え方は、治療費・検査費・休業損害は認められるのか|請求項目別の検討もあわせてご覧ください。
清掃費・備品の弁償
体調を崩した際に嘔吐するなどして、部屋や寝具を実際に汚してしまった場合、その清掃にかかった実費について話し合う余地はあります。ただし、通常の清掃の範囲を大きく超える金額や、内訳の示されない一律の金額については、何にいくらかかったのかを確かめたうえで判断することが大切です。ホテルを利用していた場合は、ホテルとの関係と店との関係を分けて考える必要があります。
キャストへの慰謝料・見舞金
目の前で客が倒れたことでキャストが驚いたり、不安になったりすることはあり得ます。しかし、そうした気持ちの動揺だけで、法的な慰謝料が認められるのは容易ではないと考えられます。一方で、倒れ込んだ際にキャストにけがをさせてしまったなど、具体的な被害がある場合は別の問題になります。その場合の考え方は【風俗トラブル】キャストの診断書を見せられた|怪我や体調不良を理由にした請求で解説しています。
迷惑をかけたことへのお詫びとして、見舞金を任意に支払うこと自体は自由です。ただし、支払う場合は、それで全て解決したことを確認する清算条項を入れた書面を交わしておかないと、後から追加の請求を受けるおそれがあります。
規約の「罰金」・違約金・迷惑料
「救急車や警察を呼ばれたら罰金」「店に迷惑をかけた場合は違約金」といった規約を示されることもあります。そもそも私人が罰金を科すことはできません。詳しくは「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないをご覧ください。
違約金の定めは、法律上は損害賠償額の予定(民法420条)として扱われますが、利用前に規約の内容が示されていたかどうかがまず問題になります。また、金額が過大な場合や、消費者の利益を一方的に害する内容の場合には、公序良俗(民法90条)や消費者契約法10条により、効力が否定される余地もあります。必要な救急要請をしたことを理由とする違約金のように、利用客にとって避けようのない事情を対象とする定めは、その有効性に疑問が残ると考えられます。規約の読み方については、【風俗トラブル】店から『うちの規約では』と言われた|規約の効力を確かめる順序、損害賠償額の予定(民法420条)は風俗の規約でも有効かもあわせてご確認ください。
請求を受けたときに避けたい対応
体調がまだ戻らない時期や、病院から戻ったばかりの時期は、落ち着いて判断するのが難しいものです。次のような対応は、後の交渉を難しくするおそれがあります。
- その場や電話口で、求められた金額を支払う約束をすること。
- 金額や名目に納得できない念書・借用書に署名すること。
- 体調が回復しないうちに、店の担当者と会って話し合うこと。
- 「家族や会社に知らせる」と言われ、慌てて支払うこと。
即座の支払いを求められたときの考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断、家族への連絡を示唆されたときの備えは【風俗トラブル】実家の住所を知られていた|親に知らせると言われたときの備えで解説しています。
手元に残しておきたい記録
請求に応じるかどうかを判断するうえでも、弁護士に相談するうえでも、次のような記録が役に立ちます。
- 利用した日時、店名、コースの内容、支払った金額と支払方法。
- 体調に異変を感じた時刻、救急車を呼んだ時刻、搬送先の病院名。
- 診療明細書や領収書など、受診の事実がわかる書類。
- 店から求められた金額、その名目、言われた言葉のメモ。
- 店とのやり取りの履歴(通話記録、メッセージ、留守番電話)。
相談の際に聞かれやすい事項は、風俗トラブルの無料相談で聞かれること|相談前に準備すべき情報にまとめています。
弁護士に相談するとできること
弁護士にご依頼いただくと、店との連絡の窓口を弁護士に移し、療養中のご本人が直接やり取りをしなくて済むようにできます。請求の名目ごとに根拠と内訳の提示を求め、支払う必要があるものとないものを分けたうえで、支払うべき部分があればその範囲を協議します。合意に至った場合は、清算条項や、ご家族・勤務先への連絡をしないことを盛り込んだ合意書を作成します。ご自身で交渉するか弁護士に任せるかの判断については、【風俗トラブル】店との交渉を自分でするか弁護士に任せるか|分かれ目になる5つの事情も参考にしてください。
利用中に体調を崩して救急車を呼んだことは、それだけで店に賠償する理由にはなりません。店から金銭を求められた場合も、料金、損害、違約金と名目を分け、それぞれに根拠があるかを確かめることが大切です。まずは体調の回復を優先し、支払いの約束をする前に一度立ち止まって状況を整理してください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


